里見蘭さんの「人質の法廷」を読みました
二段組みで600ページという渾身の法廷ものです
女子中学生連続強姦殺人の疑いで逮捕されたのは、「いかにも」という感じのコミュニケーション弱者の独身中年男性
彼には、16年前ですが、被害者が通っていた中学校に制服を盗むために侵入した前歴がありました
そのうえ、本件の直前にその中学校で行われていた女子ソフトボール部の試合を見物しており、その試合には被害者が出場していたのです
さらに、最悪なのは、どちらの被害現場から採取されたタバコの吸い殻からも彼のDNAが検出されてしまいます
彼は被害現場には行ったこともないと否認しましたが、いくつもの証拠が彼を指し示すために警察や検察の取調べは苛烈を極め、彼は耐えきれずに重要な事実について一部虚偽自白をしてしまいます
勾留満期前の釈放なんてはなから無理ですし、保釈も最後まで認められません
そのような絶望的な状況に立ち向かう主人公は、弁護士になってから日も浅い女性の弁護人
刑弁スピリッツに燃える彼女に対しては、検察官だけではなく同僚の先輩弁護士までもが極めて冷ややかです
最後まであきらめない彼女が報われることはあるのか
すべてのキャラクターが少々ステレオタイプに感じられますが、専門的で難しい話になりがちなところをわかりやすくするためには、むしろ好ましいともいえます
全体的にもノンフィクション的要素とフィクション的要素のバランスがとてもよくて、ラストはかなり意外な流れになりますが、ハラハラしながら読み進めた読者はしっかり報われます
専門用語や手続の流れについてとてもよく取材されているので、その点でもストレスを感じることはありませんでした
法学部の学生をはじめ、刑事訴訟に興味のある方には強くお勧めしたいですね