有間皇子の影を追う  | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

崎の湯の源泉案内を見ると、「行幸源泉

(みゆきげんせん)」という名前が記されて

いました。

 

 

「“行幸源泉”……。」

 

その言葉には、天皇の外出にだけ用いられる

特別な響きがあります。

 

結は別の資料で読んだ一節を思い出しました。

 

有間皇子が牟婁の湯を訪れて病を癒やした、

という知らせを聞き、斉明天皇が歓び、

翌年には自らも紀温湯に行幸したこと。


 

しかし、その留守を狙って都でクーデター

未遂事件(有間皇子の変)が起き、有間皇子

自身は紀伊国牟婁郡から中大兄皇子に呼び戻され、

紀の湯の途上で捕らえられたこと

 

そして、藤白坂(現在の海南市)で処刑されたこと。


 

白浜の湯は、皇子の病を癒やした「神の湯」

であると同時に、彼の運命を大きく変えて

しまった「境界の湯」でもあったのだ、と結は

理解します。

 

湯崎の遊歩道を歩いていくと、小さな展望台の

近くに、「牟婁の湯」「有間皇子」の名を記した

説明板が立っている場所があります。

 

そこには、「有間皇子の入湯と、その後の悲劇に

ちなむ乙女の像が、いまも浜辺に立っている」

といった解説が添えられていました。

 

「道後では、“天皇の行幸”は淡く遠い出来事

として感じていた。

 

でも、ここでは、有間皇子が実際にこの海を見て、

この湯に浸かったかもしれない、という実感が、

波音と一緒に押し寄せてくる。」

 

結は、海に向かってしばらく立ち尽くしました。

 

リゾート街を抜けながら、古湯と観光地の二重の顔

を見ていきます。

 

湯崎から少し離れ、結は今度は旅館街の通りを

ゆっくり歩きました。

 

高台に向かう坂道の両側には、近代以降に

開発されたホテルや保養所が並び、その合間に

「牟婁の湯」「白良湯」などの共同浴場の看板が

見え隠れします。

 

現在「牟婁の湯」と呼ばれる共同浴場は、

大正期に白良浜近くで新たに掘削された源泉と、

湯崎側の古い源泉を併せて利用している施設で、

「古代の牟婁の湯」の名を継承した形です。

白良浜周辺の温泉街は、昭和期以降、「海水浴と

温泉」「パンダの町」として観光地的な色彩を強め、

熱海や別府と並ぶ「日本三大温泉」と呼ばれた

時代もありました。


 

結は、その二重性を強く意識します。

 

「ここは、“日本三古湯”であり、“昭和の一大

リゾート”でもある。

 


牟婁の湯と白良浜、斉明天皇の行幸と観光バス、


 有間皇子の悲劇とパンダのぬいぐるみが、

同じ町の中に共存している。」

 

彼女にとって大事なのは、どちらか一方を

否定することではなく、海岸の岩盤から自噴

する高温の湯を、「古代から続く“温湯(ぬるゆ)”

としてどう感じるか。


 

そのすぐ背後で、近代以降の旅館・ホテルが

積み重ねてきた「保養と観光の時間」をどう引き

受けるか。

 

という、二つの層を同時に眺めることでした。

 

結のノートに残る「歩きながらのエピソード」

 

宿に戻る坂道を上りながら、結はその日の

歩行ルートをノートに簡単にスケッチしました。

 

「1日目午後:
 白浜駅 → 白良浜 → 湯崎 → 崎の湯周辺 → 

湯崎遊歩道 → 町なかの共同浴場前 → 宿

 

見えたもの:
 ・白良浜の白い砂と南国風の景観(近代以降の

“白浜”の顔)。

 


 ・湯崎の崖と岩盤から湧く湯、“牟婁温湯/紀温湯”

の子孫としての崎の湯。

 


 ・有間皇子が病を癒やしたとされる湯と、その後

の悲劇(有間皇子の変)を伝える解説板と乙女像。

 


 ・“牟婁の湯”の名を受け継ぐ近代の共同浴場と、

観光地としての温泉街。」

 

ページの端には、こう一行が添えられていました。

 

「紀国の海辺を歩くことは、
 

 

斉明・持統らの行幸の影と、

有間皇子の短い生と、
 

昭和の観光バスと、自分の七日間湯治とを、
 

 

同じ道ので重ねることだった。」

 

白浜の海風の中で、結は、有馬とも道後とも違う

「海の古湯」としての白浜の時間に、静かに

足を踏み入れていきます。

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉