宿敵花形に大リーグボール2号を打ち砕かれた飛雄馬は
勝手にマウンドを降りて東京に帰ってしまった
その頃、打倒大リーグボール2号に燃えていた左門も
花形に先を越されて内心穏やかではなくなっていた
気晴らしに夜の街に出かけたところ
街の不良グループに因縁を付けられ揺すられてしまう
偶然それを目撃した飛雄馬は不良たちと乱闘に
そこでグループの女番町お京に出会い
仲直りにゴーゴー喫茶に招待された
「ねえ左門さん、星さんって彼女とかいるの?」
「え・・・さあ・・・前はいたとか聞いた事は
あるばってん・・・今は知りましぇん・・・」
「ほ・・・星さんって・・・あんたもしかして
巨人軍の星投手ですか?」
バーテンに気付かれる
「ちょっと、そんなヤボな話はやめてよ
今日はプライベートで来てるんだからさ」
「は・・・はぁ、すんません」
「そうだわ星さん、せっかくゴーゴーに来てるんだから
アタイと一緒に踊ってくれない?」
「え・・・・いや、さすがに今日はそんな気分じゃないんだ
花形ってバカに打たれたし・・・・左門と踊ってくれよ」
「ひえっ、冗談じゃなかとですっ
わしゃあ生まれてこのかた、ゴーゴーなんて
踊った事ありましぇー--ん」
「ふふっ、左門さん・・・それを聞いたら
なんか左門さんの踊るとこ見たくなったぜ・・・・
男左門、逃げたりしないですよね」
悪そうな顔の飛雄馬
意外にも左門がこれに乗っかる
「よしっ、わしも九州男児です
ゴーゴーから逃げたとあっては男が廃りますけんっ」
「・・・ホントは星さんと踊りたかったけど・・・
まあいいわ」
左門、京子と本当に踊り出す
『さ・・・左門・・・何やってんだあの人・・・』
『ま、いいや・・・今の俺は人の事にかまってる
余裕はない、、、、』
お京もそれを見て噴き出すが、あまりに真剣に
踊りを覚えようとしてる左門に付き合う
そう、オズマに「お前には青春がない」と言われて
付き合ったアイドルの橘ルミの事を思い出す
『ルミさんか・・・最近見ないけど
どうしてるんだろう・・・・』
そして恋愛経験を思い出すと、どうしても避けられない
記憶がよみがえる
『美奈さん・・・・・』
『二度と思い出すまいと誓ったのに・・・・・
またあの辛い記憶が、、、、』
美奈との死に別れで飛雄馬は生涯愛する女は
美奈ひとりだと心に誓ったのだ
「美奈さんっっっっ」
「美奈?
誰それ??」
「あっ、、、、お京さん!
左門はどうしたんだ?」
「うふふふっ、なんかメモしなきゃとか言って
トイレに行っちゃったわ」
「メ・・・メモ?」
「今日は変な一日だ・・・・昼間花形に
大リーグボール2号を打たれ、ヘコんで帰ったら
今は女番町と酒飲んでる・・・・わけわかんねーよ」
「その女番町ってのやめてちょうだい
アタイ京子って名前なんだから、京子って呼んでよ」
「星さんと会う前までは、女番町なんて呼ばれると
ちょっとうれしかったけど、今は違う・・・・
アタイバカだからうまくは言えないけどさ・・・・」
「星さんに殴られて目が覚めたよ・・・・
本当に男らしい男に出会えた・・・・・・
星さん・・・・・あんたが・・・・好きっ」
「あっはっはっはっは、そりゃいいや
俺もお京さん好きだぜ、なんか面白いしさ」
「そんなんじゃない・・・・星さんを愛してるって
言ってんの
女としてさ・・・一目ぼれってやつ?」
「・・・・・・・・・」
「ね、星さん・・・よかったらアタイと付き合って
くれないかな・・・」
『こいつはまいったぜ・・・俺は美奈さん一筋と
心に決めてるんだ
しかし俺、告白されて断った経験ないからなぁ・・・
どうすれば傷つけず断れるんだろう、、、』
「ふふっ、その真っすぐな目がたまんない・・・
アタイが八百長だって言った時の星さんの真剣な目」
「アタイ星さんが言ったようにウジムシみたいな
薄汚れた女だからさぁ・・・
そんな綺麗な目に魅かれちゃうのかもしれない」
「左門じゃないけど、未成年者の飲酒は法律違反だ
それにウジムシなんて言ったのは謝る
君はそんな子じゃない」
「その優しさもたまんないわ・・・・
昼間花形って人に打たれて、人の事なんか考える
気分じゃないはずなのに
やっぱ包容力がハンパないよね」
「アタイ星さんが言うなら不良も止めるし
きっといい女になって見せるわ」
「俺にそんなもんないよ・・・・全てを失った俺には
何にも残ってない、、、、幸せになりたいなら
もっと他に・・・・」
「バッチリメモったとです!
なんかゴーゴーって楽しかとですよ
お京さん、もう一度わしと踊ってくれんとですか」
「ガハハハハ、お京さんと踊ってると更に楽しかぁ~
わしこんな気持ち初めてですたいっ」
「あ・・・あら、そう」
戸惑いながらも左門とゴーゴーを楽しむ京子
『さ・・・左門・・・・朴念仁で真面目一本と思ってた
あいつが・・・・俺また妄想でも見てるのか・・・』
『最初はなんか高飛車で変な女だと思ってたけど
おかげでヘコんでた気分がちょっと晴れたぜ・・・』
「ねえ星さんっ、アタイアンタが好きなのはガチだよ!
またいつか、こうして会ってちょうだい」
「えっ?」
「わし・・・・あのお京さんが好きになってしもたとですっ
彼女が星君をば好きなのは仕方なか・・・わしは
こういう見栄えですけん・・・しかしお京さんの事思うと
胸ば締め付けられる思いなんですっっっっ」
「恥ずかしかぁー-----っ
わしこの辺で帰りますたいっ!
兄弟たちが目を覚ましますけんっっっっっ」
『マジかよ・・・・あの左門が・・・・・
でもああ言える左門がなんか羨ましいぜ』
「よぉ、さっきはよくもやってくれたなぁ
俺っちもやられたままじゃ気分がクソ悪くてな」
「ふっふっふっふ・・・こいつらのバカさ加減も
羨ましいぜ・・・俺にはもはや情熱を傾けるもの
何もないしな」
「さっきはお京さんに八百長呼ばわりされてつい
こいつらボコったけど、それに何の意味もない」
今度は一方的にボコられる飛雄馬
『大リーグボール1号を完成させるために剣道や
ボクシングやってたからこいつら倒すのは簡単だ・・・
でもそんな事やっても俺の絶望感はなくならないっっっ』
「どうした?俺をボコるんならもっと真剣にボコれよ
こんなんじゃあ俺は全然燃えねえぜ」
「はあっ!?」
「な・・・何言ってるんだお前・・・・
なんで反撃してこねえ・・・・気味が悪いぜ」
あまりに一方的にボコられる飛雄馬に
チンピラたちの方が薄気味悪がって、途中で止めて
帰ってしまった
「か・・・帰んなよ・・・もっとボコってくれよ・・・
俺全然燃えないじゃないか。。。。なあ・・・」
巨人の星(栄光の星編)第159話 「借りを返せ!」
につづく