私こと、InBanは足である総武線で活動しています。
今日も、仕事場からHOMEまで総武線で帰りました。
眠かったので、座り、うと②してましたが、目の前に人の気配を感じ起きてしまいました。
私、一度気になってしまうと解決したいタチなんです。
でも、相手は女の人でしたから目を逸らしました。
必殺技の見てみぬフリです。
しかし、正義感の強い私はそんな技は使えず、HOMEの駅でこっそり教えてあげましたよ。
「チャック開いてますよ」って。
『世界の終わりを、キミと…』
13.
エリの家は学校から電車でなんと二駅だった。
『こんなに近いところに住んでるんだな』
エリは先に帰って部屋の掃除をすると言ったので、サチは一人でエリの家に向かった。
エリの説明だと駅の目の前らしい。
『目の前ってどこ?あいついい加減な説明だな』
「(目の前って言ってたからあそこかしら?)」
駅の周辺を見回していたサチが指した方向には、これまた大きなタワーマンションがあった。
え?!あそこ?
俺たちはすぐにそのマンションに入ることに抵抗を感じ、しばらく近くをウロウロしていた。
「サチ」
エリが迎えに来た。
エリは本当にそのタワーマンションのオートロックの向こうからやって来た。
「アタシ、サチと番号とか交換してないよね。今気付いた。連絡しようと思ってさ」
エリがサチに言うと、サチも今気付いたような表情をした。
二人はすぐに赤外線を使って番号を交換した。
「これで、すぐにサチと連絡取れるね」
その後、二人はエレベーターに乗り、エリの家に向かった。
エリの家は広くて、でも、殺風景だった。
ソファーやテレビ、サイドボードと生活するうえで必要なものは揃っているのだが、何か、物足りない感じがした。
「エリ、家族は?」
サチはエリに促されてソファーに座って言った。
「親はあんまり帰ってこない。ってゆーか、仕事?」
エリは静かにお茶をテーブルの上に置いて答えた。
俺は外見でエリは結構大雑把で適当な性格なのかと思っていたが、部屋はきれいに片付いているところを見ると、意外に几帳面なのかもしれないと思った。
「仕事してるんだね。何の仕事?」
「よく分かんないんだけど、ITみたいなこと言ってた」
エリはあまり親と口を聞いていないとも付け足した。
「エリは両親と仲良くないの?」
サチがその質問をすると、エリは俯いて、お茶を一口飲んだ。
そして、少し間を置いてから話した。
「アタシの家、片親なんだ。離婚してママと暮らしてる。父親は仕事ばっかの男でママは疲れちゃったんだって。離婚してせいせいしてるって言ってるけど、今はこうして休み無く働いてんの」
エリは今後は戸棚からお菓子を取り出して、広げて、サチにあげた。
「最初はそれで幸せなのか?って思ってたから、かなりキツく接してたんだけど、今は仲いいよ。当時は同じ家にいるのに他人みたいな感じだったけどね。だって、アタシに相談もなしに勝手に離婚したんだよ」
エリは両手を広げて見せた。
「ああ!ごめんごめん。今日はサチの相談を聞くつもりだったのに、アタシの話ししちゃって…」
エリは思いがけなく、サチに自分の家庭事情を話したことに照れた。
「エリこの家高そうね」
サチが言うと、エリはポッキーをほお張って答えた。
「この家は父親が残したものなの。慰謝料ってやつなのかな?」
リビングはきっと二十帖くらいあるし、部屋の数だって今は母親とエリしか住んでいないというのに、四つもある。
ひとつは衣裳部屋のようになっていて、あとのひとつは本当に物置と化していた。
エリの家は十二階で、外の景色はとても良かった。
今日は天気がいいので、夕日が良く見えた。
「それよりも、サチの話しよう」
エリがサチを急かす。
サチはテーブルの上のお茶を見たまま止まってしまった。
「言ってよ。アタシだって言ったんだよ。本当は親のこと言うの恥ずかしいんだから」
サチはエリにそう言われ、覚悟を決めたように話し始めた。
「私さ、エリに将来の夢の話したでしょ」
「うん。美容師になるってやつだよね」
「そう。でも、両親に反対されたの。大学に行って真面目に勉強しなさいって言うの。何度説明しても私の話に耳を貸そうともしないの」
サチは悲しそうに話す。
今にも泣いてしまいそうだった。
「でも、確かにサチの両親だったらサチが美容師になりたいって言ったら反対するかもね。ほらっ、アタシとかだったら別だけど、サチは今までにがんばって勉強して、クラスでもトップとかだったじゃん。親としては期待するでしょ。エリートコースまっしぐらだもん」
俺の予想に反してエリはまともな意見を言った。
確かに的を射ている。
エリのことだから、サチに家出を勧めると内心ビクビクしていたのだ。
確かに、サチは両親の期待にこたえるために今まで頑張ってきたのだ。
しかし、それが逆に両親の期待を呷るものになってしまった。
「私もそう思ったわ。だから両親に話したわ。でも、私の話を聞いてさえくれないの。もう何を話しても無駄な気がしてきたわ」
サチはやはり家出のことを考えていたらしい。
サチは少し、投げやりな言い方をした。
すると、それを聞いていたエリが口を開いた。
「だけど、サチ。アタシ今になって分かったんだ。あんな親だったけど、やっぱり親は二人いないとダメなんだよ。二人でひとつなんだよ。サチは両親著一緒にいたほうがいい。悲しい思いする」
エリも俺と同じことを言った。
エリも父親がいなくて悲しかったのだ。
二人でひとつと言う言葉には納得させられた。
エリと友達になれてサチは良かった。
「アタシは正直、父親がいなくいなって悲しかったの。そのときはアタシはこの気持ちをママのせいにしてたけど、これはサチが決めることじゃん。アタシと同じ気持ちになったとき苦しいと思う。その思いを誰にもぶつけられないんだから。話して解決できるんならアタシはそっちのがいいと思う」
サチは黙っているが、俺の言葉も思い出しているのは、エリの話を聞きながら俺の事を見ていたからだ。
葛藤しているのだろう。
俺は心の中で、サチの考えが変わってくれることを祈った。
「離婚とかってそれこそドラマの中の世界でしか見たこと無いけど、実際友達がそのことで悲しんでいるのを見ると、辛いものね。エリ、私に話してくれてありがとう」
サチはエリの手を握った。
エリもサチの手を握り返した。
「アタシはサチだからこういう話をしたの。参考になればいいなって」
「もちろん参考になったわ。私はこの話をしてくれたエリの気持ちに応えたいわ」
『サチ!』
俺は感動のあまり声を出してしまった。
俺の声に気付いたサチは苦笑した。
サチはもう一度親と話す気になってくれた。
エリの助言で幸は勇気をもらった。
サチはエリと別れた帰り道、「親友がいるっていいわね」と言った。
サチは俺を第一に頼ってくれ、何でも話しくれるが、俺はいつまでもこうしてサチと一緒にいられるわけではない。
だから、こうしてサチが悩んでいるとき、エリのように親身になって話を聞いてくれる友達が必要なのだ。
はい。
今日はここまでとします。
サチはもう一度、両親と話す気になってくれたようですね。
良かった。よかった。
それではまた次回。
バイバInBan。