伊香保での自分の時間 | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

伊香保温泉・第14日後半

 

 

宿に戻り、共同台所で昼食の準備にとりかかります。

 

十四日目の昼は、「少食を守りながら、心がふっと

緩む一品」を加えることにしました。

 

土鍋に水と大根、人参、ごぼう少し、白菜を

入れて煮立て、こんにゃくと豆腐を加えて味噌を

溶きます。

 

そこに、ほんの小指の先ほどの量だけ生姜の

すりおろしを加えました。

 

冷えと疲れに効く生姜は、江戸期の養生書にも

たびたび登場する食材です。

 

ご飯は、茶碗に軽く半分ほど。

 

味噌汁の香りと、生姜の刺激がほんの少しだけ

鼻に抜けていきます。

 

食べながら、「このくらいの“変化”なら、湯治の

枠からはみ出さない」と感じました。

 

途中で一度箸を置き、満腹感ではなく、「これ

以上食べたら重くなる」という境界線を探ります。

 

その線の少し手前でご飯を止め、残りは再び

明日の朝に回すことにしました。

 

昼食後、短い昼寝を挟んでから、二回目の湯に

向かいます。

 

十四日目の二回目は、「半身浴から始め、

最後に肩までひと息」という、ここ数日で自分

なりに安定してきた型にしました。

 

湯殿に入ると、いつもの年配の女性が、

「今日は顔つきが変わったね」と笑います。

 

「十一日目のあたりで一度しんどくなって、

そこから少しずつ戻ってきました」と話すと、

「その感じが出ていれば、三巡目に入っても

怖くないわよ」と返されました。

 

腰まで浸かり、呼吸を整えてから、一度だけ

肩まで沈みます。

 

湯の重さは、もう怖くありません。

 

十一日目のように「効きすぎるかもしれない」

という警戒心は、別の形の慎重さ

 

「ここでやめるべきだ」という身体感覚への信頼

 

に変わっています。

 

湯から上がり、部屋に戻ってノートを開きます。


「昼湯二回目。半身〜肩。湯は“強い薬”では

なく、“身体のリズムに合わせて効く常薬”の

ように感じられる。

 

二巡目十四日目で、ようやくそのバランスに

手が届いた。」

 

午後は、窓から入る光と風のなかで、原稿

ノートを静かに読み返しました。

 

一巡目の七日目の記録と、今日の十四日目

のメモを並べてみると、文字の密度も視線の

向きも違って見えます。

 

一巡目は、「湯治」という言葉を追いかける

ような書き方でしたが、二巡目の今は、「伊香保

での自分の時間」をそのままなぞっているだけ、

という感覚が強くなっています。

 

夕方、三回目の湯に入るかどうかを決める時間

が来ました。

 

身体の状態を点検すると、脚は軽く、腰と背中も

柔らかい。

 

胸のあたりもすっきりしていて、頭も冴えています。

 

ここで三回目に短く入って一日を締めくくるか、

それとも二回で止めて「余白」を残すか。

 

結は、しばらく迷った末に、ノートにこう書きました。


「三回目、五分以内で入る。

 

二巡目一巡目の締めくくりとして、“湯に感謝して

出てくる”時間を持ちたい。」

 

湯殿に入り、湯壺の縁に腰を下ろして、まず

足先だけ湯に浸けます。

 

重さは感じませんでした。

 

胸まで浸かり、最後に肩までひと呼吸だけ

沈みます。

 

その短い時間のなかで、ここまでの十四日間

の断片が、湯気の向こうにうっすらと浮かんで

は消えていくようでした。

 

湯から上がり、丁寧に身体を拭き、「ありがとう

ございました」と小さな声で湯殿に一礼して

部屋に戻ります。

 

窓の外は、薄い夕闇に包まれ始めていました。

 

夕食は、昼の味噌汁を薄めて温め直し、ご飯を

小さなおにぎり一つだけ。

 

具は梅干しのみ。

 

十四日目の最後の一口を噛みしめながら、

「これで二巡目一巡目の七日間が終わる」と、

静かに心の中で区切りをつけました。

 

ノートの「今日のからだと心」の欄には、少し

時間をかけて文字を刻みます。


「二巡目七日目(通算十四日目)。

湯三回。脚の冷えなし。膝の痛みなし。

 

腰・背中の重さも消えた。

 

食事は一巡目より明らかに軽いが、空腹による

焦りはなく、“ちょうどいい足りなさ”として

受けとめられている。」

 

そして最後に、一行だけ付け加えました。


「十四日目は、“もう一度の七日目”だった。

 

二巡目に入ったことで、伊香保の湯は、

初回の感動の対象から、“自分の生活リズム

を整える相棒”のような存在に変わりつつ

ある。

 

その変化を、身体の奥で静かに自覚した

一日だった。」

 

 
ご精読ありがとうございました。
 
懐中温泉