平日の今日は、上谷は学校へ通学しなければならない。科学省や、仕事のことはすべて桐谷に任せてのことだ。しばらく事件続きではあったが、久しぶりに安心して過ごせるとのことで部屋ではしゃいでいた。今は電車の中でイヤホンをつけて曲を聴いている。外の風景を見ていると、平凡な暮らしがどれほどいいものかを実感できる。
(平和…、か。これを守るために戦ってるのかな…)
しばらく風景をながめていると、ケースに入れてマナーモードしていた『リーダーズペット』が震える。ケースから取り出して確認すると、桐谷からのメールだった。
『お前が向かっている、「ヨシノ高等学校」で何かあった場合はすぐに科学省に連絡しろ。学校のほうに避難するように出す。分かっているだろうが、現実世界で問題が発生した場合は近くにある機械の電脳を確認するんだ。必ず中で問題がおこっている』
とのこと。上谷はため息をついてリーダーズコンピューターをケースにしまうと再び外の風景をながめはじめた。電車から『ヨシノシティ』の中央区が見える。久しぶりのヨシノシティに上谷は心の中だけで喜んだ。
1-C教室前。前の扉の横のあたりで教員からの呼び出しを待つ。上谷は今日が初登校のため転校生扱いだ。しばらくあたりを眺める。窓からはグランドの風景が見え、今は別のクラスが体育を行っているようだ。しばらくボーっとしていると先生が扉から出てきて
「では、上谷君。どうぞ」
と、優しそうな顔で言った。安心して教室に入り、教卓の前に立つ。
「えー、それではこのクラスに転校してきた『上谷大介』君に自己紹介をしてもらいましょう」
こう言い、笑顔でこちらを向くと再び生徒を見た。名前を聞いて何人か反応したように見えたがそんなことは気にせずに自己紹介をはじめた。
「はじめまして。『上谷大介』です。よろしくお願いします」
一礼すると、
「では、あそこの席についてくださいね」
教員が指した場所は一番端の席だ。バッグを持ってそこに向かう途中。
(!)
少し周りを見ながら歩いていると、横に壮太が見えた。しかし、止まってはいられないので自分の席に向かう。席に座って支度を終えると、それを見た教員が授業を始めた。
(……、何で壮太がここに…)
休み時間。上谷は壮太のもとに行って話をした。
「壮太…、だよな?」
「…、久しぶり…だな。元気にしてたか?」
笑顔でこちらを見ている。何やら嬉しそうだ。
「ブレイバーは元気か?」
「ん? あ、うん。もちろん。ブレイバーもミラーマンに会いたがっているから。放課後インターネットで落ち合おうよ」
「今はフリーズマンだけどな」
「……、また何かあったの?」
「…、まぁいろいろとね」
放課後、屋上で上谷は壮太に今まであったことをすべて話した。壮太は真剣な表情で聞いていた。話が終わった後、上谷は壮太に
「そういえば、曾根田は?」
「え、あー、曾根田もこの学校にいるよ。でも、会うのは難しいかも」
「何でさ?」
上谷が軽く聞くと、壮太はいきなり笑いながら
「実はねぇ、曾根田ここの防衛としているの。だから学校では無理」
上谷はポカンと口をあけて驚いた。壮太は笑いながらどこかへ去って行ってしまった。しばらく、上谷は屋上で風にあたっていた。
科学省の部屋で、上谷は約束の場所に『フリーズマン』を送らせた。フリーズマンが場所に着いたころには、すでにブレイバーは待っていた。
「ごめんよ。遅くなっちゃって」
「…、本当にフリーズマンに戻ったんだな?」
今の姿を見て、少し不思議そうにしている。
「でも、前の時よりは強くなってるはずだから…」
それから少し喋っていると、
「…、! おい、今すぐゲートアウトだ」
フリーズマンが3人に向けて言った。
「え、どうして…」
「いいからッ!」
壮太と上谷は仕方なくAvatarをゲートアウトさせるとケーブルを抜いてテレビ電話の画面を出した。
「壮太。ゲートアウトしたか…?」
『でも、何で…。い…」
言葉が途切れた。突然ノイズがかかるとそのままパソコンの電源は落ちてしまった。そして、テレビでは緊急放送になっている。そして、科学省でも
『緊急警報発令! すみやかに避難してくださいッ! 繰り返します。今すぐ…』
何がどうなっているのかを知りたくて桐谷の部屋に向かい、部屋に入る。
「桐谷? 一体何が…」
「…、今すぐ地下に行くぞ。今すぐだ」
桐谷が席を立って上谷の手首をつかむと、引きずるようにして地下に向かった。
「おい、一体何が…」
「GATEが動き始めた。今すぐどうにかしなければ、世界は終わりだ」
地下につくと、桐谷に連れられてさらに奥の部屋にやってきた。すると、中央に以前すれ違った少年を見る。
「あれ、前に…」
少年はこちらを向いて少し歩くと、
「桐谷。今すぐゲートインだ。ここにあるサーバーからならGATEのサーバーに直通で行ける」
「あの…、君は…?」
上谷が不自然そうに聞くと、少し目を睨まして
「ごめん。名乗ってる暇はないんだよ。一刻を争うんだ。早くしてくれ」
上谷はほんとうに緊急事態ということを自覚すると、サーバーの前に行き、Avatarをゲートインさせた。そして、サーバーの前にモニターが出るとそこにフリーズマンが映る。
しかし、そこには何もない空間が広がっているが、よく前のほうを見てみると、どす黒い何かが広がっている。
「フリーズマン、頼んだぞ」
フリーズマンはゆっくりうなずくと、前を向いて走って行ってしまった。
奥につくとそこにはどす黒い円があり、中央には巨大な獣がいる。フリーズマンは戦う態勢を整えると、
「上谷。バトルコネクタを接続しろ」
と、上谷に命令口調で言った。上谷はポケットからバトルコネクタを取り出すとリーダーズコンピューターに接続する。
「フリーズマン、おそらくこいつを倒せば道は開く。全力で行くぞ!」
「ゲートバトル、」
「オペレーション!」
始まった。フリーズマンはまずバスターをチャージせずに連射するがすべて弾かれてしまった。それを見て、左手をソードに変形させると走って飛んで、真上で突き刺すような形で剣を刺した。
「グオオオォォォォオオオオオオオ」
瞬時に獣が叫ぶと全体から黒いオーラがはなたれてフリーズマンは吹き飛ばされてしまった。ソードは壊れて、地面に背中を強打する。
「がぁッ!?」
起き上ろうとすると、すでに目の前に獣がいて足で踏みつけられる。全身に痛みが広がっていく感じがした。
「うぐ…ッ」
どんどん地面に叩きこまれて最後には足から出てきたビームが直撃した。周りの地面を砕いてフリーズマンが浮き上がる。痛みを我慢して体を起き上らせると両手を『ジェットファング』と呼ばれる武器に変形させて獣の誓うまで浮いている地面を利用して向かい、顔面を斬り裂いた。うまく地面に着地すると、様子をうかがうようにして構える。獣は頭を振ると、口から炎を出してフリーズマンの周りを火で囲ってしまう。フリーズマンは上を見てジャンプするが、獣はそれを見て足からビームを出してフリーズマンの腕のあたりにあてた。
「ッ!?」
バランスを崩して地面に頭から落ちてしまった。少し転がり壁にぶつかると、すぐそこまで獣が迫ってきていた。フリーズマンは目をそちらに向けるが体が動かない。体はバグに浸食されていた。
「グォォォォォォォッ!」
一歩的な虐殺が始まった。
上谷は見ていることしかできなかった。気がつけば、画面にはボロボロになったフリーズマンが映し出されていて、その目の前には獣が雄叫びをあげている。
「シャープマン。フリーズマンを守れ」
いつの間にか隣には桐谷が立っており、ケーブルをサーバーにつなげていた。モニターにシャープマンが現れて、剣を構えた。その瞬時、獣はシャープマンを鋭い目つきで睨み体を動かして雄叫びをあげるとこちらに突っ込んできた。シャープマンは上に飛んで右手にバスターを出すと連射を始めた。何発か当たるが、すべて弾かれてしまう。
「グォォォオオオオオオオ」
獣が手を上げて、上空に上がっていたシャープマンを突き落とすとした。しかし、触れた瞬間にシャープマンは消え、別の所から手裏剣を投げる。何発か当たり、獣がバランスを崩してふらつく。今度は両手をソードに変えるとどんどん足を走りながら斬っていく。獣はどんどんバランスを崩して倒れた。
「今だッ! 止めを刺せ!」
桐谷が指示を出すが、シャープマンは動こうとしない。
「どうした? 早くするんだ!」
「も、…ありません…」
かすれ声で言うと、そのまま倒れてしまった。
「まさか、いつの間に…!?」
シャープマンもバグに浸食されていた。2人のAvatarは体を自由に動かすことができずにそのまま倒れている。
「……、二人とも。悠木博士からこれを預かっていた。渡しておくよ」
これを見ていた少年がポケットから二つのチップデータを取り出して、それぞれに渡す。
「…、なんだこれ? 何も書いてないぞ…」
しばらく眺めていると、上谷のリーダーズコンピューターに通信が入る。
『キンキュウカイセンヲヒラキマス』
音声の後に少しノイズの音がしたが、すぐにノイズは消えて声が聞こえた。
『大介、桐谷君!』
「と、父さん? フ、フリーズマンが…」
「すいません、悠木博士。『未来』、『由来』、ともにバグにやられてしまいました」
全く違う呼び名で下を見ながら言う。しかいs、二人はそれを気にせずに早く先の事を聞こうとした。
「父さん、どうすれば…」
『さっき渡された『チップデータ』…、あれを使えば二人は復活するかもしれないが、その前にお前たちは受け入れなくてはならないことがあるが…、覚悟はあるか?』
「…、フリーズマンとまた話すことができるなら、なんでも受け入れる覚悟はある。だから…」
少し間を空けて、桐谷も
「…、今まで、何か隠していたことは知っています。このまま、終わるなんてできません」
『そうか。では話そう…』
息を吐く音がこちらにも聞こえた。そして、
『では話そう。『フリーズマン』と『シャープマン』の過去を』