陳浩基/ディオゲネス変奏曲 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

陳浩基さんの「ディオゲネス変奏曲」を読みました

 

以前読んだことのある作品(2012-06-15)とは異なり、17の短編からなる短編集です

 

作品の雰囲気が幅広いためにとても楽しめましたが、特に好みだったのは以下の4編

 

「藍を見つめる藍」は、ある女性のネットストーカーをしている男性が主人公

 

対象者のブログを読み込んで、家の場所などはとっくに特定済みです

 

そんな彼が、いよいよ家に乗り込んで猟奇的なことをしでかそうとしている!?

 

ひねりにひねった展開と主人公の変質者ぶりが全開となるラストがよかったです

 

「サンタクロース殺し」は、マンハッタンのホームレスが主人公

 

クリスマスイブの晩に、ホームレスのたまり場で、ジョンと呼ばれているホームレスが犯人当てのなぞなぞを出します

 

あるときサンタに殺害予告の脅迫状が届いて、クリスマスの朝に戻ってきたそりにはサンタの首なし死体が乗っていたというのです

 

みんながいろいろな回答を出す中で、タイラーの答えはジョンに響いたようで・・・

 

ちょっとオー・ヘンリーっぽいラストがよかったです

 

「聖誕老人謀殺案」という原題も雰囲気があって好きですね

 

「時は金なり」は、時を売り買いできる技術が実現化された世界での話

 

大学生の主人公は、高嶺の花の女の子に高価なプレゼントを贈るために時間を売ります

 

時間を売ると、気がついたときには時間が飛んでいるものの、その間の記憶はしっかりと残っている状態になります

 

それ以降、主人公は面倒なことがあるたびに時間を売ってタイムリープするようになりますが、人生の最後に学生時代の友人と出会って意外な事実を知ります

 

コップに半分の水をみて「もう半分しかない」と考えるか、「まだ半分もある」と考えるか

 

物事の捉え方について印象的な話になっていて、ちょっと星新一っぽい皮肉さも好きですね

 

「見えないX」は、大学の初回授業に紛れ込んだ「僕」が主人公

 

授業のテーマは推理小説の鑑賞や分析ということで、壇上の先生がいきなり推理ゲームを始めます

 

助手が演じる犯人がこの教室に紛れ込んでいるので、みなで質問と回答を繰り返して犯人Xを当てようというのです

 

果たしてXはだれなのか?

 

意外な人物がXであることに加えて、みなに身分証を作らせたことの意味が素晴らしかったです

 

作中には日本のアニメや芸能人のネタがけっこう散りばめられているのですが、原題の「隠身的X」も「容疑者Xの献身」を意識しているのでしょうか?

 

この作者については、次は評判のよい「13・67」を読んでみることにします!