大リーグボール2号も親友も、思い出の長屋も失った
飛雄馬は野球を辞める決心をする
そんな時あの女番町お京から電話が入った
いたずらと思った飛雄馬だが、飛雄馬の起こした乱闘
事件でお京は反社会勢力から脅され
午後10時までに50万支払えと言われる
お京の手下からそれを聞かされた飛雄馬は
お京のいる芸能事務所に向かうが
お京はナイフを取り出して命がけの抵抗に出た
後部座席にはお京の手下の女2人も乗っている
まあ一人で乗り込みたいとこだが、飛雄馬は
西丘の事務所知らないしね
「このアマ、あれで星を守ってるつもりらしいぜ」
「ズベ公のわりには健気なもんだな」
「なんとでも言いなっ
そこから一歩でも動いたら容赦なくぶっ殺すよ
アタイは本気なんだ」
「おい、いい加減にしろよお京
お前自分が何してるのかわかってんのかぁゴルァ」
「わかってるさ・・・
アタイはここで死んでも覚悟はできてる
死にたいやつはかかってきな」
「お京、たとえここで星を守ったとしても
そんなのは一時しのぎにすぎんぞ
俺たちがたかが50万で動いてると思うなよ」
「よすんだ京子さんっ
バカなマネをしたら君もこいつらと同じになっちまう」
「ちょっと、アタイのナイフ返してっ
これはアタイとこいつらの問題なんだからさ」
「姐さんっ、ここは星さんが話を付けてくれるって
言うんだから、ひとまず逃げよう、ね!」
「なんで星さんを連れてきたっ
恨むよマジで」
「アンタが西丘さんか・・・・
ここは俺が50万払うから、この子たちは見逃してやってくれ」
「そうですか、それはありがたい
それに助けてもらって感謝しますよ」
「ただ・・・・」
「ただなんだ!?
50万払えばそれで文句はないはずだぞ」
「ま、数分前ならそれでもよかったんですがね・・・・
その女がこんな事してしまったんで状況が変わりました
もうひとつ我々の要求を呑んでもらいましょうか」
「おやおや、まだ何にも言っちゃいませんよ
話くらい聞いてくれてもいいでしょ?
迷惑を被ってるのは我々なんですから」
「ま、たいした事じゃないんですが
芸能界もプロ野球界も我々にとっては興行です
お客に技能を見せてお金をいただいてる・・・・
つまりショーです」
「ショー?」
「つまりコンサートにしろ試合にしろ、面白ければ
お客は入るし、つまらなければ入らない・・・」
「重要なのは演出ですよ
星さんにはその演出の手助けをお願いしたいんです」
「・・・端的に言いましょう
つまり星さんには、私の指示通りに投げていただきたい
指定するバッターにわざと打たせてあげて欲しいんですよ」
「八百長・・・・ハハ、まあ世間ではそんな言い方も
されてますが、野球にもそろそろ筋書きってのが
必要じゃないかとね・・・プロレスでいうブックですよ」
「なぁに、私の言うとおりにやれば絶対にバレる
事はありませんよ
それに50万円いただくどころか、逆に謝礼を差し上げましょう
星さんにとってもお得な話だと思いますが」
「俺に八百長・・・ははははははははははは
このポンコツの俺に八百長の依頼とはね、ははははは
それに素人のあんたのシナリオなんかすぐにバレるぜ」
「資料を集めるのに苦労しましたが、今や
ちょっとした野球博士、特にあなたに関しては
フリークスと言うくらい詳しいんですよ」
西丘、飛雄馬のこれまでの経歴や魔球の特訓
その他記録に関しての事を詳しく話し出す
「ま、消える魔球を花形選手には打たれましたが
まだまだあなたは巨人のエース級投手だ・・・
ポンコツなんて自分を過小評価しなさんな」
「俺が花形に打たれてほぼ1ヶ月だ・・・・
そろそろ大リーグボール3号が完成する頃だと
言いたいんだな」
「ほっほっほ、察しが早いですな」
「無駄だ!
俺はもうマウンドに立つ気はないっ」
ってか飛雄馬1ヶ月も登板ないのかよ・・・・・
「明子さん・・・・でしたっけ、あなたのお姉さん
行方不明なんですって?」
「・・・・・!?」
「いえね、なんなら私どもで探してあげましょうか
って事ですよ」
「ふふふっ、さあね・・・・・
ただ物わかりの悪い弟さんに言う事をきかせて
もらおうかなぁ・・・とね」
「私も手荒な真似はしたくないんですがね・・・・
しかしいざとなったら何でもやりますよ
手段は選ばない主義なんでね」
「ははははっ、安心してくださいよ
準備はこっちでやりますし、星さんはただ言うとおりに
やってもらえればね・・・
ま、お互い大儲けしましょうや」
スッ
お京の持ってたナイフを取り出す飛雄馬
「ほ・・・・星さんっ」
「ま・・・待てっ、冷静に話し合いましょう・・・ねっ
そんな事しても星さんには何の得もないはずですっ」
「ほ・・・星さん、やめてっ
あんたがそんな事しちゃいけないよ!
あんたウジムシのアタイとは違うんだっ」
しかしなおも西丘に迫る飛雄馬
「お・・・おいっ、本気か!?
そんな事してただで済むと思ってんのか・・・」
「安心しなよ西丘さん・・・・
別にアンタを刺すつもりはないぜ」
「京子さん、命がけで俺を守ろうとした
あんたの真心に今こそ答えてやるよ」
「アンタに俺が八百長させたくてもできないって
証拠を見せてやるよ」
「巨人の星を掴み損ねたこの役にたたない左手を
叩き落して見せてやるっっっ」
『父ちゃん・・・いや星一徹
あんたと俺の戦いもこれで終わりだ・・・・』
『勝手に100にでも1000にでもなったと喜ぶがいいっ
これが俺からの最後のプレゼントだ』
『鮮血にまみれたこの左手、あんたに返して
やるぜっっっっっっ』
巨人の星(栄光の星編)第163話 「京子の真心」
につづく