ルーパート・ペニーの「密室殺人」を読みました
1936年から1941年にかけて8編のミステリを発表したイギリスの覆面作家ですが、現在では正体は明らかになっています
女性作家なのですが、当時のイギリスのミステリは女性作家が大活躍していますね
クリスティがデビューしたのは1920年、クリスチアナ・ブランドがデビューしたのが1941年です
さて、本作は、遺言状ですべての財産を引き継ぐ代わりに、親族たちとの同居を義務付けられた未亡人が、最近ひどい嫌がらせを受けるようになったと探偵事務所を訪れるところから始まります
探偵事務所の所長は、昔売れない芸人をしていたことがあり、その時に同じく芸人をしていた彼女にのぼせ上ってプロポーズをして断られたことがあるのです
しかし、現在の彼女は当時の面影は見るかげもなく、まるでゼリーのようにぶよぶよに太ってしまっただけでなく、性格の悪さが顔にはっきりと表れているような様子でした
結婚しなくてよかった!と思った所長は、それでも調査員をしている甥を未亡人の屋敷に派遣する際に、彼女が昔プロポーズを断った理由がわかったら報酬を上げると約束します
屋敷で調査を開始した甥ですが、コレクションの時計を壊したり、ミンクのコートをずたずたにしたり、とりわけ大事にしていた寄木造りになっている板張りの床を傷つけたりしたことについては、動機がある者ばかり
彼女は同居の親族たちに対して暴君のようにふるまっていたため、忌み嫌われていたのです
そんななかで、彼女が密室状況で刺殺されます
相当強い力でナイフが差し込まれているのですが、怪力自慢の彼女の兄には動機がありません
おまけに容疑者たちは睡眠薬を飲まされて自室で眠り込んでいただけでなく、部屋のドアが外から開けられないようにされていました
果たして密室殺人は誰がどのようにして行ったのか???
トリックは確かにアイデアとしては面白いもので、思わず笑ってしまいましたが、あまりにも雑で運任せすぎます
また、いちいちもったいぶる文章がかなり読みにくい
読者への挑戦状があるところ、容疑者たちの部屋のドアが外から開けられないようにされていた理由、被害者が所長のプロポーズを断った理由などは悪くはなかったのですが、全体としてはいまひとつかな
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