私こと、InBanは足である総武線で活動しています。



今日も、仕事場からHOMEまで総武線で帰りました。




眠かったので、座り、うと②してましたが、目の前に人の気配を感じ起きてしまいました。



私、一度気になってしまうと解決したいタチなんです。



でも、相手は女の人でしたから目を逸らしました。



必殺技の見てみぬフリです。




しかし、正義感の強い私はそんな技は使えず、HOMEの駅でこっそり教えてあげましたよ。




「チャック開いてますよ」って。











『世界の終わりを、キミと…』



13.


エリの家は学校から電車でなんと二駅だった。


『こんなに近いところに住んでるんだな』



エリは先に帰って部屋の掃除をすると言ったので、サチは一人でエリの家に向かった。



エリの説明だと駅の目の前らしい。


『目の前ってどこ?あいついい加減な説明だな』


「(目の前って言ってたからあそこかしら?)」



駅の周辺を見回していたサチが指した方向には、これまた大きなタワーマンションがあった。



え?!あそこ?



俺たちはすぐにそのマンションに入ることに抵抗を感じ、しばらく近くをウロウロしていた。


「サチ」


エリが迎えに来た。



エリは本当にそのタワーマンションのオートロックの向こうからやって来た。



「アタシ、サチと番号とか交換してないよね。今気付いた。連絡しようと思ってさ」


エリがサチに言うと、サチも今気付いたような表情をした。



二人はすぐに赤外線を使って番号を交換した。



「これで、すぐにサチと連絡取れるね」



その後、二人はエレベーターに乗り、エリの家に向かった。



エリの家は広くて、でも、殺風景だった。


ソファーやテレビ、サイドボードと生活するうえで必要なものは揃っているのだが、何か、物足りない感じがした。




「エリ、家族は?」


サチはエリに促されてソファーに座って言った。



「親はあんまり帰ってこない。ってゆーか、仕事?」


エリは静かにお茶をテーブルの上に置いて答えた。


俺は外見でエリは結構大雑把で適当な性格なのかと思っていたが、部屋はきれいに片付いているところを見ると、意外に几帳面なのかもしれないと思った。



「仕事してるんだね。何の仕事?」


「よく分かんないんだけど、ITみたいなこと言ってた」


エリはあまり親と口を聞いていないとも付け足した。



「エリは両親と仲良くないの?」


サチがその質問をすると、エリは俯いて、お茶を一口飲んだ。


そして、少し間を置いてから話した。



「アタシの家、片親なんだ。離婚してママと暮らしてる。父親は仕事ばっかの男でママは疲れちゃったんだって。離婚してせいせいしてるって言ってるけど、今はこうして休み無く働いてんの」



エリは今後は戸棚からお菓子を取り出して、広げて、サチにあげた。



「最初はそれで幸せなのか?って思ってたから、かなりキツく接してたんだけど、今は仲いいよ。当時は同じ家にいるのに他人みたいな感じだったけどね。だって、アタシに相談もなしに勝手に離婚したんだよ」



エリは両手を広げて見せた。



「ああ!ごめんごめん。今日はサチの相談を聞くつもりだったのに、アタシの話ししちゃって…」


エリは思いがけなく、サチに自分の家庭事情を話したことに照れた。



「エリこの家高そうね」


サチが言うと、エリはポッキーをほお張って答えた。


「この家は父親が残したものなの。慰謝料ってやつなのかな?」



リビングはきっと二十帖くらいあるし、部屋の数だって今は母親とエリしか住んでいないというのに、四つもある。


ひとつは衣裳部屋のようになっていて、あとのひとつは本当に物置と化していた。



エリの家は十二階で、外の景色はとても良かった。


今日は天気がいいので、夕日が良く見えた。



「それよりも、サチの話しよう」


エリがサチを急かす。



サチはテーブルの上のお茶を見たまま止まってしまった。


「言ってよ。アタシだって言ったんだよ。本当は親のこと言うの恥ずかしいんだから」



サチはエリにそう言われ、覚悟を決めたように話し始めた。


「私さ、エリに将来の夢の話したでしょ」



「うん。美容師になるってやつだよね」


「そう。でも、両親に反対されたの。大学に行って真面目に勉強しなさいって言うの。何度説明しても私の話に耳を貸そうともしないの」



サチは悲しそうに話す。


今にも泣いてしまいそうだった。



「でも、確かにサチの両親だったらサチが美容師になりたいって言ったら反対するかもね。ほらっ、アタシとかだったら別だけど、サチは今までにがんばって勉強して、クラスでもトップとかだったじゃん。親としては期待するでしょ。エリートコースまっしぐらだもん」



俺の予想に反してエリはまともな意見を言った。



確かに的を射ている。



エリのことだから、サチに家出を勧めると内心ビクビクしていたのだ。



確かに、サチは両親の期待にこたえるために今まで頑張ってきたのだ。



しかし、それが逆に両親の期待を呷るものになってしまった。




「私もそう思ったわ。だから両親に話したわ。でも、私の話を聞いてさえくれないの。もう何を話しても無駄な気がしてきたわ」


サチはやはり家出のことを考えていたらしい。


サチは少し、投げやりな言い方をした。


すると、それを聞いていたエリが口を開いた。



「だけど、サチ。アタシ今になって分かったんだ。あんな親だったけど、やっぱり親は二人いないとダメなんだよ。二人でひとつなんだよ。サチは両親著一緒にいたほうがいい。悲しい思いする」


エリも俺と同じことを言った。


エリも父親がいなくて悲しかったのだ。



二人でひとつと言う言葉には納得させられた。


エリと友達になれてサチは良かった。


「アタシは正直、父親がいなくいなって悲しかったの。そのときはアタシはこの気持ちをママのせいにしてたけど、これはサチが決めることじゃん。アタシと同じ気持ちになったとき苦しいと思う。その思いを誰にもぶつけられないんだから。話して解決できるんならアタシはそっちのがいいと思う」



サチは黙っているが、俺の言葉も思い出しているのは、エリの話を聞きながら俺の事を見ていたからだ。


葛藤しているのだろう。


俺は心の中で、サチの考えが変わってくれることを祈った。



「離婚とかってそれこそドラマの中の世界でしか見たこと無いけど、実際友達がそのことで悲しんでいるのを見ると、辛いものね。エリ、私に話してくれてありがとう」


サチはエリの手を握った。


エリもサチの手を握り返した。


「アタシはサチだからこういう話をしたの。参考になればいいなって」


「もちろん参考になったわ。私はこの話をしてくれたエリの気持ちに応えたいわ」



『サチ!』


俺は感動のあまり声を出してしまった。


俺の声に気付いたサチは苦笑した。



サチはもう一度親と話す気になってくれた。




エリの助言で幸は勇気をもらった。



サチはエリと別れた帰り道、「親友がいるっていいわね」と言った。


サチは俺を第一に頼ってくれ、何でも話しくれるが、俺はいつまでもこうしてサチと一緒にいられるわけではない。


だから、こうしてサチが悩んでいるとき、エリのように親身になって話を聞いてくれる友達が必要なのだ。









はい。



今日はここまでとします。



サチはもう一度、両親と話す気になってくれたようですね。



良かった。よかった。



それではまた次回。



バイバInBan。









あの時、私はあなたの少年のような笑顔にK.Oされました。



しかし、今日、私はアナタに会えませんでした。



残念ながら、また次回アナタに会いに行きます。




はい。



InBanが今日憧れの君に会えなかった報告でした。











『世界の終わりを、キミと…』



13.


『サチ。おはよう』


次の日の朝、俺はサチにこれからどうするのか聞いた。



「哲朗…私、これからどうすればいいのか分からなくなったわ。哲朗は血が繋がっているなら、話を聞いてくれると言ったけど、それでも、お母さんは分かってくれなかった」


サチは気弱にこぼした。


俺は甘く見ていたのかもしれない。


親なら子供の幸せを考え、その子が進みたい道を一緒になって応援してくれるものなのだと思っていたのに。



『サチ…』


サチの希望は消えかかっていた。



サチは朝ご飯を食べずに学校へ出かけた。



「サチ。おはよう」


エリが朝から迷惑なくらいのハイテンションでサチに挨拶した。


それまでエリが朝から学校に来ることはなかったが、サチと仲良くなってからはきちんと登校するようになった。


人は変わるな~。


「おはよう。エリ」


二人は学校へ行く途中にある坂道でよく会う。


「んぅ?なんか浮かない顔してるね。サチ君」


エリがサチの顔をじっと見ながら言った。


エリには分かってしまうのだろう。


サチの少しの変化だって。


「サチー。アタシ言ったじゃん。なんでも相談してって。アタシサチの力になりたいんだよ」


エリは子供が駄々をこねるような格好をした。



サチはエリを見て迷っていた。


言おうかどうしようか。


「あ…あの」


少し、考えてから決心したらしくサチはエリに話した。


「か…家族のことなんだけど」


「家族ぅ?」


エリは聞き返した。



「珍しいね。サチって絶対家族とトラブルとかなさそうなのに。うんうん。アタシ相談に乗るよ。アタシも結構親とバトルってるし、力になれるかも」



そう言ったエリが少し不安だったが、俺はサチに頷いて見せた。


「ありがとう」



サチとエリは放課後話す約束をした。



エリは初めてサチの力になれることが嬉しいように見えた。



結構かわいいところもある。




学校にいるとき(もっぱら授業中)は、サチと俺はノートを使って会話をするようになった。


サチは授業中はきちんと先生の話を聞き、ノートを取ったり、問題を解いたりしているが、俺のほうが飽きてしまいサチに話しかけてしまうのだ。


優しいサチは、嫌な顔せずに俺の相手をしてくれる。


最初はサチが小声で俺に話しかけるスタイルだったのだが、それでは、サチが授業に集中できない上に、この会話を誰かが聞いていたら、またサチが孤立しかねないと思った俺の提案だった。



そういう時、サチは一冊のノートを取り出す。


このノートがサチと俺の会話ノート。



サチは器用に俺との会話と授業を両立させている。


“哲朗。何見ているの?”


サチが机をトントンと叩いて俺にノートを見せた。



『今な、校庭でサッカーやってるんだけど、それ見てた。なんか懐かしくて』


俺はそう言って、校庭を指した。



校庭では生徒たちが体育の授業でサッカーをしている姿があった。



“哲朗ってサッカーしてたの?”



『なんとなくそんな気がしたんだ。男の子はみんな一度はサッカーしたことあるだろ』


サチは少し身を乗り出して校庭を見た。


ボソッと「楽しそう」とサチが言ったものだから俺は思わず、吹き出してしまった。



“哲朗。何で笑うの?”


サチが怒ったような顔をした。


『あはは。ごめんごめん。サチも同じだと思ってさ』


“なにが?”


『俺から見ればサチも楽しそうだよ』


サチだけじゃない。



みんな楽しそうだ。


俺は教室を見回しながら、懐かしい気分に浸っていた。



一度経験した学生時代。


でも、もう思い出せなかった。



それに、俺はもう、この景色の中には存在しない。



俺だけがこの時間に取り残されてしまった。


俺はあの日、自殺した日に止まっている。


あの日以来、俺は年を取らないし、友達のこれからの新しい記憶の中にも存在しない。



これから俺という存在はどうなってしまうのか考えると不安で、切なかった。



トントン。


サチが机を叩いて俺を呼ぶ。


“どうしたの?”



そうだ。


それでも、サチの中では俺は生きている。


俺の居場所はここにちゃんとあるのだ。」


サチが俺を受け入れてくれたときから。


いや、その前から、俺がサチと出会ったときからきっと、俺たちの時間は動いていたんだ。



『ううん。なんでもない』


サチにあまり心配かけさせたくないので、ごまかすことにした。



「サチ」


小声でエリがサチを呼んだ。


そして、「これ」と言って、手紙を渡した。


内容は今日の放課後のことについてだった。



エリはサチを家に招待したいと書いていた。



「(私、初めて友達の家に行くわ)」



サチは嬉しさを隠せない様子だった。







はい。


今日はここまでとします。



次回はサチがエリの家にお宅訪問の巻をお送りします。



それでは、良い、明日を。



バイバInBan。




InBanです。



自分が欲しかったバッグをあまりイケてない人が持ってるとオチるよね!(´Д`;)



はい。


それではみなさま待望の続きをご覧下さい。









『世界の終わりを、キミと…』


13.



翌日、サチはバイトを休んで早く家に帰った。


ちゃんと両親に話をするためだ。


自分で調べた専門学校の資料を持って。



「(……)」


サチの緊張が俺にも伝わってくる。


大丈夫だろうか。


『サチ。大丈夫か?』


俺は思わずサチに話しかけたが、サチは何も返さなかった。



母親とはあれきり何も話をしていない。



どうやって話をすればいいのか分からないのだろう。



玄関の扉を開けるサチの手は震えていた。


一回大きく息を吸い込むとサチは家の中に入って行った。



「ただいま」


小さな声でサチは言った。


だが、返事はなかった。



サチは俯いてしまったが、資料を持っていた手に力を入れ、もう一度「ただいま」と言った。



「おかえりなさい」


やっと母親が出てきた。


「お母さん、あのね」


と、サチが言いかけた時だった。


「サチ。落ち着いて考えてくれた?美容師になりたいって夢はやめなさいね」


サチの話に聞く耳を持たない様子だ。


「でも、私が美容師になりたいっていう夢は諦めないわ。お母さん、私本当に美容師になりたいの」


サチはそれでも、母親に自分の意思を伝えた。



母親はサチがそう言うと、もう、イヤというような表情をした。


「やめて!お母さん聞かないわ。一体どうしたっていうの。あんなに頑張って勉強してたのに」


母親がそう言ったとき、サチの中で何かが切れた。


サチは持っていた資料を乱暴に投げ叫んだ。


「お母さんに何が分かるのよ!私が頑張って勉強していたのは、そうしないとお母さんは私を見てくれなかったからじゃない。お母さんが良い点を取ってといえば、私はそれに答えてきたわ。でも、お母さんは私の願いを聞いてはくれない。今だってそうじゃない!なんで私の話を聞いてくれいのよ!自分の考えばっかり私に押し付けて」



サチは言いながら目が涙で溢れていた。


サチは母親を押しのけると部屋に入って行った。



部屋の中でサチはまた声を押し殺して泣いた。



「な…で」


『え?』


サチは何かを言ったが、俺は聞き取れなくて聞き返した。


「なんで聞いてくれないのよ…」


俺もさすがにここまで話を聞いてくれない母親に苛立ちを感じていた。



『サチ…』


「(ごめんなさい…哲朗。私、できなかった)」



サチが涙声で言った。


「(哲朗が私にせっかく話してくれたのに…)」



『いいんだよ。サチ』


サチがそれでも俺を気にかけてくれたことは嬉しかった。


「もう、話しても無駄な気がしてきたわ」


サチはベッドに腰掛けて溜息を付いた。


俺はそんなサチに何も返す事ができなかった。




サチがあの時、感情的になって荷造りをしたバッグはまだ部屋の隅に置いたままになっていた。


俺が説得したことで、サチの中で少し考えが変ってきたことはあったが、まだ、家を出て行くという選択肢が消えたわけではない。



『サチ。諦めてないのか?その…家出』


俺はその後、宿題をしているサチに話しかけた。


サチは俺の言葉に部屋の隅に置いてあるバッグを見て、握っていたペンに力を込めた。


思い出してしまったらしい。


俺はサチに気を使いながら、次に話す言葉を考えていた。


「哲朗」


サチの方から話しかけた。


「私、分からない。どんなことを言えば理解してくれるのか」


『サチ…』


サチは迷っていた。


サチ自身もどうにかして、家出と違う解決方法を見つけたいようだ。


何とかして力になってやりたい。



『サチ。辛いだろうけど、話すしかないと思うんだ。できるか?』


サチはきっと、もっと違う言葉が欲しかったのだと思う。



もっと、サチの心を動かす言葉が欲しかったのに、俺はありきたりな言葉しか言えなかった。


もし、そうだとしたらこんな言葉なんの力もない。



「そうね、夢のためよ。頑張るわ」



それでも、サチは素直に頷いてくれた。


俺は、俺を信じて、俺の言葉に従ってくれるサチが愛おしかった。


俺は歯がゆい思いをした。



俺がもっと頭が良くて、色んな言葉を知っていたらサチを慰められるのに。




この日の夜は、東京にしては珍しくたくさんの星が見えた。


俺はサチが寝付いたのを確認して外に出た。


風で木が揺れているのを見て、風を実際に感じている気になった。


そんな中、俺はサチにしてあげられるアドバイスを考えていた。



『心地よい風ね。明日は快晴なんじゃないの』


突然声がしたので、隣を見ると、天使がいた。


『アナタの顔の雲行きは怪しいみたいだけど』


『あんたそういうギャグとか言うのか』


『言わないわよ。元気づけてんでしょ。アナタが不安だとサチに伝染するから』


風に天使の黒い髪が揺れている。


こういう時、天使と俺(幽霊)は違う存在なんだと思う。



『まあ、ひとつだけ言えることは他人と違って、親は最終的には子が幸せになる方を選ぶという事かしらね。子を憎む親も、親を憎む子も実際はいないわ。ただ、人はみな表現方法が違うから上手く伝わるのに時間がかかるのよ』



星を見ながら天使が言った。



『なあ、俺にはふさわしい言葉が思い浮かばないんだ。カナの両親だって説得できなかったんだから。でも、俺はサチにそれみたいな思いをして欲しくない』


俺は星を見ている天使を見て言った。


田舎ほど星はきれいに輝いて見えないが、それでも、ビルの明かりに負けない星はきれいだった。



『アナタはサチに言ったわ。“家族なんだから”と。答えは出ているじゃない。アナタは違う言葉で親はこの幸せを望むものだとサチに言ったのよ』


天使は俺の肩をポンと叩いた。



『たくさんいる自殺者の中からアナタを選んで、アタシは良かったと思ってるの』


天使は髪をかき上げて言った。



天使の口からそんなことを聞くなんて初めてだ。


『人はね、哲朗。決して弱くはない。一人じゃ何もできないと言うけれど、一人でも孤独に打ち勝つ力は持っているし、考えて学習し、次に生かす力も持っている。アタシたちはずっと見てきた』


今後は俺が星を見て言った。


昔、星には昔死んで行った者たちがいると聞いたことがあったからだ。


『俺には分からないな。世の中じゃ、人は一人では生きられないとか言ってるし、俺もそう思ってたから』


人人との絆は掛け替えのないものだと思っている人は多い。


俺だってその一人だ。


『それでも、人には限界がある。答えを出すのは自分だけど、それまで導いてくれるのはときとして仲間よ。力を借りるか、自分の意思を貫き通すかを決めるのは自分次第。哲朗。アナタのようにね』



俺は自分の名前を言われ、ハッとした。


そうだ、俺もあの時、チャンスがあったんだ。


貴志の力を借りるという。


貴志だけじゃない。


貴志以外にも俺のことを気にかけてくれた人はたくさんいた。



でも、俺はそれらを選ばなかった。


選ばずに悲しませた。


俺はそれが悔しい。



貴志に悪いと本気で思った。


なんで、もっと早く…



『あんたはそうやって…やっぱり天使じゃない』


『後悔することが悪いことじゃないわ。アタシは一人で答えを出したアナタの辛さも分かるし、力になれなかったと悔やむ友人の辛さもわかる。お互い成長するわ。アナタはもう亡くなってしまったけれど、それは次に生かせるようになるの。アタシが言うんだから間違いない。アタシは天使よ』



『ハハ。あんたはおもしろいな。天使は皆そうなのか?確かに、サチは両親は今考えているのかもな。そうならいいな』


『サチだってそうよ。アナタを受け入れない選択肢もあったのに、サチはアナタから力をもらうことを選んだ』



『それはあんたが強制的にそうさせたんだけどな』



不思議だった。


この空の下、俺たちはこの世の者ではないけれど、まるで、この世界にまだいるように感じた。









はい。



今回はここまでです。



天使はサチを通して、死んだことになんの感情を持たない哲朗に、死の重さを伝えました。


人が色んな言葉を使うようになったのは、きっと、お互い相談したり、悩んだりし合ったからだと思います。



人が頭を使うのも、きっとそういう理由もあるのではないかと思います。


人のために、頭を使い、言葉を使い、伝えようと努力するなんて、美しいことです。



それでは、みなさまバイバInBan。







HeyHey!!!



世界中のBoys&Girlsヘ(゚∀゚*)ノマ・タ・セ・タ・ナ。



昨日はUPできなくてごめんよ。



今日はちゃんと書くからね。


それにしても、GWボケがまだ直らん(´□`。)みなさんはどうですか?



暑い日が続き、外回りがキツくなる季節がやってきます。











『世界の終わりを、キミと…』


13.


こんな状態の中、サチが両親に呼ばれた。


サチは溜息をつきながらリビングに向かうと、二人が座っていた。



「サチ。この大学へ行きなさい。進路が明白になれば、お前が美容師になりたいなんて変なこと言わなくなるだろう。美容師なんてお前には相応しくない。もっといい道があるだろう。サチ、お前は恵まれているんだぞ」



父親がサチを宥めるように言う。


俺は父親のセリフをどこか懐かしいような気持ちで聞いていた。



カナの両親もカナに同じことを言っていた。


“カナ。あなたは恵まれているのよ。もっと相応しい相手がいるはずなの。こんな男よりも”



サチはまた深い溜息をついた。



「もういいわ。私この家を出て行くから。分かってくれないならもういいよ」


そう言ってサチは席を立った。


このままじゃいけない!


サチが家を出て行ってしまえばすべて台無しになってしまう。


俺は慌ててサチに言うことにした。



『サチ!待て』


サチは応えない。


サチはこのままだと大切なものを失ってしまう。



『サチ、頼むから話を聞いて』


部屋に入ると、サチは早速簡単な荷造りを始めた。


旅行かばんに着替えと洗面用具、本などを詰めていく。



サチはその間も無言で、俺に背を向けたままだった。


俺は確かに、サチに比べれば大人だ。



しかし、男なので、あまり女の子に大きな声は出したくは無いが、仕方ないと思った。


『サチ!聞けよ。いつまでも甘ったれてんじゃねえ!!』


少々大きな声を出すと、サチはビクッとなってしまった。



『ああ。ごめん。大きな声出して…』



とっさに謝ってしまった。



『でも、聞いて欲しいんだ。俺は全部話すよ』


俺はサチに本気に俺の話を聞いてもらうには、まず自分が全てを話さなければならないと思い、俺がこうなった経緯をサチに話す事にした。


『サチはさ、なんで俺が死んだか気になってるだろ』


俺が話したことでサチに気づいて欲しかった。


『俺は、自殺した身なんだ。大切な人を失った現実から逃げたくて自殺した。きっと、自暴自棄になってたんだな。ちょうど、今のサチみたいになってたと思う。だから、サチにはそうなってほしくないんだ』



サチは荷造りの手を止めた。


俺の話を聞いてくれているようだった。



俺はそう信じて続けた。


サチはさ、まだ高校生だ。これからたくさんの未来がある。好きな人に会って、結婚とかしてさ。でも、今こんな状態で両親と離れてしまったら、結婚式のとき、サチは一人でバージンロードを歩かないといけなくなる。って、別にこんなことが言いたいんじゃない』



俺は言いながら少し、パニックになっていた。


サチに伝えたい言葉が出てこない。


『つまりな俺が言いたいのは、幸せっていうのはみんなが祝福してこと味わえるものだと思うんだ。出て行ったことでたとえば夢を叶えられてサチは幸せだったとする。でも、サチの両親は?サチを産んだ以上、両親にだってサチの幸せ見る権利があるんさ。サチもそれを望んでたんじゃないのか?だから一人暮らしすることにためらってたんだろ』



サチはその言葉には頷いてくれた。


サチは持っていたタオルに力をこめた。


『幸せのかたちなんてひとそれぞれだし、考えてることだってもちろん違う。サチとサチの両親の違ったみたいだけど、それで終わらせるのは悲しくないか?両親なんだから分かり合えるだろう。サチ俺なんかを受け入れてくれたように、両親だってサチがどれだけ真剣なのか理解してくれるよ』



俺は安心するようにサチに笑いかけた。



しかし、サチは俺から目を逸らして言った。



「でもダメよ。私の話なんか聞いてくれない」


それでも、俺にはサチが葛藤しているように見えた。



両親を信じたいのに、また、裏切られるのが怖いのだろう。



『サチ。俺にも夢があったんだ。好きな人がいて、カナって言うんだけど、結婚しようとしてた。でも、カナは大病院の娘で、みんながこの結婚には反対だった。それに、カナには両親が決めた婚約者がいたんだ。俺は何度も両親に頭を下げた。でも、話を聞いてさえくれなかった。だからな、俺たちは駆け落ちをしたんだ』



「駆け落ち?」


サチが驚いて俺を見る。


『でもな、その途中で両親に見つかってしまった。当然俺はカナの父親に殴られたよ。あまりの衝撃に道路に倒れて俺はそのまま意識がなくなった』


俺が話すことによってサチは分かってくれる。


そう信じて話を続ける。


俺は今、俺が覚えている限りの記憶を辿ってサチに伝える。



『気がつくと、ベッドの上だった。隣にはカナがいた。カナは全身傷だらけで、頭には包帯をまいていた。あの後、車が来て、カナは俺を庇って撥ねられてしまったんだ。奇跡的に一命は取り留めたけど、事故のショックで記憶いはほとんど無く、当時はなにも思い出せなかったんだ。それに、事故の後遺症で右半身に麻痺が残ってしまった。記憶のほうは、回復して元通りになったんだけど、俺とのことは全く思い出せなかった』



言うのは今でも辛かった。


そのことが頭から離れない。



償いの言葉すら出てこなかった。



『カナの両親からは「これを機にカナのことは忘れて欲しい」と手切れ金まで渡された。俺は必死に忘れようとしたけど、後悔ばかりが残る。あのとき、俺がもう少し話をしていればとか、駆け落ちを選ばなかったらとか』



俺はそこまで話して、自分が泣きそうになっているのに気がついた。



「哲朗、もういいわ」



今まで黙って俺の話を聞いていたサチが口を開いた。


「ごめんなさい。哲朗がそんな辛い目に会っていたなんて知らなくて、私、無神経なことばかり言ったわ」



サチが俺に向き直って頭を下げた。


「哲朗は私に同じようなことをして欲しくなくて、言っているのに私は強情ばっかはって…」


サチは唇を噛んで悔しがっていた。


「でも、私に話してくれてありうがとう」



サチのその言葉で俺の今まで言った言葉は価値を持った。



サチは分かってくれた。


恥ずかしかったけど、言ってよかったと思った。



『もう一回両親と話して欲しい。俺も協力するから』


「分かった。話してみる」


サチは今度は素直に言うことを聞いてくれた。



そうだ。



サチには未来がある。



幸せになって欲しい。












はい。



今日はここまでです。



サチは分かってくれたみたいで良かったです。



次回、サチのリベンジをお送りします。



乞うご期待。



それではバイバInBan。







早速ですが、




『世界の終わりを、キミと…』



13.


サチはゴハンのときも、家を出るときも両親と顔を合わせなければ、もちろん話しもしない。


ずっと冷戦状態だ。


俺はどうにかしてサチのもう一度両親と話をする機会を作りたいと思った。



自暴自棄になっては何の解決にもならない。


俺はサチを説得することにした。



『なあ、サチ。もう一回話してみねえ?』


「…」


今、サチは学校に向かっている。


俺はサチの視界に入るように前に立って話しかけた。


『このままじゃだめだって』


「……」


俺が何を言ってもサチは答えない。



『聞いてまちゅか?サチのためなんだぞ。やっぱ家族なんだからさ。せっかく勇気を出して言ったんだ。気持ちを伝わってるって』


サチは耳を貸さない様子だ。



どうすればいい。



サチの気持ちは良く分かる。



それはサチがどれだけ美容師になりたいか知っているからだ。



なりたいって気持ちを両親に伝えれば分かってくれると俺は思っていた。



『サチ』


俺がしつこくサチに話しかけると、サチはやっと俺の言葉に耳を傾けてくれたようで、口を開いた。



「あなたはいいわよ。もう死んでるんだから!そうやって人事のように言っていればいいんですもの。私はどうなるの?私は哲朗が言った通りにしたわ。でも、ダメだったじゃない。もう何をしてもあの両親は分かってくれないわ。夢を諦めるか、出て行くしかないの」


サチは冷たく言うと、歩きを早めた。


サチは自暴自棄になっていた。


何を言ってもそれはサチにとってふさわしい言葉ではないのだ。


「あなたはいいわよ。もう死んでるんだから!」という言葉はさすがに効いた。



確かに、幽霊の俺が言えたことではないかもしれない。


でも、だからこそ俺は言うべきだと思っている。



俺は経験者なんだから。


失敗のほうの。



俺があの時駆け落ちを選ばなかったら、カナを失うこともなかった。



だけど、今そう思うのは、結果カナに怪我を負わせ、その怪我の責任を取るかたちで俺が自殺したからだ。



そうならなかったらきっと、気付かなかっただろう。



だから、サチを止められるのは俺しかいないのだ。


方法は?


なにがある?





サチの学校での生活は順調だ。


友達も増えたし、明るく笑うようになった。


なのに、俺は悲しかった。



サチにあんなことを言われたからだ。



『(もう、俺は必要ないのかな?死んだやつはでしゃばっちゃいけないよな』


俺は独り言のようにこぼした。


サチが笑っているのに、俺は一緒に笑えない。



それが辛かった。



『何くらいこと言ってんの。頑張りなさいよ』


天使が側に来て言った。


『(あんたはいいよな。そうやって俺に指図するだけなんだから)』


俺は天使に嫌味を言った。


『何サチみたいなこと言ってんのよ。二十五歳にもなったいい大人が』



『(年は関係ないだろう…)』


『サチはね、初めて自分から勇気を出したのに、それが叶わなかったことに傷ついているの。あなたが癒してあげないで、誰があの子の気持ちをわかってあげるのよ』



天使が俺の気持ちを煽るように言った。


『アナタは根気が取り柄でしょう』


『(分かったよ。やってみる。俺が言うよ)』


俺は自分に言い聞かせるように言った。




次の日の登校時間も、俺はサチに言い続けた。


サチが聞いていてもいなくても話し続けた。


『サチ』


俺はサチと分かり合えたかと思っていたのに、それは俺だけが思っていたことだったのだろうか。



そう思うと、寂しかった。




そのうち、俺たちの会話(俺が一方的に話している話)は無くなっていった。



俺もだんだん疲れてしまっていた。



俺は一体何のためにサチの側にいるのだろう。



サチを助けたいのに、力になれない。









はい。



今日は短いですけど、ここまでです。



哲朗に襲い掛かった新たな壁。


哲朗はどう攻略し、サチを助けるのでしょう。



乞うご期待ください。


それでは良い週末を。




バイバInBan。