アントニー・マンの「フランクを始末するには(Milo and I)」(玉木亨訳)を読みました
概ね1998年から2003年にかけて発表された12の短編からなる作品集で、2012年に翻訳された形で発行されています
このたび「創元推理文庫2021年復刊フェア」の対象となっていたことから、「ウサギ料理は殺しの味」とともに手に取った次第です
アントニー・マンという名前で検索しても情報が出てこないのですが、本作は大当たりでした
まずは、作品集の原タイトルになっている冒頭の「マイロとおれ」、そして邦題タイトルになっている「フランクを始末するには」を立て続けに読んでみたのですが、それらは筒井康隆さんが昔とっくに書いていそうな方向性の作品で、悪くはないものの強い印象は受けませんでした
しかし、「豚」、「買い物」、「エスター・ゴードン・フラムリンガム」、「プレストンの戦法」はいずれも抜群のできでした
「豚」は、どぎついラストが待っているのですが、ミステリ系の小説を読みなれている読者には予想がついてしまいます
特に、今年有名な賞を獲得したある長編小説を先に読んでいれば、一発で何が起きるかはわかります
しかし、それでも切れ味鋭い短編の形をとっていることもあって、十分な手ごたえを感じさせてくれました
「買い物」は、買い物リストだけを提示していくという意欲的なスタイルをとっています
それだけなのに、何が起きたのかをしっかり伝えてくるところがうまい!
「エスター・ゴードン・フラムリンガム」は、作家のたまごが編集者からゴーストライターになることを持ちかけられるという作品ですが、とにかく捧腹絶倒
様々な設定がすべて掘りつくされてしまっているというミステリの現状を、巧みに笑いに転換しているところが素晴らしい
「プレストンの戦法」はチェスをテーマにした作品で、あるときチェスの必勝法を見つけたと言い出した人物が、みるみるうちに世界チャンピオンを打ち破るまでになります
そこからの流れが本当に見事で、ハッとさせられました
有名なフェルマーの逸話をモデルにしたようなネタもうまくいかされていましたね
12編中4編が大当たりで、他にもまずまずの作品が収録されているのですから、今回の復刊をきっかけにもっと注目されてもいい短編集だと思います