青崎有吾さんの「地雷グリコ」を読みました
既発表の「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」の4編に加えて、書き下ろしの「フォールーム・ポーカー」と「エピローグ」が収録された短編集です
各短編のタイトルから想像できるとおり、本作はすべてゲームでの対決を素材にしたものになっています
「地雷グリコ」は、46段ある神社の階段でジャンケンを使ったグリコゲームをするのですが、2名のプレイヤーは審判に対して事前にそれぞれ3箇所の段に地雷の設置を申告しておき、相手の地雷が設置された段で止まったら、そこから10段下がらなくてはなりません
「坊主衰弱」は、百人一首を使った神経衰弱ですが、主人公の相手は目印をつけた札を使っています
ガンパイ破りはこれ系の基本ですよね
「自由律ジャンケン」は、通常のグー・チョキ・パーに加えて、特殊効果(「相手の手すべてに勝つ」だけはダメ)のついたオリジナルの手を1つ設定します
「だるまさんがかぞえた」は、暗殺者役のプレイヤーが、40歩分離れた位置にいる標的役のプレイヤーを、通常のだるまさんが転んだと同じような形で狙っていきます
ゲームは5回行われますが、1回ごとに各プレイヤーは数字を事前申告して、暗殺者役は申告した数だけ歩き、標的役は申告した数だけ読み上げをします(1音の読み上げと1歩の歩行は同じタイミングで行います)
暗殺者はできるだけ大きな数を申告して、5回のうちに標的にタッチしたいわけですが、それだと標的が小さな数を申告しただけで、毎回標的の読み上げが終わった後に暗殺者は歩き続けて負けることになってしまうので、標的には5回のうちに合計50字を使うという制約が課せられています
「フォールーム・ポーカー」は、5枚配られる通常のポーカーとは異なり、3枚での4回戦勝負です
ただし、交換するためのカードは、スペード・ハート・ダイヤ・クラブごとに分けて別々の部屋に伏せておかれており、交換するためには元いる部屋から移動してそれらの部屋に入り、制限時間以内に元の席につく必要があります
自分に配られたカードと残りカードの枚数の情報を中心に、いかに合理的に強いカードを奪い取るかが基本なのですが、ルールに反しない限りでのギリギリの盤外戦こそが見せ場になります
この回は書き下ろしであるうえに、それまでのゲームの総決算になるものであるだけに、ものすごく力が入れられていて、ゲームのルールが簡単には説明できません
ただ、主人公の最終目標はシンプル極まりないものであって、そこから逆算された仕掛け自体にはやり過ぎ感もありましたが、素晴らしかったです
青崎さんのツイッターはいろいろなエンタテインメントが紹介されていてとても参考になるのですが、それをみていればすぐにわかることは、青崎さんは「嘘喰い」が大好きということ
本作は、まさに「嘘喰い」「カイジ」「賭ケグルイ」のような世界を青崎さんの視点で紡ぎ上げたものになっています
それぞれのゲームは、誰もが知っているメジャーでシンプルなものなのに、オリジナルルールを加えることでグッと奥が深くなることには感心させられますし、ストーリーとしても劇的な展開にものすごくワクワクさせられました
小説本来の面白さとは少し違うのかもしれませんが(多分マンガ化・アニメ化されますよね)、今年読んだ小説の中ではダントツに楽しかったです
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