ドン・ウィンズロウの「仏陀の鏡への道(The Trail to Buddha's Mirror)を読みました
ニール・ケアリーシリーズの第2作で、1992年に原書が出版されています
最初の舞台は、前作(2018-08-14)の翌年である1977年のサンフランシスコ
そこでニールは、重要な研究をしていたにもかかわらず中国人女性と行方をくらませてしまった生化学者を探し当てることになります
なんなく発見したニールでしたが、二人を逃がしてしまった上に自らも誰かから銃撃を受けてしまいます
「男はつらいよ」の寅さんのようにめんどくさい惚れっぽさを持つニールは、李藍という中国人女性にすっかり魅せられてしまって、組織から止められたにもかかわらず二人を追って返還前の香港へ
なんとか二人をみつけるもまたもや逃げられ、九龍城砦に監禁されてアヘン漬けにされてしまうニール
「勇午」という交渉人を扱ったマンガでは主人公が必ず捕まって凄惨な拷問を受けるシーンがあり、「これは拷問シーンが描きたくてやってる作品なんだろうな」とすら感じたものですが、本シリーズにもちょっと近い感覚がありますね(第3作以降はどうなっているのかわかりませんが)
半死半生の状態で九龍城砦から救出されると、今度は四川省の成都で軟禁されます
文化大革命終了直後の中国をめぐる様々な国内外の思惑が交錯する複雑なストーリーは、少々やりすぎでアンフェア気味なところもありますが読み応え満点で、シリーズ第3作も読んでみたいと思わされました
それにしても、文化大革命に限られたことではないのでしょうが、政治的な集団ヒステリーの下で個人の自由が奪われた社会は本当に悲惨ですね
さらに付け加えて言えば、自分自身が行ったことのあるサンフランシスコ(2016-08-20)と香港については情景が目に浮かぶようで、そういうところも楽しかったです
もっとも、香港に行ったのは返還後の1999年で、空港も市街地から離れたところに移転していましたし、九龍城砦はとっくになくなっていました
それでも、まだ発売されていないはずの「Windows2000」や高価なAdobeのソフトの詰め合わせが表通りのお店で数百円で売られたりしていたのが印象的でしたね
仏陀の鏡への道 (創元推理文庫) Amazon |