島田荘司さんの「盲剣楼奇譚」を読みました
新聞連載されていた作品を加筆修正した長編で、大傑作「奇想、天を動かす」でおなじみの吉敷刑事シリーズになります
まず、終戦直後の混乱に紛れて金沢の盲剣楼という置屋に軍人崩れの男たちがなだれこみ、女性たちを監禁して乱暴狼藉の限りを尽くしていたところ、楼で語り継がれる伝説の剣豪盲剣さまとおぼしき男が現れてあっという間に男たちを斬殺し、女性たちを救ったというエピソードが語られます
そして、そのとき見張りをしていて生き残った男が、現代になってから当時の女将の孫を誘拐し、あのとき自分たちの前に現れた剣士の正体を教えろと迫ります
警察に通報したら子どもを殺すと脅されたために、女将の娘と知り合いであった吉敷刑事が個人的な極秘調査に乗り出すというところで、いったん江戸時代の剣客の話に舞台が移ります
島田さん得意の作中作だけあって(「水晶のピラミッド」のエジプトパートが好きでした)、この剣豪小説パートがめっぽう面白い!
七人の侍的なエピソードや、金貸しに用心棒として雇われた鮎之進が闇を暴くエピソードなど、終始ワクワクさせられました
なんと全体の8割がこのパートから構成されており、本作が吉敷刑事の物語なのか、剣豪山縣鮎之進の物語なのか、もはやわからなくなっていきます(まあ控えめにいって後者ですが)
剣豪小説パートが終わってからは再び現代の吉敷刑事パートに戻るのですが、そこからはすぐに結末となります
フーダニットとホワイダニットは作中作が始まる前までには感づいてしまいますし、ラストのパートで明かされるハウダニットにも驚きはありませんでした
その意味でミステリとしてはもうひとつでしたが、島田さんとしてもそれは織り込み済みでしょう
元が新聞連載だっただけあって全体的にとても読みやすく、エンターテインメントとしてとても楽しめました
ただ、吉敷刑事がこの後警察官でいることはさすがに許されないでしょうから、刑事としての吉敷シリーズはこれにて完結になるのかな?
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