懐中温泉です、
またもやご質問をいただいています。
「香水のシャネルの5番を使っていますが、
あれはマッコウクジラの排泄物から
できているのですか。」
簡単に言えば、そうなります。
いや、もしかすると経路は違うかもしれない
のですが、メカニズムというかロジックというか、
そこにあるストーリーはそうなのです。
大変貴重な原材料を手に入れるまでの
ストーリーが。
または、そもそも、最後にできあがるものが、
原材料とは似ても似つかない。
「まさか、こんな代物が？」
という驚きと意外性がある。
できあがった作品と、その原材料とでは、
およそギャップが大きすぎる。
次元転換がなされている。
そのくらいの意外さです。
もととは似ても似つかない。
前々回から例のウィルスの発生源が、実は
中国の野生動物を食べる食習慣と深い関係が
あるのでは。
そこから、満漢全席料理と密接に関わりがある
のでは、というお話をしています。
もしかして満漢全席料理そのものではないかも
しれないが、それを生みだす食の慣習が、
食文化が。
あるいは、そもそも食こそ文化なのかも
しれないが。
満漢全席とは、前にもお話ししましたが、
2日・3日かけて、山海の珍味を集めた料理を
食べ続けるというものです。
満族と漢族の料理を集大成した、というので
満州民族が中国を支配した清の時代にできあがった
ものと思われます。
中華とは、もともと世界の中心、というので
その中華料理の集大成。
だから、世界中の珍味を集め、
ツバメの巣
フカの鰭（ひれ）
クマの掌（てのひら）
象の鼻
竜虎
なお、竜というのはヘビで代用し、
虎もなかなか最近は簡単に食用としては
手に入らないのでネコで代用する、と
聞きます。
あとは有名なサルの脳みそですね。
しかし、中でも抜群の珍味とは。
意外性の極みであり、ストーリーで言えば
あっと驚くのは。
蚊の目玉スープ。
コウモリの糞からくる。
実際には、満漢全席のラインナップには
コウモリ本体も入ってくるでしょうが、
ただその姿があまり優美ではないと
される可能性がある。
優美でエレガンスがないと。
だから、最近言われている野生動物を食べた
というその説明のされ方からすると、
どうもやはり満漢全席といった感じではない
のかもしれません。
少なくともストーリーがない。
しかし、蚊の目玉スープにはストーリーと
それを貫くロジックがある。
次元転換のメカニズムがあるのです。
ここでハッと我に帰りますが、マッコウクジラ
についてのお話でした。
いや、最高級の香水である、シャネルの5番
についてのご質問ですね。
その元の材料がマッコウクジラの排泄物なのか。
そうだ、ということになります。
正確に言えば、マッコウクジラが餌である
ダイオウイカを食べ、その嘴（くちばし）の部分が
消化しきれずに胆嚢に貯められる。
いずれ排泄する準備として。
人間がマッコウクジラを捕獲してその胆嚢を
取り出し、中から未消化のダイオウイカの嘴、
良い具合にマッコウクジラの消化液を浴びている、
を抽出する。
それがシャネルの5番の主要な材料である、
竜涎香（りゅうぜんこう）になる。
なんだかこちらも満漢全席で振る舞われそうな
感じですが。
少なくともマッコウクジラとダイオウイカと
で組み合わせた。
まあ、ウィルスとは関係なさそうで、安心ですし。
しかし、竜の涎、というので何かにその香料は
使われるのは間違いなし。
なにしろ竜の代わりにというのでヘビを食べる
わけですから。
ということで、シャネルの5番の主要原料である
竜涎香はマッコウクジラの排泄物、というのは
おおむね正しい、ということになります。
ご納得いただけましたか。
納得し、胃の腑に落ちましたか。
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ご精読ありがとうございました。
懐中温泉