都留泰作さんの「竜女戦記」第1巻を読みました
オープニングがいきなり素晴らしい
大陸の大国「翠」で奴隷の反乱が起こり、栄華を誇った都の黄京には虐殺の嵐が吹き荒れます
3人の王子だけが竜に乗って西の島に逃げ、そこで蛇になって陀国を三分して治めることになったという伝説的な流れです
たった6ページなのに、とても引き込まれました
本編が始まると、主人公は北蛇州の氷向で武家の娘として生まれ育った「たか」という気丈な女性です
たかが30歳になろうとするころ、隣国の氷庫が侵攻してきてたかは夫と子らとともに命からがら逃げだすことになります
その際における、たかの父のエピソードが印象的でした
年老いて身体は若い時とは全く異なる状態にあったにもかかわらず、心は勇敢なままでたかの目の前で非業の最期を遂げます
中竜蛇州の桜都に落ち延びたたかが、そこで前の夫と出会うシーンもなかなか壮絶でしたが、物語はさらに突拍子もない方向に転がっていきます
いかれた乞食坊主と思われていた老人が、実は15年前に行方不明になっていた氷向の先代の殿様で、この間の修行の成果を示すと言い出します
天下取りを望んだ者には、血を分けた子をいったん仏の贄に差し出せば、修呪を受けさせてやるというのです
仏が感応すれば自らの家督を譲って天下取りに邁進させてやるが、器でないとして仏が感応しなければ、その場で腹を切らなければならないという高リスクのチャレンジです
心優しいたかの夫が逡巡したあげく挑戦を試みますが、たかは彼には荷が重すぎて子らが帰ってくることができなくなると考えて、土壇場で彼の代わりに「天下をのぞみます」と答えます
作者は生物学を修めた後に文化人類学に進み、現在は京都精華大学マンガ学部教授をされているとのことで、その多彩なバックボーンを生かした奇想天外な物語が、今後どのように展開されていくのか非常に楽しみです