「くそっ…、何だ急にッ!?」
上谷のPMCの画面には『full synchronize』という文字が表示され、後ろで何かのゲージが減っていっている。
「ミ、ミラーマン…」
「…、斬るッ」
言葉とともに攻撃が始まった。すると、カスタムデータもないのに両手をソードに変えてプラズマンに突っ込んでいく。プラズマンもすぐに態勢を整えると右手を電気で包んで向かってきたミラーマンのマーク部分を狙って斬りつけようとする。しかし、すこし前で右足に力を入れてジャンプすると、回転しながら電気に包まれた右手の上を通過して着地すると、すぐにプラズマンの方向を向いて足を斬る。
ズバァッ‼ 右足がただのデータの固まりとなって電脳世界の床に転がる。右足の付け根からデータがどんどん上のほうへ舞い上がっているのが画面からもわかる。
「あああァァァァァァァァッ‼」
叫び声をあげて、右足を切り取られた付け根を抑えて転がる。しかし、オペレーターの客は画面の見て、
「いいぞ、プラズマン。今楽にしてやるよォ」
何かPMCにカスタムチップらしきものを差し込む。すると、
「ぐァァ…、ウアアアァァァァァァァァッ‼」
プラズマンが叫び声をあげたかと思いきや、黒いオーラに包まれて中に浮くと付け根からどす黒いものを噴射させて体の周りに謎の球体を浮かばせて、両手をエレキソードに変えて着地する。
「何をしたッ!?」
客を見て言う。しかし、それに答えたのは客ではない。そして、壮太でもない。答えたのは…、
「『コピーボール』か…、よくできてるものだ」
振り向くと、壮太の横で桐谷が立っている。
「な、何でお前が…」
「さっき来たよ。知り合い?」
「そうだけど…、何で」
「言っただろう? 情報の共有ができると…」
言葉をさえぎるように言うと、バトルマシンに近づき、客のPMCに差し込まれたものを見て、上谷のほうを向いて話し始めた。
「あいつが使ったのは『コピーデータ』というものをAvatarに武装に変換できるように改良を加えられたカスタムチップだ。これは非公式のチップで、一応法律違反だ。ネットワーク法第5条の一部に書かれている、『カスタムチップ特許はすべて科学省にある』…、だな。つまり著作権もかかわってくる」
「へぇ…、それでその『コピーデータ』って言うのは?」
PMCを構えながら質問する。
「Avatarを球体に入れることでデータをすべてコピーできるものだ。今、ネットの掲示板で騒がれている。それで、ミラーマンのデータを奪われると少し厄介でな…」
途中で途切れた。原因はミラーマンの行動にあった。話を聞いていたのか、いつの間にか球体を抱えて武器として活用しているのだ。プラズマンのもとにある球体は残り一個となっていた。
「上谷。今のプラズマンは自分の意思で動いていない。これは俺の推測だが…、プラズマンはおそらく…」
また言葉が途中で途切れた。プラズマンが突撃してきたからだ。ミラーマンは空中にジャンプするとマークの前でチャージをしてキラーアイを発射した。しかし、プラズマンはそれを吸収した。ミラーマンはそれを見て姿勢を変えてプラズマンに突撃しようとした。
ギィィィィィンッ。ものすごい音が響き渡った。電脳の中央で両者のソードが激突する。しかし、ミラーマンがおされている。
「な、何で…ッ!?」
桐谷はおされているミラーマンを見てから上谷が握っているPMCの画面を見て、
「フルシンクロか?」
「そうだけど…、それがどうした?」
「ミラーマンのステータスがいつもの状態に戻りつつある。おそらく、『シンクロタイム』というフルシンクロが続けられる時間を過ぎてしまったのと…、後はお前の心の乱れが原因じゃないか?」
ミラーマンは、力をいれて剣を振り後ろに下がると、
「上谷。よく聞け。俺達はいつでも繋がっている」
「いつでも……?」
すぐに理解した。ミラーマンの言いたいことが。この状態で、一瞬でも隙を見せればDELETEされるかもしれないこの状態で。
「そうだ。俺達はいつでも心を交わしている…。そう、いつだって……、だからッ‼」
カスタムチップを5枚ほど手に持って次々に入れていく。
「ハハハッ、血迷ったか? 一度に5枚もスロットインして電脳世界にいるAvatarの処理能力が追いつくわけねェだろうがッ」
そう、一般のAvatarでは処理が追いつかないのだ。今の技術で一度に送れるデータの容量は『9GB』ほど。カスタムチップは一枚『3GB』と決められているのだ。しかしこれは一般の話。ミラーマンは、特別なのだ。
「俺に、常識は通用しない」
ミラーマンは送られてきた5個のデータを一度に展開すると、すべてを混ぜた。しかし、できたのはバグが発生したデータ、科学者の言う『バグボール』だ。
「何が来るかと思えば…、そんなバグの固まりで何ができるってんだよォ!?」
客は笑った。しかし、壮太と桐谷は何かを察して真剣な表情で画面を見つめる。そして、始まった。
プラズマンが動き始めた。残り一個のボールを電気で包み、自分の体の周りを回転させるように指示を出すと、目を赤く光らして、ミラーマンに電撃のビームをはなつ。ミラーマンはその瞬間に走り始めてビームにバグボールを当てて吸収させると空中に飛んでボールにバグボールを吸収させた。バグボールの吸収したコピーボールにバグが発生し、動作プログラムに異常が発生した。プラズマンの周りをまわっていたボールはプラズマンのマーク部分を直撃。マークがわれたAvatarはバグプロテクトというバグをはじくプログラムが破壊されたのと一緒の事だ。バグをどんどん取り込んでいく。あまりのバグの多さに、言語プログラムや動作プログラム、さらには一番重要な『ココロプログラム』を破壊されて肉体が破壊されていった。
「アァ゙ウァ゙オ゙」
バチバチと音を立てながら崩れていった。
その後、客は『GATE』の幹部に取り押さえられその場で逮捕された。先程バトルマシンの電脳で幹部のAvatarが調査をしていたが、何もなかったらしくすぐに行ってしまった。そして、3人は店の倉庫で話をしていた。
「そういえば、さっきの『GATE』って組織は…?」
「知らないの? GATE(ゲート)っていうのは最近できたばかりの、世界初のネットポリスなんだよ。掲示板とかでは『ガテ』って呼ばれてるみたいだけど…、裏で何かやってるとか噂になってるよ」
壮太がのんびりした口調で話す。いつ聞いても緊張感がない喋り方である。
「へぇ…、ネットポリスなんだ…。桐谷はなんか知ってるのか?」
桐谷に話を振ってみた。すると少し笑いながら、
「知ってるの何も…、俺はそこの幹部だ」
数秒、沈黙が続いた。
「お、お前が…」
「か、幹部…」
「信じてくれなくてもいいさ。でもな、その掲示板での噂はどうやら本当らしいな」
喋りながらPMCのケーブルを近くにあったパソコンにつないでデータを展開し始めた。二人はパソコンの近くに寄って画面に注目した。
「借りるぞ。で、これを見てくれ。プラズマンの残骸から拾ったメモリデータを正しくつなぎ合わせたものだ」
「え、でも何もなかったんじゃ…」
「それはシャープマンがすべて拾ったからだな。なくて当然だ」
話を区切ると、キーボードを打ち始めて数字とローマ字が並んだデータを写した。そこには、とんでもないことが書き出されたいた。
「これはプラズマンが行った行動がすべて英数字で残されているものだ。それで、ここを見てくれ」
桐谷が指をさした場所を二人で見ると、壮太は瞬時に何か浮かんだらしく、
「これって…」
「分かったようだな。これはどこかと通信をした時にでる英数字だ。それで、さっき複雑だった暗号をすべて解読してな。どこと通信を行ったかが分かったんだ。で、そこは…」
区切るということは大事なことなのだろうと、推測する。そして、
「GATE本部にある、『総司令室』だ」
「え…、GATEってネットポリスなんだよな…? なのにどうして…」
「それはわからん。でも、これは客とGATEが通信を行った証拠だから…、政府に提出すればどうにかなるかもな…。今はこれだけだ。それじゃ」
そういうと、桐谷は店の裏口からどこかに行ってしまった。
「上谷? どうする?」
「…、とりあえず今日は帰るよ。それに、俺達には何もできないだろうし…」
「そうだねぇ。俺は今日掲示板を見ていろいろ調べてみるよ。噂になってることを見てみたいしね」
先程風呂に入り、ベットに転がる。時刻は午後10時を回ろうとしている。
「ミラーマン。お前、GATEについてちょっと知りたいと思わないか?」
「思うけど…、俺はシャープマンと常に情報を共有しているから俺達が何をしているか、すべてあっちに分かっちまうってところがなぁ…」
シャープマンとミラーマンはシンクロしており、常に情報共有をしている。ミラーマンはあまりシャープマンから送られてくるデータを見ないがシャープマンはこまめにチェックしているらしく、こちらが怪しい行動を取ればすぐに止めに入ると送られてきたらしい。そのため、裏に行くのは難しいのである。
「んー…」
しばらく考え込む。そして、ある人物が頭に浮かんだ。
「あっ、あいつなら…。明日話してみよう」
PMCを充電台にセットして、電気を消して布団をかぶった。午後10時5分のことだ。
あとがき
新年、あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いいたします。
先週は、Custom Computerの更新を止めてしまって申し訳ありませんでした。やはり、年末年始は忙しかったです。今度からは、更新しない週には最新話のコメント欄に書かせていただこうかと思います。
それでは、また次回の話を楽しみにしていてください。