吉川英治によって日本人の宮本武蔵像が決まったように、
また司馬遼太郎によって坂本竜馬像が決まったように、
歴史小説によって人物のイメージが決まることは多い。
しかし、残念ながら宮城谷氏にはそこまでの仕事はない。
一つは中国の人物を扱っているからだろう。
しかし、それだけではなく、一人の人物を長く追いかけすぎだからだと思う。
10年、20年がたいしたエピソードも無く過ぎてしまうことがよくある。
もっと濃密でいいんじゃないか、その人物のほんの一部でもいんじゃないか。
個人的には宮城谷氏の書く人物は好きなだけに、
後世の日本人のその人の人物像を左右するような作品を残して欲しい。
今作「管仲」においては管仲よりも鮑叔のほうが魅力的に感じた。
管仲よりも鮑叔のほうが国家のため民のために何をすべきかということを心得、
攻める時は攻める強い意志と、退く時は退く謙虚さを持ち合わせ、
しかも情にあつい素晴らしい人物だと思う。


