フィンランドのトゥルク大学の研究で、30分間の運動が乳がん患者の血液中の白血球の割合を増加させて、がんの増殖を抑制する働きを高める可能性があることがわかり、2024年6月の『Frontiers in Immunology』誌に研究成果が掲載されました。

 

白血球は免疫システムの一部であり、がん細胞や細菌、ウイルスと戦いますが、すべての白血球ががん細胞を破壊するわけではありません。がん細胞を破壊する主要な白血球は細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞であり、がんの増殖を促進する白血球には制御性T細胞や骨髄由来抑制細胞があります。

 

研究には、乳がんと診断されたばかりで治療を開始していない20人の患者が参加しました。患者は自転車エルゴメーターを30分間こぎ、その前後に血液サンプルが採取されました。分析の結果、運動中にがんを破壊する細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞の数が増加し、がんを促進する制御性T細胞と骨髄由来抑制細胞の数は変化しないことがわかりました。

 

さらに、ナチュラルキラー細胞の割合が増加し、骨髄由来抑制細胞の割合が減少することも確認されました。しかし、これらの変化が腫瘍領域の白血球数の変化に繋がるかどうかはまだ不明です。運動後1時間でほぼすべての白血球タイプの数が安静時の値に戻ることもわかりましたが、白血球がどこに行くのかは現時点では不明です。

 

研究者らは、乳がんの種類によって白血球の運動反応が異なるかどうかも調査しました。腫瘍が大きいほどナチュラルキラー細胞の増加数が少なく、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体陽性のがんでは細胞傷害性T細胞の増加数が少ないことがわかりました。

 

この研究結果は、すべてのがん患者にとって運動は有益であり、今回の研究はこの考えを裏付けていると研究者は評価しています。

 

【出典】Tiia Koivula, Salla Lempiäinen, Joona Neuvonen, Jooa Norha, Maija Hollmén, Carl Johan Sundberg, Helene Rundqvist, Heikki Minn, Petteri Rinne, Ilkka Heinonen. The effect of exercise and disease status on mobilization of anti-tumo さらに、ナチュラルキラー細胞の割合が増加し、骨髄由来抑制細胞の割合が減少することも確認されました。しかし、これらの変化が腫瘍領域の白血球数の変化に繋がるかどうかはまだ不明です。運動後1時間でほぼすべての白血球タイプの数が安静時の値に戻ることもわかりましたが、白血球がどこに行くのかは現時点では不明です。 rigenic and pro-tumorigenic immune cells in women with breast cancer. Frontiers in Immunology, 2024; 15 DOI: 10.3389/fimmu.2024.1394420