女は両手を大きく開くと歩みより、
今すぐにでも抱きしめようとしていたが、
周りの目が気になったのか諦めたようだった。
この時私は、、女が人知れず拳を握っていた事を見逃さなかった。
女は今すぐ抱きしめられなかった事への憂さ晴らしなのか、
もう一度、
めっちゃ好きなの!!と、潤んだ眼をしながら呟いた気がした。
女は歩き、一人椅子に腰を下ろすと、
店内を見渡し、目を細める。
女の口元はにやけ、今にも中身が吹き出しそうで、
嬉しさや喜び、楽しさだけで溢れ反っているようだった。
女は深呼吸をする。マスクの中で。
見慣れたスタバ。懐かしのスタバ。思い出いっぱいのスタバ。
大きな窓ガラスから見えるのは果てしなく広い空と光の形。
女の身体は小さく震え、それは女の人差し指の末端の末端に現れたようだった。
末梢神経の目覚め!自律神経のバランス!
人間の、本来持ち備えた自然治癒力や回復力の開示!等と、思わず私は叫ばずにはいられなかった。
でもやめた。実は声がだせないの。
ご理解頂く他に妙案が思い浮かばないのよ。
ごめんなさいね、でも好きだよ。
とりあえず私の事はどうでも良かった。
何故ならば、
いつも耳に心地よく届く店内のざわめきや、
店内に流れるジャズも、
一人ぶつぶつ、どうでも良い事を呟く女の声も、
あの頃と何一つ変わらなかったからだ。
私は純粋に嬉しかった、そして私はただ素直になれた。
ただ、唯一変わったと言えば女が歳を重ね、
予期せぬ事態が女の肉体を蝕んだ事だろう。
大丈夫。
体力や筋力、ウエイトやウエイトなど、
少しずつ取り戻してゆけば良いではないか。
何処かで聞いたけれど、
RANBOXで培った体力や筋力等はそう簡単に落ちるものではないし、
それに、いきなり無理をすると、
思ってる以上の負担が身体と心に掛かって仕舞う。
身体も心も、時として同質となり、表裏一体にもなるものだ。
自分だけで良ければそれは良しだけれど、
人は1人ぼっちで生きてるわけではないはず。
帰る家、待ってる大切な人が、きっと元気なあなたを待ってるはず。
私はずっとひとりぼっちだったのよ。
兎も角、女がここを出た後には、
一体何と誰が私を待っているのだろう?
私を一人ぼっちにし、
女はそんな沢山のお荷物達を抱え一体何処へ向かうのだろう?
でも私は大丈夫。
何故ならば、
私は珈琲がある場所なら何処にでも現れる、
ただの、通りすがりの女、その名も珈琲女だからよ。
相変わらずこの名前は気に入らん。
兎も角、
ここJR東日本山手線沿いの田端駅にある駅ビルアトレ二階にあるスタバって言いたい所だけど、
まだ営業再開してないのよ。
先に言えよって話をよね。
だって聞かれてないもん。
とりあえず私はマクドナルドにチェックインしていた訳よ。
さて、気がつけば珈琲がなくなりかけている。
そして、ここから先はただの夢物語ではない。
心は揺れ、肉体は百花繚乱の如く、
勝手に狂喜乱舞する事であろう。
素晴らしい1日の幕開けと共に、
明日へ繋がる希望を、産まれ持った力を生かして切り開け。
女よ進め!ぶつぶつを終えて今すぐ立ち上がれ!
6月6日土曜日。
ここは田端のスタバである。と言いたいが、
アトレは11時から営業開始らしい。
知らなかった。ショック!
仕方がないから、

いつものようにスタバの写メをとり、
マックに来た訳だけど、実は久しぶりなのだ。
余りにも久しぶり過ぎて、
小心者で臆病者の私の心臓は今にでも口から飛び出しそうなのだ。
居間にいるときはそうでもなかったのにと思いながら、、、、。
とりあえず、マックの店内に入ると、
何処からともなく女の声が聴こえてくる。
時と場所を選ばないのも幻聴なのかと思いながら、
気にはしなかったが、
珈琲を飲み始める前に、
女の声をそのまま記録してみたのだった。
完