筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法や治療薬の研究開発を支援する資金を集める目的で2014年頃、バケツに入った氷水を頭からかぶる姿をSNSなどで公開した「アイス・バケツ・チャレンジ」は、瞬く間に世界中に広がり、約1か月で40億円もの寄附金が集まったと言われていますが、なぜこのような現象が起きたのかについて、カリフォルニア大学の研究で明らかになり、2024年6月の「Journal of Consumer Psychology」に研究成果が発表されました。

 

カリフォルニア大学リバーサイド校のマーケティング教授トーマス・クレイマー氏らの研究によると、他人に軽い不幸を与えることが寄付を増やす戦略となり得ると述べています。氷水をかけられたり、顔にパイを投げられたりするなど、軽い他人の不幸や不運な姿を見た人が楽しい気分になることを、ドイツ語の「シャーデンフロイデ」(他人の不幸を喜ぶ感情)というそうです。研究者はこの感情を利用すると、慈善活動で多くの資金を集めることができるというのです。

 

この研究では、参加者が嫌いな有名人が軽い不幸を受ける場面を想像させることで、寄付金が増えることを示しました。しかし、受ける罰が過度になると寄付意欲が低下することも確認されました。

 

【出典】 Yael Zemack‐Rugar, Laura Boman, Thomas Kramer. The ironic impact of schadenfreude: When the joy of inflicting pain leads to increased prosocial behavior. Journal of Consumer Psychology, 2024; DOI: 10.1002/jcpy.1426