宿禰と判官 | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

小栗判官は、ほとんど骨と皮だけの餓鬼阿弥

になって「つぼ湯」に浸かり、何度も何度も

湯治を繰り返して、ようやく元の身体と記憶を

取り戻します。

 

 

それは「底からの再起動」の物語です。

 

対して、武内宿禰は、底に落ちないまま、

ひたすら時間を伸ばされた存在として

描かれます。

 

「私は、小栗ほど底に落ちているわけでは

ないし、武内ほど長く働き続けることも

できない。

 

でも、そのあいだのどこかに、自分の

“湯治の時間”を置くことはできる。」

 

白浜の湯は、死者を蘇らせるほど強烈

ではないけれど、海風と塩分と熱によって、

「平常を少し上向きに保つ」力を

持っているかもしれません。

 

「300年」を笑い飛ばさないための一週間

 

結は、白浜での湯治計画を、あえて

七日間で組み立ててみることにしました。

 

有馬の三回り、道後の一回りと同じ

「一単位」としての七日。

 

ノートには、こんなふうに書かれていきます。

 

その内容は、どうも結の年齢としては

そぐわないものでしたが、

 

「白浜湯治 一回り七日(仮)

 

 目的:


 ・“死者の蘇生”ではなく、

“老いながら働き続ける身体”

のための調整。

 


 ・武内宿禰の300年を、笑い話として

遠ざけず、“長く仕え続ける身体”の比喩

として、自分の年齢に引き寄せる。

 

 条件:


 ・毎日フルで熱湯に浸からない。

 

塩分と熱に“慣れる日”と“距離を取る日”を

交互に置く。


・海辺の散歩と休息を、湯と同じくらい重視

する。


・紀国の時間(武内の産湯・熊野のつぼ湯)を、

頭のどこかに置きながら入る。」

 

計画を書きながら、結はふと笑いました。

 

「300年の長寿を、七日に落とし直す試み、

というわけか。」

 

こう書いて、結は、さすがに自分の老いという

のはピンとこないかと思い、苦笑しました。

 

誘いとしての武内宿禰

 

白浜行きの日程をカレンダーに書き込んだ夜、

結は再び武内宿禰の項目を読み返し

ました。

 

官職名か合成人物か、という議論を知り

つつも、彼女はあえてこう書き添えます。

 

「史実としての武内宿禰には、きっと姿かたち

はなかった。

 


それでも、“五代の天皇に長く仕え続けた

身体”への憧れが、300年の長寿と、不老の水と、

霊泉とを彼のまわりに集めたのだろう。

 

私は天皇に仕えるわけではないが、
自分の仕事と

生活に、あと二十年ほどは

“仕え続けたい”。

 


そのための身体を作る場所として、紀国の

海辺の湯に行ってみたい。」

 

和歌山の産湯の井戸で出会った「隠れた祖」

は、結にとって、白浜への静かな招待状

のようにも思えてきました。

 

山の鉄泉で身体の厚みを作り、町の透明

な湯で顔と脚の標準を測り、そして海辺の

塩の湯で、「長く働き続けるための平常」

を探る。

 

その三つ目の場所に向かうとき、結の背中を

そっと押しているのは、300年の長寿そのもの

ではなく、「長く仕え続けた身体」への、古い

時代からの願いそのものなのかもしれません。

 

結はノートを閉じ、白浜行きの切符の予約

画面を開きました。

 

「武内宿禰の300年のうち、私が借りるのは、

一週間分くらいでいい。」

 

そう呟きながら、彼女は紀国の海辺へと

続く“湯治の予定”に、静かに指先で

印をつけました。

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉