大宮BL小説です。
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和也 32
いつものように僕に突き抜けるような快楽を与えたその手は…
なんのためらいもなく、僕の肌から離れた。
手を洗い僕に服を着せるサト。
僕は恥ずかしさを堪えながらも…
聞かずにはいられなかった。
和「し…しないの?///」
すると…
サトは表情一つ変えずに、言った。
智「お前、婚約したんだろ?」
サトは殺し屋のくせに。
まるでモラルのある一般市民みたいな顔をして…
僕に、言った。
智「もう…ダメだろ?」
知られてしまった…
一番最初に思ったのは、そんな事だった。
…いや、知られたところでなんの問題もない。
あくまでも名目というか、絵に書いた政略結婚で…
そもそも?
夜伽係というのは、婚姻後の夫婦関係を円滑に保つための練習相手というか…
指導係のようなもの。
婚約ありきでやってくるものだ。
だから…
何も知られて困る事などない。
なのに…
知られたくなかったと感じる自分が、確かにそこにいて…
グッと息がしづらくなった。
もうダメって事は…
サトはもう、来ないってこと?
ふぅ、と一つ息を吐く。
もう一度。
そうしながら…
僕は…
呪文のように唱える。
…いや、ダメじゃない。
まだ、ダメじゃない。
だって僕は結婚などしないし…
ナナは僕のパートナーにはならないのだ。
僕はそう伝えるべく…
サトに一枚の紙切れを渡した。
和「知ってるなら話は早い。この街に住んでる"スダ"という男を守って欲しい」
和「…僕の婚約者、ナナの愛する人なんだ」
僕の話を聞いたサトは…
ふっと、口元を上げ…
こう呟いた。
智「…信じられねぇな」
その言葉に、カチンとくる。
僕は矢継ぎ早に詰め寄った。
和「…なんだよ、この僕の話が信用できないのか?」
「…それともナナが僕らを騙しているとでも?」
和「彼女の憔悴ぶりを見ればそんな事決して言えないはずだ」
「なんなら今すぐ彼女をここに呼んで…」
智「いや、そうじゃねぇ」
サトはじっと僕を見ている。
僕は…
その真っ直ぐな視線が気恥ずかしくて。
わざとぶっきらぼうに言った。
和「…じゃなに」
ゆっくりとサトが近づいてくる。
僕らの距離が狭くなる。
ふ…と…
僕の頭が、重くなった。
智「…おまえがさ」
「あの、おまえが…」
「…誰かの力になってやるなんてな…」
ゆっくりと…
髪を撫でる、サトの手。
温もりが、甘く…
僕の身体に溶けていく。
サトが僕に浸透していく。
僕は目を閉じた。
ああ…
僕はまだ、この人と…
この人と、いたい。
その手の温もりは…
はっきりと僕の心を映し出した。
でも…
そんな僕の心に一線引くように…
智「…話はわかった」
「このことは全て俺に預けろ」
「…いいな?」
スパッと放たれた言葉。
離れた手の温もりと同じように…
サトの声も、一瞬で遠くに離れたような気がした。
なぜなら…
その声はまさに…
殺し屋の声、だった。
*次回は本日18時
蓮さん家(智サイド)
です!