カリフォルニア大学サンフランシスコ校の新しい研究によると、若年成人期(20代)に炎症レベルが高いと、中年期(40代)で認知機能が低下する可能性があることが明らかになり、2024年7月の「Neurology」に研究成果が発表されました。
 
この研究は、成人初期の炎症と中年期の認知機能の低下を関連付けた最初の研究のひとつです。研究者は、アルツハイマー病やその他の認知症につながる脳のへんかは、発症に数十年かかることがわかっています。成人初期の健康と生活習慣が、中年期の認知能力にどんな影響を与えるのかについて分析したいという目的で今回の研究を行ったそうです。
 
研究は18歳から30歳までの2364人の成人を対象に18年間にわたって炎症マーカーのひとつであるCRPの検査を4回実施しました。認知テストはCRP測定から5年後に行われ、その時点で参加者のほとんどが40代、50代でした。
 
分析の結果、炎症レベルが低い人のうち、脳機能の処理速度と記憶テストの成績が悪かったのは、わずかに10%だったのに対して、中程度の炎症レベルで認知機能が低い人は20%程度でした。これ以外にも、認知機能の悪さと、炎症レベルの高さと身体活動不足(運動不足)、BMIの高さ、喫煙との関連も指摘されました。
 
研究グループは、炎症は認知機能を悪化させる要因になっている可能性があり、成人初期からの炎症レベルの高さが、中年以降の認知機能の低下に影響している可能性を指摘しています。

 

【出典】 Amber L. Bahorik, Tina D. Hoang, David R. Jacobs, Deborah A. Levine, Kristine Yaffe. Association of Changes in C-Reactive Protein Level Trajectories Through Early Adulthood With Cognitive Function at Midlife. Neurology, 2024; 103 (2) DOI: 10.1212/WNL.0000000000209526