オワLIVE!⑱
前回分はこちら氷が溶け水になり水が流れて山が動いていくが如く愛しい月子のウェディングドレス姿を見、タキシードに袖を通し、エレキと特製「Stand Up!ピック」を装備したその瞬間体中の血という血がドクドクドクと物凄い速さで流れていくのを感じていた。この感じ。この熱が体に篭っていくこの感じ・・・。忘れかけていた熱いものが今、俺の中でぐつぐつと煮、今にも沸騰しようとしている・・・。(♪この迷彩がヤバ過ぎる牙を 程よく包んでくれるー)荘厳なオーケストラのイントロに白鳥の生コーラスが混ざる。どゆゅゅううキュイイイイイイン!ギターに指を流すと、エッジの効いたエグイ音がかき出された。よし、チューニングもバッチリだ。てれてれと流れるシンセの音。そこに田嶋先生のドラムのビートが加わり、曲はリズムを持ったまま走り出していく。チラ、と横を見るとドレス姿の月子が小さくウィンクをした。月子ォ・・・(♪愛に生き、愛に死ぬー)俺は体育館の多くの双眸に目を向ける。奴らはまだ何が始まるのか分かっておらず呆気に取られているようだ。ハハンッ。そんな顔していられるのも今のうちさ・・・。俺の魂を聴け・・・。伝説のバンド「BOφW'Z(ボーイズ)」をとくと見ろ。そして拳を高々と突き上げるんだ。いや、バンドが伝説なんじゃない。(♪それが孤高のファンタジスター)「俺が伝説だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」♪いらないー何も捨ててしまおうー月子探し彷徨うマイソウルーYES WE CAN, NO WE CAN'T がまんできないクレバーに抱いてあげようー♪ジャジャジャジャジャジャジャヤ・・・!ジャジャジャジャジャジャジャヤ・・・!ギターをシャギーに鳴らしながら、高音キーが続くサビをなかば絶叫するように歌い上げていく。月子も田嶋先生も白鳥ゆい子もハゲも、バックのオーケストラもそれぞれの役割を完璧に担っている。これが初顔音合わせとは思えない程。天井からは赤や青の照明が曲のテンポや雰囲気に合わせて表情を変わる。プロの演出家でもついているのか?そう思うほどに俺ライクな照明具合だった。最高だぜ・・・!♪エッジのきかない街がいやだよー鳥人拳出来ないからー♪このあたりからサムイ目で棒座りだった会場の一部から手拍子が加わり出した。どう見ても学生や父兄に見えない人もチラホラ混ざっているがまぁいい。「ヘイヘイヘイ! エブリワン、ビートプリーーーズ!」その掛け声に、3割くらいの観客が釣られてぱらぱらと手拍子を始める。そうだ、日本人は他人に合わせる気質なのだ。「テンキュー! アイラビューー!」次はいよいよ第一の見せ場、RAPである。俺はマイクをスタンドから外し、舞台の端から端を駆け抜け、前に置いてあるアンプに脚をかける。手では観客をカモンカモンという具合に煽っていく。♪月子いないと生きられない あいにく品のない銃と女は趣味じゃないこの瞬間、世界の中心は間違いなく俺大胆と書いてヨーロピアン そう読むのがスタンダード月子の光がそうするようにチェックにグラデをキかしたら♪(♪魔法をかける5秒前)必死になって止めようとしていたセンコーどもも今ではタヌキの置物のように黙っている。そして、会場の空気もなかなかホットに渦巻いてきていた。立ち上がり、三谷先生カッコイー! などと黄色い声援をくれる者もいた。正真正銘、これがロックだ。俺のステージだ。ガキどものノリが、ただのワルノリだろうが感動によるものだろうが、もうどっちでも良い。この大きな会場が、老若男女様々の人間達が三谷進一(30)というたったひとつのホモサピエンスに手によって扇動されている。その事実だけでいいのだ・・・。Dメロはこの曲最初で最後の聴かせポイントだった。♪ブリリアントな 罠がオマエを~篭絡するぜ TUKIKO~・・・二人の 行き先? あの空の太陽にでも聞いてくれ・・・♪ベースのパートがない月子は黙って俯いている。なぁ月子。少し前までは、イ○ポが故に先も見えなくて、行き先を太陽に聞いてみるしかなかった俺達だったっけな。でも今はもうそんな必要はないんだよ。今、俺にははっきり見えた。俺の行く先が。2人の行き着く先が見えたんだ。♪いらない何も 捨ててしまおう月子探し彷徨う MY SOULYES WE CAN, NO WE CAN'T がまんできなーい♪愛しい月子よ!俺のハートのシャウトを聴け!そのAカップの胸で受け止めろ!♪クレバぁぁぁーに抱いてあげよおおおおおおおおおおおおあああああああたたたたたたったたたったああああ!!!!!!俺はエアロスミスのタイラー並にシャウトをした。「うおおおおおおお!!!!!」「ミタニー! ミタニー!」という歓声が聞こえる。き、決まった・・・!快感・・・!(♪は~はははーははは~はぁぁ~はぁあああ~♪エレガントに舞いクレイジーに酔う)血が流れている。体中を勢いよく流れ、脳からはドーパミンがどっぴゅどぴゅと分泌され、コルチゾールをもっても収まらず、感動も興奮もやがてすべては下半身へ溜まっていった。その時。むくむくっ!と、眠れる息子が起き上がって来るのを感じた。「うぉっ・・・きたあああああああああああ!!!!」まだ伴奏中なのに思わず声をあげてガッツポーズを繰り出した。盛り上がった股間を月子に見せ付けてやると月子はブッと吹き出した。よし、今決めた。終わったら保健室で子作りしよう。(♪は~はははーははは~はぁぁ~はぁあああ~それが俺の 伊達ワルレジェンド・・・は~はははーははは~はぁぁ~はぁああああああああ~)ジャジャジャジャジャジャジャヤ・・・!ジャジャジャジャジャジャジャヤ・・・!ジャジャジャジャジャジャジャヤ・・・!ジャジャジャジャジャジャジャヤ・・・!ジャーン!パァンッッッッ!「パァンッ」という発砲音に合わせて俺は目の前の空気を思いっきり蹴った!ロッカーがキメにやるあの蹴りである。全体の音がさっと止み、会場の照明がパっと落ちる。シーンと静まり、刹那、点いたライトが俺ひとりに当てられていた。「先生!!! ここで月子さんにプロポー・・・・・ひゃあ!!?」舞台袖にいた寺田が素っ頓狂な声をあげた。「あ?」言いかけてやめた寺田の方を見る。何故か顔を手で覆っている。会場も呆然としている。何だ? 何が起こっているんだ?しーん・・・それにしてもなんだかえらい開放感だった。憑いてたモノから解き放たれたような、そんな感じだ。特に下半身のあたりが・・・。「三谷ィッッ! きっ・・・キサマ何てモノを・・・! こ、公衆の面前に晒しとるんだ!!!!」ハゲがワナワナしながら言う。「へ?」指を差された先を見る。なんとそこには・・・。「おわっ!?」ズボンもパンツをぱっくり破けていた!「のわっ・・・わわわわわあああああ!?!?!?!」何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ。何故コンニチハしているんだ。野生に生えるキノコのように、そそり立ったマイスンが何でコンニチハしているんだ・・・!そうだ――――あの蹴りだ、あの蹴りのせいで服が破れたんだ――――俺はわけもわからずズボンをあげた。しかし途中でてぃん子がチャックか何かに巻き込まれてしまった。ぷちぃっ!「ぎゃっ・・・・あああああああああああーーーー!!!!???」あまりの痛みにぴょんぴょんとそこらへんを飛びまわりまくる。「あうーーーあうあうあう!ぎゃおう・・!・・・ぁあう・・・ぉああぅ・・・・・・」痛みはおさまらない。「ブクブクブク・・・」俺はやがて尻を出したまま泡を吹き崩れ落ちた。会場から笑い転げるような声が聞こえてきたのはその時だった。チカチカさんに続くのか?遅くなりました。下品ですいませんねw