島田荘司さんの「ローズマリーのあまき香り」を読みました
本作も島田さんの長編におけるひな形どおりの展開でした
すなわち、冒頭に回収が危ぶまれるほどの魅力的な謎を提示し、直接謎解明にリンクするわけではないようにも思える作中作を織り交ぜ、最後に御手洗潔が合理的な解決をみせるというパターンです
1977年に、ニューヨークにそびえ立つ高層ビル内の50階にある劇場の控え室で、不世出のバレリーナが撲殺されます
しかし、そこは密室状況にあり、なおかつ、撲殺されたのは第2幕と第3幕との間の休憩時間であるはずなのに、第3幕以降も当該バレリーナは大観衆の前で踊っていたというのです
密室の謎も、死んだはずの者がその後の舞台を務めたということも、最終的な解決は極めて単純で、そこだけとりあげれば面白みに欠けるものでした
「やはり『ノックスの十戒』には意味があるのだ」と痛感します
しかし、そこに至るまでの「見せ方」は上手ですね
脳のオートパイロット理論を持ち出したり、小池一夫・池上遼一による怪作「赤い鳩(アピル)」でも有名な日ユ同祖論を取り上げたりと多彩です
問題を解決することよりも、問題を設定する方がずっと難しいことですし、その意味ではさすがでした