「指輪がないよ」
空港のロビーで、本を読んでいる時の事だった。
4歳くらいの女のこが、ふたりのおばあちゃんにそう告げていた。
空港前の横断歩道で手を繋ぐ時にはあったのに、その後落としてしまったようだ。
おばあちゃんのひとりは、来たところを探しに行き、女のこともうひとりのおばあちゃんはロビーで待つことになった。
悲しいだろうにあまり表情に出さない少女は、涼しい目元をしていて、麦わらぼうしと、黒と紫のワンピース姿で、立ち尽くしていた。
「指輪は?」
ロビーの椅子に両膝を乗せて、少女はおばあちゃんに尋ねた。
「○○ばぁばが探しに行ってくれてるよ」
暫くして、探しに行ったおばあちゃんが戻ってきた。
「指輪なかった。キラッとしてるものだったから、すぐにわかると思うんだけど、危ないと思われて、誰かに拾われたんだろうねぇ。」
この短い間に、、、しょっく。
「高価なものではないけどかわいらしい」
その一言に、探しに行ったおばあちゃんの孫への愛情の全てが感じとれた。
「指輪また買ってやる」
ふたりのおばあちゃんは、口を揃えてそう言った。指輪を落とした孫娘の心を察し、咎めずに包み込み、無条件に愛する祖母の愛は、神様に似ている。
孫だから、なんぼでも甘やかしてよいではないか。甘やかしてしまえ。
両親が困るような、でたらめで自己中な愛し方では不味いが。
それは祖父母に与えられたこれからを生きる孫に必要な特権だろう。
iPhoneからの投稿