近年、社会でお互いの話し方をまねたり、身振りの一部分を取り入れたりする傾向が強まっているのは、異なる立場や背景を持つ人々が安心して意見を述べ、互いに理解し合うことができる環境(社会的な包摂性)を整えるために行われている可能性が高いからという英国ランカスター大学の見解が、2024年6月の「Applied Linguistics」に掲載されました。

 

人々は会話の中で身振りやアクセント、表情を真似し、相手の言葉を再利用します。この現象は「共鳴」と呼ばれ、特に企業の管理職や大学講師などの社会的に高い階級の間で増加しています。

 

この研究では、過去20年間でこれらの分野の人々が互いに共鳴するようになり、より魅力的なコミュニケーションスタイルを採用していることが示されています。これは、2000年代以降の企業コミュニケーションや高等教育の変化に伴うものであり、CSR(企業の社会的責任)やEDI(平等・多様性・包摂)などのイデオロギーが影響している可能性があります。

 

研究者らは、イギリス国立コーパス(BNC)の1994年と2014年のデータを分析し、イギリス人の会話における「共鳴」を調査しました。その結果、特定の社会階級の間での共鳴が増加し、社会的包摂の指標として重要であることがわかりました。さらに言葉や表現が再利用されると、話し手同士の関与が深まり、相手の言葉が重要であることを示すことができ、この現象は、英国社会の上流階級よりも下位階級で顕著であることもわかりました。

 

【出典】 Vittorio Tantucci, Aiqing Wang. British Conversation is Changing: Resonance and Engagement in the BNC1994 and the BNC2014. Applied Linguistics, 2024; DOI: 10.1093/applin/amae040