- スティーヴ・マックイーン/プリファブ・スプラウト
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Steve McQueen / Prefab Sprout
1 Faron Young
2 Bonny
3 Appetite
4 When Love Breaks Down
5 Goodbye Lucille #1 (Johnny Johnny)
6 Hallelujah
7 Moving the River
8 Horsin' Around
9 Desire As
10 Blueberry Pies
11 When the Angels
1985年というとパンクやピコピコ・ニューウェイブが行き詰まってなんとなく失速しだし、大金をかけてプロモーションする事が更に派手になるなど音楽業界全体がビジネスの色合いを強め、リスナーは押しつけがましく閉塞的な感じを受けていた記憶があります。
そんな中でも地道に活動してGOOD MUSICを提供し続けていた少数派バンドもいたわけです。例えば英国ではスミスやスタイル・カウンシルなど。スタイル・カウンシルは「元ジャム」の超売れっ子、ポール・ウェラーがいたので決して少数派ではないけれど、音楽的には「軟弱になった」と結構非難される事も多かったと思います。
このプリファブ・スプラウトもそんなバンドの一つ。ネオ・アコースティック、ギター・ポップとも言われる彼らの特徴は何と言ってもメロディの良さにあります。バンドの実質的なリーダーであるパディ・マクアルーンの作曲センスは素晴らしい。スタイル・カウンシルと比較され語られることも多いようですが、よりメロディ重視と言った印象です。ポールウェラーから「熱さ」を少々はぎとり、更にメロディメーカーとしての資質をプラスした感じとでも言いましょうか・・・
ところでこの彼らの2ndアルバム、英国版のタイトルは「Steve McQueen」ですが、米国版ではどうやらSteve McQueenの遺族から許可が出なかったようで「Two Wheels Good」と別タイトルになっています。内容は全く同じものです。
プロデューサーのトーマス・ドルビーは「ニューウェイヴの人」というイメージがあり、硬質な感じのシンセ音を扱う人、という印象なのですが、このアルバムでは全体的に独特なエコー感を作り出しておりそれが作品全体を覆うとても魅力的な特徴となっています。コンプレッションされかつリミッターがかかったような音像でありながらヌケの良いサウンドの手触り。要所要所にストリングスのように加えられるシンセがまた楽曲を効果的に引き立てる。入れ込み過ぎず、少なすぎず絶妙な配置です。そういう意味でトーマス・ドルビーのプロデュースは大成功していると言えるでしょう。
このバンド、演奏自体がヒートアップするというような事はありません。演奏はあくまでも歌を引き立たせるための一要素として一歩下がった位置にいます。
でも何なのでしょうか、全体を聴き終えて感じるこの青臭~い何とも言えないせつない感じ。青春ですねえ。どこかノスタルジックでありながらも冷たい光を放っている。美しくもありながらクールな旋律。そして全体を覆う透明感。今この時代に聴き返してもその印象は変わりません。正に一瞬を切り取ったようなアルバム。ウェンディ・スミスのコーラスも非常に効果的に使われています。
私の好きなM2では当時流行っていたであろう「maj7」のコードがかなり効果的に使われています。maj7を曲の中心に使うこと自体はかなりあったでしょうが、その上にこういうメロディが乗ってくる快感。旋回するストリングスが盛り上げるM3や先行シングルだったM4、熱いヴォーカルのM5。また、M7ではジャズ・フュージョン的な展開も見せてくれます。マクアルーンのソング・ライティングの冴えは素晴らしいの一言です。
<トーマス・ドルビーのインタビュー記事によるとマクアルーンはギターを半音下げチューニングで使用しているという事なので、例えばM2ではFmaj7のコード・フォームで弾くために4フレットにカポタストをつけて弾いたという事になります。同じmaj7でもコードフォームの違いで音の響きがかなり変わってくるのでそこまで計算しているのでしょう。このあたりの柔軟さは同時代のスミスのジョニー・マー(彼もオープンチューニングやカポタストをかなり使用していました)にも一部通じるところがあるのでしょうか。)
通り一遍のヒップ・ホップや作り込み過ぎの最近の音楽に疲弊しているあなた!もしも未体験であるなら是非コレクションの1枚に加えて欲しい瑞々しい輝きを放つ作品です。私のブログでは珍しく万人へお勧めの一枚。きっと後々まで印象に残る作品になると思います。