エルヴェ・ル・テリエの「異常(アノマリー)」(加藤かおり訳)を読みました
表紙裏のカバーの紹介文では、様々な立場の老若男女が乗り合わせたニューヨーク行きエール航空006便が、着陸直前に異常な乱気流に巻き込まれたが、その3ヶ月後に再びエール航空006便が全く同じ乗客を乗せてニューヨークに降りようとしていたという内容の文章が掲載されています
冒頭の登場人物紹介リストの中に確率論研究者があげられていることから、ニューヨーク行きエール航空006便の乗客が3ヶ月前と全く同じという設定は、驚くべき確率をテーマにした作品になっていて、山口雅也さんの「奇遇」に似た雰囲気の作品なのかなと予想しました
しかし、読んでみると、本作は実際には平野敬一郎さんの「空白を満たしなさい」に似た雰囲気の作品でした
いずれも同じようなSF的アイデアをベースにしているのですが、どちらも見せ方がうまいですね
本作では第1部で登場人物達の日常が描かれており、その部分だけでもなかなか読ませるのですが、これが上記アイデアを受けて、第2部以降でさらに深まっていきます
最初に本作の企みに気がついたときは、思わず「やられた」と膝を打ってしまいました
すい臓がんを患う男、年齢差ある恋愛に悩む男女、殺し屋などがとても印象的でした
ラストは現実路線で手堅く締めていくのかとおもいきや、SF的方向をさらに大胆に進めて見事なカタストロフィをみせてくれます
2020年のゴンクール賞を受賞したというのも当然の作品でした