ここは、
身体活動停止中で精神活動暴走中と一人呟いていた女がいる、
何処かのマンションの一室内にある居間である。
何故解ったのかと言うと、
Rと刻印されていたマグカップとコップのフチ子。
そして木製の円卓。
そしてその円卓の上に置かれた私の大好きな珈琲。
これまで何度として目にしてきた風景は、
偶々だったにせよ、私の目と頭と心がそれを記憶している。
いつの間にそんな遠くまで行って仕舞ったの？
私は一人ぼっちで凄く寂しかったとは言わない。
だって、私の大好きな、大事な珈琲はいつも近くて遠い場所にあることを私は知っているつもりだからだ。
しかし、、、、私の大好きな珈琲は、、
今日もやっぱり大人な色気と甘い香気を漂わせ、
威風堂々としているわよね。
それにしても、
この女の事になると、どうも怪しい。
記憶が曖昧で、女の顔だけ霧に包まれている感じがして全然思い出せないのである。
嫌、嘘きました。
実を言うと思い出したくないのである。
言うまでもないけど、
あの頃もそうだし居間にいる今でも、
女の心ここに有らずで、
無表情、無感動、無愛想な面で、
私の大好きな珈琲をただ何も考えず、ぼけっとした感じで流しこんでいたからだ。
そして女の顔は今日もやっぱり変わらなかった。
しかし女の事なんてどうでも良い。
だって私は珈琲女。
時に焼きもち焼いたり、恨んだり妬んだりはするけれど、
珈琲がある場所なら、何処にでも現れるし、
争い事は出来たら避けたい、
ただの、通りすがりの女の、その名も珈琲女だから。
相変わらず名前は気にいらんが、
こんなに珈琲の事が好きな私だけれど、
実を言うと昨日より今日、
今日、目の前にある珈琲の方が私は好きなのである。
昨日より前は全てが過去。当たり前だけど、
昔なんかに興味がないのよ。って、
はるな愛さんのズバッとサマータイム的な感じで歌いながら、踊ってみたいのだけど、
まるでダメなのよね。
昔の記憶がないのよ。
思い出そうとすると発狂したくなる。
もしかして、もしかすると、
珈琲の前にいる女と私は一緒、いわゆる同質でありながらも、まるで別物なのかもね。
とりあえず、女の事はどうでもいいの。所詮赤の他人。
かといって私はね、
未来に向かって必死に我武者羅に生きるタイプでもない気がする。
兎も角、今さえ良ければ私は安心するのよと、
言ってみたい気もするのだけど、
自分でも色々が良く解らないんだね。
とりあえず、理由は、その真相は、
私自身の過去、もしくわ私自身にあるかもしれない。
ただやっぱり記憶がないのよ。
だから、私は、こんな私を安心させてくれる珈琲に、
心から惚れ混んで仕舞っているのだと想う。
理由は解らない。
解らないけれどこれが運命の赤い糸ってやつなのと想ったりもするわ。
ただね、一緒にいるとちょっぴりドキドキなんかして、何だかとても落ち着くの。
信じられないでしょ。私だってそうよ。
しかし、解るかしらこの女心ってやつを！
ただ私の場合は珈琲がいつも近くにありながらも、
ただ黙って眺める事しか出来ない。
勿論時より笑ったり怒ったり悲しんだりもする。
しかし、手を伸ばせば直ぐに届く所にある、
私の大好きな珈琲なのに、
多分、仏頂面のこの女がいつもそれを邪魔をするんだ。
満ちては引いてゆく海水ように、
珈琲は様々な形で、私の前に又、戻ってくる。
そして私は、その波打ち際でただ待っているだけ。
時に激しく荒れていたり、時には穏やかだったり、、時間や場所に寄っては色々な時があるけれど、きっとそれが自然なのね。
珈琲×女、珈琲女。
やっぱりいくら考えても私達はお似合いである。
私は、私で満ちては引く海水の如く、
そんな様々な表情を魅せてくれる珈琲に、
今日もぞっこんなんだ。
自分自身が自然でいられる気がするからね。
とりあえず、珈琲を注いでくれた女には感謝。
好きか嫌いかは別としてね。
しかし居間にいる女の心は今日もここに有らず、
そして私の心は今日も女に有らず。
通りすがりの女・珈琲女シリーズ236.239.245.248.257.258.260.266、272.273、279、285 、291.297 300 301 、305、308、310 、311 、312、314、316、318、323、324、325、326、327、330、332、334、335、337、338、341、344、346、347参照)
通りすがりの女裏版シリーズ・呟
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完
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