台湾キャンプであわやパーフェクトの好投を演じた
飛雄馬は、軽くても速球だけでやって行けると自負する
そんな頃、同じテレビ番組で共演した花形と左門は
もし今の飛雄馬と対戦したら必ず滅多打ちにすると
宣言した
同じ番組に出ていた金田は飛雄馬の新変化球に
期待していたが、飛雄馬自身がその気のない事に気付き
絶望してしまう
一方花形と左門が飛雄馬の欠点に気付いたと知った
一徹もまた絶望するのであった
そんな事とは知らない飛雄馬は台湾キャンプも終わり
帰国の途についていた
『きっと父ちゃんも俺の好投を知って
球の軽さは思い過ごしだったと安心してくれるに
ちがいない』
『ははぁーん、台湾での好投を知って早速俺に
インタビューか・・・ふふっ、悪い気はしないぜ』
だが記者から聞かされたのは、先日の花形と左門が
出演した番組の事だった
「なんか星君のピッチングには秘密があって
それさえわかってしまえば、君など滅多打ちするって
はっきり断言してたよ」
煽るマスゴミw
『クソォ、左門だけでなく花形も俺の球の軽さに
気付いたというのか、、、』
だが飛雄馬
「俺の台湾での好投をろくに知りもしないくせに
なんで滅多打ちできるなんて言えるんだ!
あいつららしくないぞ」
記者に反論する
「い・・いや、俺たちにそんな事言われても・・・
あっ、そうだ!同じ番組に金田さんも出てたから
詳しく聞くといいよ」
「金田さん、俺台湾で速球投手としての自信を
取り戻しました!
金田さんに貰ったアドバイスを無駄にして
申し訳ないですが、俺やっぱり速球派投手として
やっていきます!」
「わかったがや・・・・そんなに言うんなら
とことんまで勝手にやればいいだぎゃ」
金田の素っ気ない態度に驚く飛雄馬
「そ・・・そりゃ金田さんと約束した
新変化球を途中で投げ出したのは悪いけど・・・」
「だから好きにしろと言っとろーが!
もうわしゃ知らんだぎゃ」
とっとと行ってしまうカネヤン
『わかったぜ、好きにやらせてもらうぜ
それにしても花形と左門のやつは許せんっっっ
必ず俺の速球でキリキリ舞いさせてやる』
「帰って来たかっただろうが、あの花形と左門の
番組の事を知ってそれどころじゃなかったんだろう」
「帰ってくれば、お父さんから何か助言も
受けれたのに・・・」
「助言?・・・・ふふふふ」
「何がおかしいのお父さんっ」
「なあ明子、飛雄馬がもし巨人を戦力外になって
帰ってきたら、暖かく迎えてやってくれんか」
それに気付いた一徹親父
「なんだ、わしがこんな弱気な事言うのが
おかしいか?」
「いいえ、やっと普通のお父さんになったのね」
「普通のお父さん?」
やっと野球キ○ガイが治り、当たり前の親父に
戻ったと感動の涙を流す明子姉ちゃん
まあ気持ちはわかるよね
「うむ、わしもこれまでメチャクチャやって来た
からのう・・・今更普通の親父になれる
自信はないが・・・」
このシーン、野球以外で初めて親父らしいセリフを
言う一徹だが、これが最初で最後の貴重なシーンだ
しかし明子姉ちゃん、ここで気を取り直し
「でも飛雄馬が負け犬のように戻って来るわけはないわ!」
「飛雄馬にはお父さんの血が流れてるのよ!」
試練の道を選んだ明子姉ちゃん
「おーい、伴っっっ!」
台湾から帰ったばかりの飛雄馬も早速合流
「ちゃんと練習してたかヘボキャッチャー」
いきなり毒舌の飛雄馬
「そっちこそ台湾で風俗に通ってたんじゃ・・・」
「あっ、いや失礼しました!
台湾でドエライピッチングしたそうで」
「な・・・なんだよ伴、急に改まって・・・
まあ一軍打者を手玉に取ったのは本当だけどな」
そこに宮崎キャンプ居残りだった他の選手も寄ってくる
みんな台湾での飛雄馬の好投をベタ褒めする
「こ・・・今シーズンは巨人のエースとして
2桁は勝ちます!」
調子に乗る飛雄馬
「おいおい、俺の立場はどうなるんだ」
台湾に連れて行ってもらえなかった堀内さん
この年は14勝はしたが13敗とあまり良いシーズンではなく
150キロを超える速球も早くも劣化しはじめていたらしい
「いやぁ、巨人のエースは堀内さんでした」
『って一応言っとこう』
だが伴の心には一抹の不安もあった
『花形や左門がハッタリかますとも思えん・・・
もしやつらの自信が本物だったら・・・』
『テレビ出演で言ったことは事実だ
しかし本人不在で言うのも礼儀に欠けると思い
直接手紙で断言する』
「うぬぬぬぬ、これは挑戦状じゃないか
花形の野郎っっっ」
憤る飛雄馬
「あいつだけは絶対に許さんっ!
俺は今モーレツに燃えてきたぜ」
しかしそれに追い打ちを掛けるように
もう一通飛雄馬にハガキが届く
『もしかして星の好投には何か早合点が
あるんじゃないか・・・もしそうだとしたら・・・』
『間もなく始まるオープン戦でその答えが
わかるはずじゃ』
巨人の星(雄飛編)第69話「つかみとられたホームラン」
につづく