羊蹄山と湧き水 | シリベシアン(後志人・Shiribeshian)

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We will introduce sightseeing spots in Hokkaido, mainly Niseko and Shakotan.

蝦夷富士と呼ばれ、日本百名山の一つ羊蹄山(後方羊蹄山)の標高は1898m。円錐形の成層火山で最後の噴火は約2500年前といわれている。富士の名が付く山は各地にあるが、もっとも富士山の山容に近いのは羊蹄山だと思う。

 

山名の由来は「日本書紀」に斉明天皇5年(659年)、将軍阿倍比羅夫(あべのひらふ)が百八十艘の軍船を率いての北征の際、「後方羊蹄(しりべし)」に郡領を置いたとある。幕末の探検家松浦武四郎は、この山のある地こそ斉明朝の「後方羊蹄」に違いないと考えたのである。

 

明治2年8月、明治政府に北海道の画郡の命名を命ぜられた武四郎は、「後方羊蹄」を読みやすくした「後志国(しりべしのくに)」と名付けた。

 

深田久弥の日本百名山には「後方羊蹄山(しりべしやま)」と記されている。あまりにも難読のため、倶知安(くっちゃん)町が羊蹄山(ようていざん)に変更を要望し、昭和44年(1969年)に国土地理院から発行された地形図に記載されたことで羊蹄山になったようだ。

 

白い貴婦人といわれる羊蹄山は冬の白い衣装を纏った姿が美しい。

京極町更進地区からの羊蹄山は爽やかな好青年の顔を見せている。手前は清流日本一で北海道第6位の大河尻別川(しりべつがわ)が羊蹄山を回り込むように流れていて後志の日本海へと注ぐ。

 

豪雪地帯にある羊蹄山の湧水は名水としても知られている。山麓の周囲で1日2千t以上の湧水場所が17箇所以上もあり、合計水量は1日約30万tにもなる。昭和60年(1985年)に認定された日本名水百選に「羊蹄のふきだし湧水」が選定されている。

 

火山活動により地質が2重構造になっているため、南東側と北西側とでは水質も違う。また、溶岩流の末端部に湧水噴き出し口があるのもおもしろい。

 

南東側の北海道遺産にもなっている「京極ふきだし公園」は、一年を通して約6.5℃の変わらない水温で1日約8万tという国内最大級の水量だ。近くにはセイコーマートの超軟水ナチュラルミネラルウォーター工場がある。

「京極ふきだし公園」からの倶知安町「農家のそばや 羊蹄山」にかけては、山肌の堀も深くなり力強い男のイメージになって行く。

羊蹄山にスキー場は無いが、バックカントリースキーは人気で全世界から訪れているだが、雪崩による事故も多発している。

 

真狩村の駐車場から山に向かっているスキー跡が残っていた。

この近くの真狩村泉地区に湧水最大の場所がある。しかし、水汲み場は整備されていないので行くことはできない。

 

「京極町ふきだし公園」から羊蹄山を挟んでほぼ反対側の真狩村杜地区にあるのが「羊蹄山の湧き水」だ。京極に匹敵する水量を誇り、水汲み場が整備されて、平日でもポリタンクやペットボトルを持って訪れる人が絶えない。横には大人気の「真狩豆腐工房 湧水の里」がある。

真狩村「まっかり温泉」からの山容は柔らかくアイヌ語のフチ(祖母)のようだ。ちなみに、富士山の由来にアイヌ語で火の山を指す「ふんち」「ぷし」からの説もある。

ニセコ町東山「ミルク工房高橋牧場」からの羊蹄山は、山頂の3つある火口が女性の王冠に見えることから、白いドレスの王妃みたいだ。

京極町、倶知安町、真狩村、ニセコ町と羊蹄山麓を一周した。

 

場所は不明だが、阿部比羅夫が政所を置いた後方羊蹄。松浦武四郎が思い描いた後方羊蹄。インバウンドが押し寄せる羊蹄山麓は北海道観光の先進地となっている。

 

いにしえの後方羊蹄はここだったのか?