刑法第2問 | 旧司法試験から予備試験、司法試験へ

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【刑法第2問】

1.丙の罪責

(1)丙が時価100万円の指輪を10万円の価値しかないと甲に告げ、買い取った行為は詐欺罪(2461項)に該当しないか。詐欺罪が成立するには、財産処分行為に向けられた「欺罔」、「錯誤」、「処分行為」「財物の移転」が因果でつながっていることが必要であり、また財産的損害も必要である。

   本問では、丙は指輪の価値を偽る「欺罔」があり、そのため甲は「錯誤」に陥っている。また、甲は錯誤に基づき10万円で売却するという「処分行為」を行い、指輪を丙に渡しているので「財物の移転」もある、これらの間には因果関係がある。

(2)ところが、この指輪は盗品であり、甲は不正に取得したものであって取り返す権限を有しない。よって「財産的損害」が無いのではないか。

この点、刑法は民法とは異なり、外観上の財産関係を保護して財産秩序を維持することも目的としている。したがって、盗品の指輪に対する甲の権利も保護に値する。

   よって財産的損害も認められるので、丙には詐欺罪(2461項)が成立する。

(3)さらに、丙には盗品等譲受罪(2562項)が成立しないか。本問指輪は「盗品」である。それを丙は甲から「有償で譲り受け」ている。盗品と分かったので「故意」もある。よって丙には盗品 等有償譲受罪(2562項)が成立し、詐欺罪とは一つの行為なので、両罪は観念的競合(54条前段)となる。

2.甲の罪責

(1)甲がXの占有する指輪を乙と盗み出した行為について窃盗罪(235条)が成立しないか。この指はXがYから盗んだものであるが、財産罪の保護法益は「占有」であるので、指輪は「他人の財物」である。甲は指輪をXの意思に反して自己の支配下に置いているので「窃取」している。よって甲には窃盗罪(235条)が成立する。

もっとも、本問指輪の所有者はY、占有者はXであって、甲は両者の子である。よって244条第1項の親族相盗例が適用され、刑が免除される。

(2)甲が後述のように乙と共謀し、指輪を盗品であることを秘して丙に売却したのは詐欺罪(2461項)に該当しないか。詐欺罪の構成要件は上記1(1)のとおりであるところ、甲は盗品であることを秘しているので「欺罔」にあたり、10万円という「財物」を交付させているが、丙は盗品であることに気づいており、「錯誤」が無い。よって、詐欺未遂罪(2461項、250条)が成立する。

(3)甲が丙から受け取った売却代金10万円を費消した行為は横領罪(2521項)が成立しないか。甲は売却代金を受け取っており、「自己の占有する」に当たる。また、10万円は甲と乙の共有と考えられるが、共有物も「他人の物」である。そして、「横領」とは不法両得の意思の発現行為を広く含み、委託の趣旨に反して権利者でなければできない行為をすることであるが、甲は全額を費消してしまっており、「横領」にあたる。

(4)もっとも、10万円は不法原因寄託物であって乙は返還を請求できないから、横領罪は成立しないのではないかが問題となる。この点、上記1(2)のとおり、不法原因寄託物であっても刑法上は保護に値すると考えるので、甲には横領罪(2521項)が成立し、詐欺罪とは別々の行為であるので、併合罪(45条)となる。

3.乙の罪責

(1)乙は甲とともにXから指輪を盗んでいるので、窃盗罪の共同正犯となる(235条、60条)。もっとも、乙は指輪をXの所有と認識している点はどうか。

   思うに、244条の親族相盗例は所有者、占有者のいずれもが親族の場合に適用されるところ、乙にとってYは他人であるので、この規定は適用されない。また、これは一身専属的な処罰阻却事由であって、錯誤があっても故意は阻却されない。

   よって、乙には窃盗罪(235条)が成立し、甲とは共同正犯(60条)となる。

(2)乙は、指輪を丙に売ることを甲に命じ、甲はそれを了承しているので「共謀」がある。そして、上記2(2)のとおり甲がそれを実行している。よって、乙は詐欺未遂罪の共謀共同正犯(2461項、250条、60条)が成立し、窃盗罪とは併合罪(45条)となる。以上 

【感想など】

・こちらも「ひたすら淡々と処理」。

・甲と乙の同居を読み落とし。よって甲の横領罪の箇所で触れず。あと、甲の窃盗罪は「免除」なのに甲の罪責のまとめのところに罪責の成立を記載し忘れ。これも痛そう。

・約70行。再現率95%程度