ポセイドン・アドベンチャー | 音楽見聞録

音楽見聞録

単なるリスナーが好きな音楽について勝手きままに書き散らかし。
CDレビュー中心のつもりが、映画や書籍など他の話題も。

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
ポセイドン・アドベンチャー コレクターズ・エディション (初回限定生産)

 先頃、「ポセイドン」なる映画が公開された。その映画は未見であるが、1970年代に公開された映画「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイクであることは間違いない。きくところによるとリメイク版ではスコット牧師が主人公ではないらしい。CGを駆使した特撮頼りの単なるパニック・ムービーになっているのではないだろうか。なぜ今頃リメイクしたんだろう?


 本家はポール・ギャリコの割と長編の小説を原作として映画化されている。ギャリコの作品には良いものが多く、この原作もかなり素晴らしいので当然映画にも深いテーマが内包されている。


 ジーン・ハックマン演じる主人公のスコット牧師はいわゆる神に仕える使徒らしくない。彼は人々が神に依存する姿勢について懐疑的である。人間は神に頼らずギリギリまで戦うべきである、単に祈るだけでは何も得られないという信念を持っている。戦いを経てこそ、その果てに何かが見えるはずであると考えている。神と対峙し、沈黙し続ける神と対決する姿勢を崩さない。従って現在の教会や信仰のあり方にも懐疑的な姿勢を持っている。半ばあきらめを感じたはずれ宗教者という姿で描かれる。


 この映画はそんな牧師が正にその信念を証明するために戦う話である。決してハッピーエンドとは言えない。彼は最後まで戦い、しかも最後まであきらめない。人間のあるべき姿勢をその行動で雄弁に語っている。従ってこの映画は単なるパニックもの、デザスター・ムービーではない。

傲慢な人間と沈黙する神との対峙。その隙間を埋めるものは結局、人間の限界を超えた「他者への思い」とそれを原動力にした「行動力」に他ならないというのがこの映画のテーマなのだろうと感じる。汎キリスト教的な部分はあるが説得力を持つ名作。


 ただ敢えて深読みをするなら、結局のところ彼は負けたのかもしれない。彼の神に対する傲慢さゆえに生贄となったという見方もできる。本来、全ての人間に対して平等であるべき神に対し、人間の行動で結果が左右されるのだという見方をしている彼はある意味神に挑戦し冒涜しているとも言えるだろう。

最後の殉教とも言うべき場面で彼は残る人間たちの無事を確信したのかもしれない。それは神の側の勝利を意味する。但し、彼が正しいにしろ間違っていたにしろその行為がなければ最後の光明への導きが無かったことは間違いないと思える。


 物語冒頭、海底地震により生じた大波により豪華客船ポセイドン号が転覆する。この転覆の原因も実は人災。人間がその愚かさゆえに引き起こした状況として描かれる。
この状況に放り込まれる他の登場人物たちは、時に導かれ、時に離反し、時に怒り、牧師と遍歴をともにする。各人の背景がわかりやすくとても魅力的に描かれている。怒れる泣き虫べらんめえ野郎アーネスト・ボーグナインも良いな~。


 物語は非情な状況を踏まえつつ丹念に描かれる。なお、本家ポセイドン・アドベンチャーはCG抜きで作成されている。セットとスタントでよくぞここまで、という感じである。
 この映画のヒット後、いわゆるパニック映画がたくさん製作されるようになった。ということはやはりこの映画はエポック・メイキングな成功作だったのだろう。


 あまり効果的に使われているとは思えないが、アカデミー賞をとったモーリン・マクガヴァンが歌う「モーニング・アフター」(劇中では別人が歌っているが。)も名曲だね。