別の部屋で冷やす | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

蒸気機関物語―それぞれの幸福―53

 

 

一往復ごとに、シリンダーを熱くする。

 

一往復ごとに、冷たくする。

 

それは、温泉へ入り、すぐに冷たい風に

当たり、また湯へ戻り、また外へ出ることに

似ている。

 

結はそう思ってから、少し違うと感じました。

 

人なら、湯に入ること自体が気持ちよい。

 

身体が温まり、ほっとする。

 

けれど機関にとって、温まることは目的

ではない。

 

水を上げるためには、シリンダーは温かく

保たなければならない。

 

しかし大気の力を使うためには、蒸気を

冷やして消さなければならない。

 

一つの場所で、温かさと冷たさの両方を

求めている。

 

そこに無理がある。

 

結は、二つの湯のみを机に置きました。

 

一つには熱い湯。

もう一つには冷たい水。

 

そして、その間に一本の線を引きました。

 

熱い場所。


冷たい場所。

 

これを、同じにしてはいけないのではないか。

 

ワットの問いは、たぶんこうだったのだと

思います。

 

蒸気を冷やす必要があるなら、なぜシリンダー

のなかで冷やすのか。

 

蒸気を凝縮させる場所を、別に作れば

よいのではないか。

 

シリンダーは熱いままにする。

 

蒸気を別の器へ送る。

 

その器だけを冷たくする。

 

そこで蒸気を水へ戻す。

そうすれば、シリンダーは一往復ごとに冷えない。

 

次の蒸気は、冷たい壁に奪われず、より多くの

力を残せる。

 

結はここで、ノートを閉じました。

 

まだ、この答えは書かない。

 

分離凝縮器は、次の話に取っておきたい。

 

いまは、ワットが「無駄」を見つける場面です。

 

発明は、新しい力を作ることだけではない。

 

すでにある力が、どこで失われているかを

見ることでもある。

 

火を焚いているのに、なぜ熱が足りないのか。

 

蒸気を入れているのに、なぜ力が出ないのか。

 

水を上げたいのに、なぜ石炭ばかり減るのか。

 

こうした問いは、機関小屋の外では、数字に

見えるかもしれません。

 

石炭の量。

費用。

時間。

採掘できる水の量。

 

けれど、結にはそれが、人の生活にもつながって

いるように思えました。

 

石炭を多く焚けば、誰かがそれを運ぶ。

 

費用が増えれば、鉱山主は別の場所を削ろう

とするかもしれない。

 

機関が効率よく動けば、同じ仕事に必要な燃料

が減る。

 

その変化が、どの人にどのように届くかは、

簡単には分からない。

 

しかし、熱の無駄は、ただ熱だけの問題では

ない。

 

火を焚く人の時間。

石炭を掘る人の労働。

煙が出る町の空。

 

すべてに関わっている。

 

結は、ノートの一番下に書きました。

 

無駄を見つけることは、
小さな節約を見つけることではない。

 

何が、誰の時間と労働を燃やしているのか

を問うことでもある。

 

そして、次の頁に題を書きました。

 

別の部屋で冷やす
――分離凝縮器という、静かなひらめき

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉