火星縦断 / ジェフリ-・A・ランディス | 音楽見聞録

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ジェフリー・A. ランディス, Geoffrey A. Landis, (訳)小野田 和子
火星縦断

「MARS CROSSING」


久々にハヤカワ文庫のSFを読む。本作は2000年の作品でローカス賞受賞作。


西暦2028年、第三次有人火星探査隊の火星着陸場面から物語が始まる。

著者のジェフリー・A・ランディスはNASAグレン研究所で実際に火星探査プロジェクトに携わる研究者である。このため物語中の火星や使用機材の描写には妙に説得力がある。ジャンルとしては「ハードSF」の範疇に入るんだろうが、J.P.ホーガンみたいに大上段に振りかぶった新理論が展開される訳ではなく、あくまでも今の科学の持つ理論から展開されているためそれほど鼻につくところはない。


物語の中では第一次、第二次探査隊はともに失敗し、全員が命を落としている。

今回の三次探査隊も着陸後すぐに唯一の頼みにしていた帰還船および隊員一人の命を失う。

彼らが着陸したのは南緯30℃付近。ここから赤道を越えて6,000km先の北極点にある以前の探査隊が残した帰還船を目指して絶望的な旅が始まる・・・というのがこの物語の骨子。


限られた過酷な状況の中、しかもある条件のため、たとえ北極へたどり着けたとしても全員が帰還船に乗船することはできない。さて、あなたならどうするか?

こういう極限の状況設定を生み出すためにSFはあるんだな~といつも思う。


極限状態の中での人間の行動や心理描写、これこそがSFの醍醐味。いやあ~楽しい!!


話はクールに進む。都合の良い奇跡は起きない。ここでは「1+1」は「2」にしかならない。どれだけ思いが強かろうが結果は原因の積み重ねでしかない。

そこに不確定な人間の感情が入ってくることで物語は意外な方向へ進んで行く。


5人の過去の物語が火星での状況の合間合間に挿入されて行く手法で描かれる。

結末は本当のこと言うとちょっとだけ弱いかな?と思う。描ききれていないところもある。


でもさすがローカス賞受賞作です。一読の価値あり。

この人の作品は今回の長編が初訳。たくさんある短編を是非とも読みたいです。早い翻訳を望みます!