ええ~


この3日間連続の雨はなんなんでしょうか…



私のパワーが思わぬところで発揮してしまったのでしょうか。




私の仕事は営業です。


主に外回りをしているんですが、雨の日の外回りほど地獄のような時間はありません。



足はくじくし、髪はうねるし。。。。。。。。。。



イイことといえば、彼氏ができたことくらいですよ。(頭の中で)








『世界の終わりを、キミと…』



12.


サチは今下校途中だ。


今日は珍しくバイトが無いので、まっすぐに家に帰ることにした。



なので、今日両親に話をすることにしたのだ。



『サチ。大丈夫か?緊張しないでリラックスだぞ』


俺はさっきからサチのこの言葉しか言っていない気がする。


きっと、実際俺のほうが緊張しているのだと思う。



確か、前にも同じ思いをしたな。


俺が生きていたころの話だ。



カナの両親にカナとの結婚を認めてもらうために何度もカナの両親の家に通ったのを覚えている。



「(大丈夫。哲朗がついているんだもの)」


サチは笑って言った。


緊張しているのはどうやら俺だけらしい。




「お帰りなさい。サチ、今日はバイト無いのね」


サチが玄関を開けると、サチの母親が出迎えた。


「ねえ、サチ。お母さんが前に言ってたあの塾、行ってみない?すごくいいみたいなのよ。少人数制で進学率も高いっていうのよ」


母親はサチを見るなり塾の話しをし出した。


その塾はサチがイジメられていて学校へ行けなかったときに見つけてきた塾だった。



『またかよ。そんな話ばっかだな。サチ、これはさっさと話たほうが良さそうだ』


俺はアイコンタクトでサチに話す合図を送ると、サチは理解したらしく、母親に話があると言って、二階へ上がった。



戦闘開始だ。


『サチ。ゆっくりな。順を追って話すんだ』


サチが私服に着替えて一階に向かうと、テーブルの上には何枚かの塾のパンフレットと大学の資料が置いてあった。



どうやら、進学についてサチが積極的に考えたのかと勘違いしているらしい。



また、嫌な予感がしたが、ここまできたらもう後には引けない。


サチもその覚悟だ。



「サチ。どこがいいかしら。お母さんはこことか良いと思うのよね。どうかしら?」


サチは俯いてしまった。


何も切り出すことができないでいた。


母親が一方的に話を進めているので、サチは口を挟む隙が無い。



「サチの意見は?」


母親はサチに話をふった。



チャンスだ。


『サチ。チャンスだ』


俺に促されてサチが重い口を開いた。



「あのね、お母さん。私大学へは行かないわ」


サチの言葉に母親は呆気にとられた顔をした。


「え?どうしたの?一体…」


「他にやりたいことがあるの。ずっと前から決めていたの」


サチは頑張って母親に話す。


両方の手が震えている。



「やりたいことって何よ?大学へ行くよりも大事なの?」


母親は間髪入れずに言うが、サチは、臆せずに言葉をつないでいく。


「私ね、お母さん。美容師になりたいの」


『サチ!エライ。よく言った』



俺はガッツポーズをした。



サチがこんなにも勇気が出せたなんて。


しかし、


「嫌だわ。美容師なんて。やめなさい」


なに?!


母親は怪訝そうな顔をして言ったが、まだサチは怯まない。


「私本気で美容師になりたいの。もう、どこへ行くのかも決めているわ」


「バカなこと言わないの!なんのためにお母さんたちが塾に行ってパンフレットをもらってきたと思ってるの。お母さんたちの努力を無駄にしないでちょうだい!!」


誰が頼んだんだよ。


俺はこの二人のやりとりをイライラしながら見ていた。



サチはどうだろう。



「でも、私の人生なんだから…」


と、それでもサチは言うが、母親はそんなサチの言葉に口を挟む。



「とにかく!あなたは私たちが決めた大学へ行くの。分かったわね。この話はもう終わりよ」


そう言うなり、母親は出て行ってしまった。


残されたサチはただ、俯いて悔しさを飲み込んでいた。


何も言えない。


目にはたくさんの涙が溜まっている。




部屋の戻ると、サチは溜め込んだ感情を一気に出した。



悔しかったに違いない。


悲しかっただろう。



ベッドの上に倒れ込むと、声を殺して泣いた。



俺は何をしてやればいい?


その光景を見ても、俺はサチの涙を拭ってやることも、肩を貸してやることもできない。


幽霊の俺にはサチに触れることすらできないのだ。



初めて不自由だと感じた。



サチは結局部屋から出ようとしなかった。


母親もサチを呼ぼうとはしなかった。



『サチ…』


「もういいっ!私一人暮らしするわ。こんな家出てくわ」


サチは少し投げやりにそう言った。






はい。



今日はここまで。


一体これからどうなるんでしょうか。


きっと、サチは家出して、お金が無くなってキャバとか風俗とかに沈んでいくんですかね…



それで、哲朗は地獄へ行くのでしょうかね…




とまあ、こんなことにはならないんで安心して期待してくださいよ。



目指せ!ハッピーエンドです。




それではバイバInBan。












いやいや…恋って一瞬ですね。



「寝ぼけてるんですか?InBanさん」



いいえ。私は正気ですよ。



「ああ。GWボケってやつですね。仕方ないですね」





はい。



恋多き女。InBanです。



みなさんは恋愛の瞬間て覚えてますか?



私ははっきりと覚えてます。






「InBanさん。お待ちしてました」


私は気に入ったお店には通います。


なので、必然と常連ですし、こんな個性的な顔忘れませんので、名前と顔も覚えられます。




私は、いつものようにマッサージ店に行きました。


そして、前回結構ツボをおしてくれた人を指名しました。



「今回もご指名いただきましてありがとうございました」


「いいえ。前回気持ち良かったんで」



毎度のことですが、InBanは基本時に人見知りです。



「今回はどこか気になるところがありますか?」


このとき、私は雨ということで徒歩で外回りしたので、足が痛くなっていた。


しかも、ひねった。



「足がかなり痛いんでよくもみほぐしてください」


「あれ?InBanさん。はれてますけど、足くじいちゃいました?」


見ると、足が腫れていた。



どうりで痛いはずだ。



「ああ。今日ひねったんで」


「あらら、これ、炎症起こしてますね。今日は帰ったらアイシングしてください」



と、彼は優しく笑った。




ドキン☆



赤い実はじけちゃいました恋の矢



たぶん私よりも年上だと思いますが、笑うとこれまた少年のような笑み。



照れたような、困ったような顔で笑うんです。



いいですね。



InBanの赤い実はじけました。












『世界の終わりを、キミと…』



11.


「居るかな?」


放課後、手紙の相手が指定した裏庭へやって来たサチとエリは木の陰からこっそりと様子を伺っていた。


「やっぱ帰らない?


サチは落ち着かない様子でエリに言う。



「ここまで来たんだし、見てこうよ。変なのだったらアタシが追い返してあげるから」


「え?!…」



「あっ!来た」


そうこう話をしているうちに相手の男がやって来た。


本当にやってくるとは思わなかった。



身の程を知らないその男の顔はまるで…



「あっははははは。ヤバいよ。あの顔。犯罪者じゃ~ん…」


確かにエリが言うのも分かる気がする。



その顔はまるでさっきひと犯罪犯してきたような、そんな顔だ。



そんなヤツがサチと一緒に仲良く手なんかつないで歩いていた日には、俺はあいつを呪い殺すだろう。



『なあ、サチ。あんなんでも会う気になるのかよ。ヤメとけ。何されるか分かんねーよ。なんかこういう手紙書きそうだよな。怖い』


「…」



さすがの優しいサチも、フォローができない様子を見ると、納得してくれたようだ。


だが、相手は手紙に書いたように本当に何時間も待っていそうなので、エリが代わりに断りに行くことになった。



エリは獲物を見つけた猟犬のように軽い足取りで獲物…じゃなかった、相手の男のところへ向かって行った。



エリがなんて言ったのか分からないが、相手の男は逃げるようにして、行ってしまった。


サチは少し、悪いことをしたような顔をしていたが、同時にホッとしたようなため息を吐いた。




エリと別れた帰り道、サチは久しぶりにあの古びた廃屋に向かった。


なんでも、俺に話したい事があるのだという。



廃屋に着くと、サチはたくさんある古びた本の中から、一冊を取り出して、俺に見せた。


それは古い本の中でも際立って古く見えた。



「この本はね、天使の呼び出し方が書いてあるの。私、哲朗に会う前にこの本を見つけて、見よう見まねで天使を呼んでみたの」



サチは愛おしそうに本を撫でながら言う。


『なんでまた天使なんて呼ぼうとしたんだ?』


俺はとぼけて見せた。


しつこいようだが、俺にしか今、天使は見えていないし、俺と天使が知り合いなのはサチには秘密だからだ。



「私、話し相手が欲しかったの。ほら。私、その時学校で一人ぼっちだったでしょ?寂しかったから。そうしたら本当に天使が現われたの。私、ビックリしたわ。でも、私以上に天使が驚いていたでしょうね。私なんかに呼ばれて」



ああ。確かに驚いてたって言ってたな。



『で、なんで、その天使は今いないんだ?』


俺はまたとぼけて見せた。



天使がなかなか話してくれないからサチから聞こと思ったからだ。



「そう。私はその天使とたくさんのことを話したわ。でもね、ある日天使はいなくなってしまったの」


サチは悲しそうに言った。



「きっと、そうね、天使は人と関わりを持ってはいけないんだわ。それでも、私と少しの間でも一緒に居てくれたことを感謝してる。思えば、天使が哲朗を私に会わせてくれたんだわ」



『なんでそう思うんだ?』


「だって、哲朗が現われた日と天使が消えてしまった日が同じくらいなんですもの」


『なんだって?』



「えっと、確か、クリスマスが終わったあたりね」


そうか。


サチは俺の気配に気付いてたんだな。



『確かに、そうかもしれないな。案外』


「哲朗も見たの?天使」


『う~…ん。あれは果たして天使だったのか』



「きっと天使よ。天使は亡くなった人を天国へ連れて行くもの」


『はは…』



俺は笑ってごまかすことにした。



サチには言えない。


本当は地獄に落とされそうになったなんて。




『アナタもアタシがいかに辛かったか分かったようね』


夜、サチが寝についたころやって来て天使が言った。


あの会話を聞いていたらしい。


やはり、サチが呼び出した天使はこの天使だったのだ。



『ああ。なんか悪かったな』


『何がだ?』


天使が首をひねって聞いた。



『俺、なんかあんたに色々と言ったじゃんか。今思うと、悪かったなって』


俺は天使に今まで心無いことを言っていたことを反省した。


『ああ。そんなこといちいち気にしてないわ。どうせ、アナタの戯言でしょ。天使は寛大なの』


『戯言って…』


天使にしてはこいつは毒舌過ぎる。



『そんなことより、アタシはアナタにサチを任せた以上、彼女には幸せになってもらいたいの。友達ができた時のような気持ちを与えてあげてね』


『はは。任せといてくれ』



『…本当に平気か?』



天使は不安げな表情になって聞いた。


思えば、天使の不安は当たっていたかもしれない。







はい。



InBanの愛の劇場をお送りしました。


間違えました。


『世界…』をお送りしました。



これから後半戦。


天使の不安とは一体?



これから波乱万丈の後半戦に入ります。



乞うご期待ください。



それでは、雨なので、足ひねらないように。



バイバInBan。 









こんばんは。



鬱InBanです。


鬱なんて軽々しく使ってごめんなさい。




ただ、今日で大好きなGWが終ってしまうんです。



イヤです。明日からまた仕事です。











『世界の終わりを、キミと…』



11.


サチはイイ子だ。


しかも可愛いときている。


そんなパーフェクトな子を放っておくヤツはいないだろう。



「(哲朗。見てこれ)」


朝、教室に入ったサチが机の中から何かを取り出して言った。


『なんだ?』


見ると、サチが持っていたのは手紙らしきものだった。


ははぁん。これは。



『サチ。これはラブレターだ。誰にもらったんだろうな』


「(宛名は書いてないわ。朝来たら机の中に入ってたの)」


サチは困って言った。


『ンもう!サチは可愛いから、少しは危機感を持たないと。こんなものは捨ててしまいなさい』


今のサチは美容院にも行き、カワイさに磨きがかかっている。


そう勧めたのは俺本人だが、サチが想像以上に可愛くなると、心配になってしまう。


「(どうして?)」


サチはそんあ手紙を大事そうに持ってキョトンとした顔で俺に言う。


きっと、いや…多分サチはラブレターというものをうまれて初めてもらったのだろう。


ってゆーか、今時ラブレターかよ…!


『だって、これはラブレターだぜ。しかも相手はどこの誰かも分からないんだぜ。アブネ~って…サチにもしものことがあったら心配だもの』



「(哲朗って心配性よね。でも、ラブレターって私初めてもらったわ。開けてみてもいいわよね)」


サチは初めてもらったラブレターに興味津々だ。


確かに俺も見てみたい気がする。


『そうだな。見るだけなら』


サチは大切にそうっと中身を見ていく。



“神田倖 様


僕は入学式の時から貴方のことが好きでした。


貴方のことを考えると胸が苦しいです。


どうか、この手紙を読んで僕と会ってくれる気になりましたら、放課後裏庭まで来てください。


僕は何時間でも待っています。”



と、書いてあった。



『あははははは…っあー!腹が痛い!』


「(ちょっと、哲朗、笑い過ぎよ)」


『だ…だってよ、サチ。誰だよ。高校生になってこんな手紙書いてるヤツ…』



俺は涙目になった。



「サチィ~なにしてんの?」


エリがサチを見つけて走ってきた。


「サチ。可愛い、サチ髪形変えたんだ。いいね~これでモテ子だね」


エリはサチの変身ぶりを素直に喜んだ。



「エリ」


「なにそれ、ラブレター?」


「声が大きいよ」


サチもエリのことをもう“ちゃん”付けで呼ぶことは無くなった。


もう、立派な友達だ。


『サチ。この手紙見せてやれよ』


「(え?!)」


サチは少し戸惑ったが、エリに手紙を見せた。



「あははははは。あぁお腹いたーい。何この手紙ありえないよ」


「エリまで?」


「だって、今時高校生にもなってこんな内容…ップ。ねえねえ、放課後行ってみない?こいつどんな顔してるのか見てみたい」



エリは好奇心旺盛に言った。


「ええ。私行かないよ」



もちろんサチは断固拒否している。


『いいじゃん。俺も見てみたい、こんなこと書くヤツの顔』


「(哲朗まで?)」


『大丈夫だよ。なにかあってもエリちゃんいるんだし』


俺がなだめるように言うと、やっとサチは納得してくれたようだ。









はい。


次回はとうとうサチに告白をしてきた不届きなヤツとご対面です。



言っておきますけど、そんなにこれは引っ張らないのでご了承下さい。



それでは明日出勤のサラリーマンやOL。学生の皆さん。


お仕事頑張って。



バイバInBan。














こんばんは。


InBanですぅ~。GWも残すところあと一日となりました。



どうしよう。



何しよう。



みなさんはどこへ行きましたか?



言っときますけど私は、一人寂しく朝までお酒を飲んでいませんよ。



ましては、ウーロン茶じゃないからね。



それでは、マジメに本編をどうぞ。



今回は少し長めに書きました。



感動する友情のお話です。







『世界の終わりを、キミと…』



10.


天使が指定したところは霊園だった。


その瞬間俺の心臓がまたドクンと鳴った気がした。



死んでいるので気のせいだとは思うが。



『先に進むのよ。そして、少し行ったら今度はそこの角を右に曲がりなさい。その二つめのお墓よ』


天使が言うように俺がサチに伝え、サチは俺の声に従って歩く。



そして、天使の指定した場所にたどり着いた。そこは、



『ここ、俺の墓だ』


初めて見たのに確信した。


そこは俺のお墓だった。


名前を確認して真実だと思った。



『……』


俺は言葉が出なかった。



その時初めて俺は現実に向き合った。



もう、俺はこの世には居ないのだという現実。


今まで、普通にサチと過ぎしていたから忘れていたが、みんなの目に俺は映らない。


俺は存在しないのだ。


そう思うと、とてつもなく怖くなった。



目の前にある現実から目を逸らしたくなった。



『しっかりと見るのよ。これがアナタが犯した罪よ』



天使が残酷なことを言う。


俺にこの現実を受け止めろと言うのだ。



そんなこと出来るわけがない。


俺そんなに強い人間じゃない。




確かに、俺は自殺をする日、少しだけ躊躇いはあった。


でも、それはしにことに対しての躊躇いではない。


カナにもう一度会いたいと、一瞬思っただけだ。



でも、死んでカナに償えると思っていた。



死を軽く見ていたのかもしれない。



『人間は時に死をもって残された者たちに償う事もあるが、それで残された者たちの心が安らぐことはないのだ。傷は残るのだから。それは残された者の心や、死んでいった者の心に残るの』



俺は天使の言っている意味を理解できない。


『哲朗…、一生かけて治る傷もあれば、残る傷もあるのよ。その傷をこれ以上開かないために、傷つけないために人は生きて学習するんじゃないの。そうすればいつしか傷は癒えていくのよ』


天使はその聡明な目で俺を見ているのが分かる。



俺は天使の目を見ることはできない。



『(そんなこと、あんたらにしか分からないよ。人間の気持ちが天使に分かるか!世の中あんたみたいに強いやつらばかりじゃないんだ。強いフリしたってな、いざ、その場に立てば、逃げ出したくなるもんなんだよ)』




俺はそう言って、自分の墓に背を向けた。



天使の溜息が聞こえる。


一体この天使は何が言いたいのだろう。



俺はさっきからサチが何も言っていないことに気が付いた。


『サチ』



サチを見ると、サチはずっと俺の墓の前で手を合わせ、目を瞑っていた。



「哲朗」


『ん?』


「哲朗は死んでしまったことを後悔したことはないの?」



合わせていた手を解いて、サチが言う。



「だって、哲朗はこんなに素晴らしい人なのに、悲しんでいる人だってたくさんいるはずだわ」


俺はその場にふさわしい言葉を見つけることが出来ず、本音で答えるしかなかった。



『サチ…俺はあの時、死ぬことに躊躇いはなかったんだ。でも、今は違う。こうしてサチに出会えて、サチに必要とされて、俺は死んでしまったことを初めて後悔したんだ。嘘じゃない。本当にそう思ってる』


俺はサチに今の本当に気持ちを伝えた。



サチは俺を見上げた。


その顔を何か言いたげだったが、サチは口に出して言わない。



「君、だれ?」


サチの後ろで声がした。


サチと俺が驚いて後ろを振り返ると、そこには一人の男が立っていた。



貴志だった。


手に花を持っているところを見ると俺の墓参りに来てくれたらしい。



「あの…」



サチは何も答えられずにオドオドしていたが、貴志はサチを見るなり言った。



「あっ。亜佐美ちゃん?ほら、哲朗と学科が一緒だった」


貴志はサチを俺と同じ学科を選考していた亜佐美と間違えているらしく、安心した顔をした。



サチはというと、最初はポカンとしていたが、何を考えているのか「はい」と返事をした。


どうやら亜佐美になりきるつもりらしい。


確かに、サチのこの髪の長さや色、背格好も亜佐美に似ている。



「亜佐美ちゃんも墓参り?」


「ええ、まあ、でも突然思いついたからお花買っていなくて…」



サチはとっさの嘘をついた。


「俺が持ってるからいいよ」



貴志はそう言って、花を置いて、手を合わせた。


俺は黙ってその光景を見ている。


サチも見ていた。



と、貴志は立ち上がり長い溜息のような息を吐いた。


思いつめた時なんかに良くする仕草だった。



「ねえ、亜佐美ちゃん」


「はい」


貴志は申し訳なさそうにサチに言う。



貴志と亜佐美は三回くらい会ったことがあるので、話をする仲だ。


「この後、少し時間ある?」


「え?」


「その…少し付き合ってくれないかな?やっぱ辛いね。こうして実際あいつの墓の前に立つとさ。ついさっきまで一緒に話してた気がするのにな」



また溜息のような息を吐いた。



サチは素直に貴志の誘いを了解してくれ、二人は近くのカフェに入った。



貴志は、最初は本当に他愛もない会話をサチにしている。


嬉しそうに俺の過去の話をする。



残念ながらそれらを俺は思い出すことは出来ない。



記憶がどんどん劣化していっている。



「哲朗さんは小さい時からいい人だったんですね」


「まあね。あいつはお人好しだよ。亜佐美ちゃんも助けてもらったの?」



貴志はきっと冗談半分にサチに振ったのだろうが、サチは困ってしまっていた。


もちろんサチは亜佐美ではないので、知っているわけがない。



「私も、哲朗さんにたくさん勇気をもらいました。心強い言葉もたくさんもらいましたし、救われたこともたくさんあります。私が強くなれたのは哲朗さんのおかげです」


サチは自分の気持ちを貴志に伝えた。



楽しいことも、辛いことも、ケンカだってしただろうし、分かり合えた友人だったのは、貴志だ。


貴志はそれらを全て記憶に焼き付けているのに、俺の記憶には少ししか残っていない。



俺は死んでしまったら、残された者の記憶に残らなくなってしまうのだと思っていたが、本当は死んでしまった者の記憶から残された者の思い出が消えてしまうのかもしれない。



今の俺のように。



少しずつ、俺から貴志が消えていく。



外は相変わらず快晴で、この快晴にここぞとばかりに外出する人で、街は賑やかだ。



俺は外の景色と、二人を交互に見ながら、今すぐにでも消えてしまいたい気持ちと戦っていた。



二人は運ばれてきた飲み物に手を付けた。


貴志はアイスコーヒーを、サチはアイスミルクティーを頼んだ。


氷がストローにぶつかる音は涼しげだ。



貴志はまた溜息を付いた。


「あいつ。だめなんだよ」


貴志がかき回していたストローの手を止めて言った。


サチは貴志の方を見る。


貴志はまた手を動かした。



「あいつはさ、いつも一人で抱え込むんだ。俺らに分けてもくれない。カナの時だって、あいつずっと自分が悪かったって責めるんだ。あの日だって、俺すごく心配だったんだよ。哲朗のことだからもしかしたら…って思った。したらあいつ、案の定自殺したろ。もっと、いいことはこれからたくさんあるのにさ。恋愛だって、あいつはまだ二十五歳なんだぜ」



貴志は両手で顔を覆った。


泣いてたかもしれない。



貴志はずっと思い続けていたに違いない。


「俺にはさ、辛いなら辛いって言って良かったのに」



「貴志さん…」



貴志は消えてしまいそうな声で話す。


「これが哲朗なりのケジメなのかもな。それはそう思う。そのやり方が間違っているなんて偉そうなこと俺は言えない。だからさ…」



貴志は少し間を空けて続ける。


「だから、覚えててやるんだ。俺の友達に自殺したバカがいたって事。そうすれば少しは哲朗がいた事を残せるだろう。だから、来年も再来年も俺はあいつの墓に花を供えに行くし、一生のうち何回かは哲朗のことを思い出して笑ってやろうと思う」



俺は貴志を直視できない。


貴志は本当にいい親友だ。


なんで、俺は生きている時に気付かなかったのだろう。



あの時、俺は死んだら全て終わるのだと思っていた。


でも、本当に無くなってしまうのは、死んでしまった者自身ではなく、大切な人との思い出なのだろう。



俺はこんなにも俺とのことを忘れないでいてくれている、貴志を覚えていてやれない。



こんなにも俺に対して、涙を流している貴志を俺は思い出してやれない。


どんな話しをしたのか。



俺は目を逸らした。


見ないようにした。



何度も貴志に謝った。



『(あんたは悪魔だな)』


俺はまだ、あの天使がいると思い、心の中で言った。



サチはずっと貴志の話を聞いている。



『哲朗。分かった?アタシが言いたいこと』


天使が言った。



さっきまでは意味が分からなかったが、今なら分かる。



この天使は死を軽く見るなと言いたいのだ。



自殺した日、こんなにも俺の事を案じてくれていた人や、大切な人のいるこの世を少しも惜しまずに身を投げてしまった事を、俺はすごく恥じた。



俺は周りをなにひとつ見てはいなかったんだ。



『ごめん。ごめん、貴志』


『哲朗、人は死んだら確かに残された人の記憶からは、だんだんと薄れていってしまうものなのかもしれない。だが、決して忘れられてしまっているのではないことは信じて欲しい。死んでしまった事への後悔は、死んでしまってからでしか分からないのだから。大切なのは、残された者の心にアナタがどう焼きついていたかなのよ。それは光。生まれ変わるためのね』



天使はそう言って、俺の頭をクシャッと撫でると、どこかへ行ってしまった。


俺という存在は貴志の中で、これから思い出として生きていくのだと思うと、不思議と救われた気になった。


サチと貴志はその後それぞれに別れ、俺たちは家に付いた。


「哲朗。貴志さん、いい人ですね」


サチが言う。







はい。



長々とお疲れ様でした。


これで10章は終わりです。


それではまた次回。



良い、GWを。



バイバInBan。

















GW真っ只中ですな~。


InBanです。



こんな時間に失礼しますよ。



なんでこんな時間に睡眠LOVEな私がUPしているかというと、この時間に帰ってきたんです。



しかも、雨降るって言ってたじゃん。


まさに今降ってるし。



雨女。InBanセーフ…




昨日はUPできずにご愛読者のみなさまを待たせてしまったので、今日書こうと思います。




InBanエライ!!!!






『世界の終わりを、キミと…』




10.



『しっかしサチの持ってる服は、なんかこう…垢抜けないっていうか、地味だよな』


クローゼットの整理をしていたサチを観察して、俺は言った。


『サチは可愛いんだからもっといい服着たほうがいいよ



幸いにも、今日は日曜日で、珍しくサチのバイトが無い日だった。



と、いうことで、俺はサチを外に連れ出すことにした。



もちろん服を買うためだ。



ちょうどサチも本が見たいと思っていたらしく、OKした。



せっかくだということで、俺は思い切ってこんな提案をして見た。



『サチ。美容院行かないか?』



「え?!」


当然サチは驚いたが、サチは俺の見る限り美容院というところには何年も行っていない気がする。


この伸び放題の髪の毛がいい証拠だ。



『そうだよ。友達もできたことだし、ここは思い切ってイメージチェンジしてみようぜ』


サチが大人しく見えるのは、性格ももちろんだが、この髪型も関係していると思う。



『サチがこんなに可愛いって事みんな知らないんだし、いい機会だよ。ついでに彼氏もできたりしてな』



サチは顔を赤くして照れた。


超可愛いぜ。



『そしたらそれに合う服も探さないとな』


俺だけノリノリだった。



『サチ。俺とデートだ』



外は絶好のデート…いや、買い物日和だ。



サチはデートと言ったことが嫌だったのか、黙ってしまったので、俺は口を慎むことにした。


俺はサチを原宿へ連れ出し、有名な美容院に案内した。



混んでいるか不安だったが、思いのほか空いていたので、サチは順番が来るまでスタッフが持ってきてくれたヘアカタログを読んでいた。



しかし、サチは読んだところで何が自分に合うのか分からない様子だ。



すぐに読みい終わってしまった。



言いだしっぺの俺ですら分からない始末だ。



サチが困っている様子に気付いたスタッフがやって来た。



サチはスタッフに何が自分に合う髪型か分からないと伝えると、スタッフは「任せてください」と、心強い言葉をサチに言った。



サチはシャンプー台に案内され、手早くスタッフの手でシャンプーがされ、席に通された。


俺はサチが変わっていく様子を眺めていた。



長いサチの髪は見る見るうちにカットされ、床に落ちていく。


すごい量だった。



長かった前髪は切られ、サチの顔が現われた。


腰くらいまであった髪は肩に乗るくらいまでになり、全体的にボリュームが減った気がした。



「カラーします?」


スタッフが聞くと、サチは俺に目で聞いてきたので、俺は頷いた。


「お願いします」


俺は明るい髪になったサチが見たかった。




三時間くらいで、サチは生まれ変わった。


髪の色は薄い茶色で光の加減でピンクが見えるらしい。(スタッフがそう言ってた)



女の子らしくなったので、想像以上だと驚いた。


『サチ。やばいな。みんなに見せるのみったいないな』



俺はサチがここまで変わるとは正直思っていなかったので、逆に独り占めしたい気持ちだった。


「(哲朗。私自分がこんなに変わるなんて思わなかった。やっぱり美容師ってすごいわ。私なりたい)」



サチは鏡で自分の顔を見ながら言った。


『いや…俺も実際驚いてるよ。この変身ぶりには』



美容院を後にした俺たちは、次に服を見ることにした。


言っておくが、俺はおしゃれではないし、女の子の買い物について行ったこともないので、どこに女の子の服屋があるのか分からない。



とりあえず、女の子の後を歩いていくことにした。



すると、女の子が続々と入って行くお店があった。



きっとそこに女の子物の服があるのだ。



入って見ると、そこは大きなショッピングモールになっていた。


ウィンドウにはマネキンが可愛い服を着ている。



俺はいいことを思い付いてしまった。



『サチ。気に入ったマネキンの服を全部もらおう』



サチも同じことを考えていたらしく、すでに探していた。


サチはバイトをたくさんしているので、お金は持っている。



躊躇せずに、俺が高いだろうと思っている服を店員に用意してもらっている。



露出の多い服はサチが嫌がるので、それ以外で俺も探し、合計三セットの服をサチは買った。



「(次は本屋に寄ってくれる?)」



サチは本当の目的である本屋に寄った。


『何の本を買うんだ?』



俺は興味津々にサチに聞くと、サチはヘアカタログの本を数冊買った。


サチの夢への準備が進んでいるのだろう。



帰る途中、サチが公園に寄りたいと言ったので、近くの公園で昼食をとることにした。


サチはその公園で売っていたホットドッグとジュースを買って、ベンチに座った。



『本当にいい天気だな』


のどかな時間だった。



公園では家族連れがテニスをしていたり、犬の散歩をしている人がいたりと、この公園を利用する人が多いことが分かる。



『サチって好き嫌いあるか?』


サチの食べているものを見ながら俺が言う。


「(無いと思うわ。何でも食べるかしら。哲朗はあるの?)」



今度はサチが質問した。


『俺…あ!トマトが嫌いだった。あの口に入れた瞬間に出る汁みたいなのが嫌だな』


「(哲朗って変なものが嫌いなのね)」



サチはそう言って笑った。



俺はこんなノのんびりとした時間を過ごしたのは久しぶりだった。


まるで、サチを本当に一緒にいるように感じた。


それは俺普通の生きている人と同じようにサチと居るという意味だ。



そういえばカナと付き合っているときもよく公園に行った。


カナも公園が好きだった。



でも、俺たちは昼の景色よりも、夜景のほうが好きだったので、行くとしたらもっぱら夜景の見えるところや丘の上だった。


幼い記憶や、最近のものも今となってはあまり思い出せないのになぜ、カナのことは思い出せるのだろう。



『哲朗。そこの場所の最寄の駅から出ている電車の三駅目のところで降りたら、アタシの指定した場所まで行きなさい』



突然天使の声がした。


『(は?なんでだ?)』



『言うことを聞きなさい』


天使はいつもに増して命令口調だ。


仕方ないので、俺はサチに言った。



サチはどこへ行くのか気にしていたが、俺は当然知らないので、「ついてからのお楽しみ」なんて、ごまかした。



一体天使はどこに向かうつもりなのか。







はい。


今日はここまでとします。



本当に天使はどこへいざなうつもりなのでしょうか。



気になる続きはまた次回。



バイバInBan。