バレンタインの修羅場 | 樋口舞の万年少女日記

樋口舞の万年少女日記

~恋と音楽と着物と猫の日々~

10年以上前のことなのに
未だに鮮明に覚えてる。


バレンタインの思い出。


当時一緒に住んでいた恋人が
山の様にチョコをもらって帰ってきた。

甘党だった彼は、
あっという間に食べてしまい、
空箱がゴミ箱に溢れた。

しかし、何故かテレビの横に
ひとつだけ空箱が置いたままだった。

見たところ、特別可愛いデザインでも
「ステンレス製で何かに使えそう」
というわけでもなかった。


けれど、その箱は其処に在った。


1週間が過ぎ、2週間が過ぎても
捨てられる事はなかった。

私は、一日一日
「まだ捨てられていない。」
その箱を確認するたびに
胸がザワッとした。



「きっと特別な人にもらったのだろう」



そう気づいているのを彼は知っていたのか、
それとも気づかれてないと思っていたのか、
気づかれていたとしても側に置きたかったのか、
どうあれ不安は日毎増した。


それからほどなくして
ホワイトデーを過ぎたあたりから
彼の行動がおかしくなり始めた。

帰りがとても遅かったり、
意味のよくわからない泊まりが増えた。


それでも、私は笑っていた。
そうするしかなかった。


そして


ひょんな事から浮気はバレた。


わかっていた筈なのに
「本当だったのだ」と解ると
血が凍りついた様に身体が冷たくなり
息をするのが困難になった。


その時に、
「やっぱりどこかで信じたかったのだ」と
「信じていたのだ」と
再認識して余計に悲しかった。



その晩は

家を飛び出して

一人暮らしをしている

男友達(バンドマン)の家に泊まった。



きっとよくない事なのだと
頭ではわかっていたのだけれど、
その夜は男の人でなくては駄目だった。


その友達は私の電話の声を聞いて
最寄り駅まで迎えに来てくれて、
話を聞いて家に泊めてくれた。


六畳一間の小さな部屋には
布団が一つしかなかったので
その夜は同じ布団で一緒に眠った。



けれど、


何も起こらなかった。


とても

優しい

夜だった。


次の日、まだ悲しみのどん底にいた私は
その日の用事を全部キャンセルした。


で、その友達が昼間にライブをやるというので、
そのままついていってライブを観た。


何も食べれず
歩くことさえままならず
投げやりになっていたけれど、


ライブ中、彼が私の前に来て
私に向かって演奏してくれた。


その時、それまで出なかった涙が
ポロポロと落ちてきて
そこからはもう止まらなかった。

そこで初めて

泣くことができた。


本当に苦しい時や悲しい時は
涙が出ないってのは本当だった。


その時初めて悲しみと向き合えたのと、
友達への感謝の気持ちが溢れて
泣けたのだと思う。

本当にありがたかった。

彼とは今でも良い友達だ。



数日後

私の方から

恋人に別れを告げた。



すると彼は、
自分が浮気したのにも関わらず
「捨てないでくれー!!」
と言わんばかりに
私に縋り付いて来て、
そこからはもう、、初めて経験する


修羅場


だった。


けれど、
こうして書いていると
よくある話しだな。

もうあるあるすぎて
笑えてくるんだけどね。


で、

その時

解ったのは

道を決めたなら
開けるのは早いという事だ。


とても辛い
経験だったけれど、

前に進むと
決心してしまえば
そこからはわりと明るい。


その後、沢山の良い出会いや
沢山のお仕事に巡り会えて
今となってはありがたいとさえ
思える出来事だ(笑)

そういう時の
女友達のありがたさも
痛感した。


そんな

とても長い長い

バレンタインの思い出でした。


今年は

大切な人達に

とてもささやかな
贈り物をした。

とても幸せな
バレンタインでした。

皆さんは幸せに
過ごせましたか?


読んでくれてありがとう。



それでは、またね。