転移するまでは咳が出るものの、痛みはあまりなかったらしい。



でも、横になったり動いたりすると咳が止まらなくなり苦しいので寝るときはいつも座椅子を斜めにして寝ていた。




元々、彼はあまり寝なかったが、さすがに座椅子で寝ると熟睡できなくて、いつも眠たいと言っていた。




だが、首に転移してからは痛みが酷いらしく、かなり辛そうだった。




治療も首に転移したガンの為の治療で肺のガンはもうどうしようもない。




今までは「もしかして治るかも」と希望があったので頑張れたが、「治れへんのにあの苦しい治療は嫌や」と弱気になっている。




今まで、私の前で泣き言など絶対に言わない彼が・・・




よっぽど苦しかったのだろう。




その頃はまだ余命宣告はされていなかった。




だが、いつ急変するかも解らないといわれていた。




いつまで生きられるかは解らないが、けいじは「少しでも子供と一緒に居たい。もっと旅行に連れて行ってあげたい。」という気持ちだけで治療を堪えていたのだと思う。




「今まで、遊びも仕事もやりたい事は普通の人以上に色々やってきた。だからその部分では後悔はないけど、子供の事だけが気に掛かる。もっと成長する姿を見たい。」その事だけで頑張れたのだと思う。




しかし、血痰が出るようになり、首の痛みもドンドン酷くなってくる。



痛み止めも効かなくなり、麻薬レベルの薬を使用しないと痛みが我慢できないくらいになっていた。




そして正月、私が飛騨の母達の元に帰っている時、けいじの奥さんから携帯に連絡が・・・




・・・続く
けいじは治療のため入退院を繰り返した。




4クールの治療が一旦終了し経過を見ることになった。




退院後、彼に会った時、凄く痩せていた身体もだいぶ戻っており、髪の毛もあまり抜けずにすんでいた。




その姿を見て私も肺ガンが治るのではないかと思った。




その後検査の結果、握り拳ぐらいあったガンは直径3cmほどにまで小さくなっていたらしい。




もう少し治療を続けてみようという事になり、再度入院。




次に退院したときは、少し疲れ気味だった。




頑張っている彼にこれ以上頑張ってと声も掛けれない。




彼のために何も出来ない自分が歯痒かった・・・




そこで、病気の事は皆に黙っていてと言っていたが、昔一緒に働いていたスタッフにだけ報告しても良いか確認し、みんなに連絡をして集合をかけた。




久しぶりに昔の仲間と集まって食事会を開いた。




けいじは嬉しそうに話し込み少し元気になったように思えた。




その日はみんな車だったのでお酒は飲めなかったが、また近いうちに飲みに行こうとけいじが言い出した




「飲んでも大丈夫?」と聞くと「しんどくなったらウーロン茶でも飲むしチョットくらい大丈夫やろ!」と言うので1ヵ月後に予定を組んだ。




その日はミナミで集合してご飯を食べ、皆でスナックに行った。




けいじにとっては久しぶりのミナミ。




以前ずっとミナミで店をしていたので懐かしかっただろう。




昔を思い出しみんなで語りそして飲みまくった。




途中けいじに「大丈夫?」と聞いたが「全然大丈夫や!」とかなり調子がよさそう。



結局、朝方まで飲みまくって解散した。




翌日けいじに連絡すると疲れが出てしんどそうだった・・・




それからは飲みに行くのは控えて、けいじの好きな海釣りに出かけたりするものの、やはり出かけた次の日はしんどそうでした。




それからは、翌日の事を考えると私からはあまり外に誘う事が出来ませんでした。




けいじが釣りに行きたい、飲みに行きたいと言った時だけ付き合う程度となりました。




その頃も、まだ治療の為、入退院を繰り返していましたが、ある時医者から「これ以上治療しても良くはならない」と言われた・・・




放射線治療が出来る限界まで治療したのでこれ以上放射線は使えないようだ。




後は、転移しないことを祈るだけ・・・




今までのけいじは私に弱いところを見せたくなかったのだろう、いつも前向きな発言をしてきたが、その時は違った。




すこし伏せた感じで話しあまり元気もなかった。




そんなけいじの姿を見るのは、とても辛かった。




そして、数ヶ月が経ち定期検査の結果が出た日、なんと首のリンパに転移が見つかった・・・




・・・続く
早朝のメールはいつも良い知らせがない。




前にも友人が亡くなったと連絡がきたばかりで、けいじと一緒にお通夜に行くと友人の母から自殺で亡くなったと聞かされたばかりだった・・・




けいじからのメールも嫌な予感がした・・・




見てみると「2ヶ月ほど前から身体の調子が悪くて、病院に行ったところ紹介状を書くので大きい病院で再検査してくれって言われた。もしかしたら俺、ヤバイかも」とのこと。




「とりあえず今日から仕事休んで検査入院やから、また検査入院から帰ってきたら連絡するわ。」と入っていた・・・




私は突然すぎて何って返事を返して良いか解らなかったが、とりあえず「今は、あまり悪い事を考えず、ちゃんと検査してもらって、また結果が解ったら連絡して!頑張ってな!」としか言えなかった。




数日後、けいじからのメールで検査の結果が送られてきた。




肺ガンで、もう手術も出来ない状態との事だった・・・




私はすぐに、けいじに連絡し「今から家に行くわ」と伝えた。




急いで家に向かいそして、出てきたけいじを見て驚いた。




おそらく最後に会った時よりも10kg以上痩せていた・・・




とりあえず家に入り詳しい経過を聞きました。




「半年前からよく咳が出るようになって、風邪と思っててん。なかなか咳が止まれへんかってんけど、咳ぐらいでいちいち病院行けへんやろ!そのうち咳がひどくなってきて会社のゴルフコンペを泊まりで行った時に咳が酷くて一睡も出来ず、身体もしんどくて病院に行ったんがお前に連絡したときや」




そしてこう続けた。




「若いから進行も早いし、肺の近くのリンパにもガンが巻いてるらしいわ。もう握り拳くらいの大きさまで進行してるらしいから放射線と抗がん剤で少しは小さくは出来ると思うけど、おそらくもう手術は出けへんらしいわ」




そして「とりあえず、治療してガンがどれだけ小さくなるかやな!経過次第では、もしかしたら手術できるくらいまで小さくなる可能性も少しはあるらしいから・・・」と治す気満々だったので少し安心した。




けいじの中では治ると信じていた。




そして1週間後入院の日がやってきた・・・




・・・続く