2018年音楽振り返り | NOPPELABO

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心の震えた、その足音ノオト。

なんと、気が付けば大晦日。12月31日。最後に友人たちと例年と少し形は変われど恒例の忘年会ができたことは有り難かったな。自分自身の振り返りとしては、今年はとにかく身体を鍛える!そしてフルマラソン完走!の目標を達成出来たことがもう一番です。毎年明確な目標なんて立てるタイプではないけど、これだけは密かに企てて、地道な練習が数字として分かり易く成果に表れたので、言葉にしやすくて良い(笑)「虎視眈々と準備をして来た僕だからきっと上手くやれる」(PADDLE)の体現ですよ。自分で言っちゃうけど。

音楽的に振り返ると、例年に比べるとそこまで熱心に音楽を聴き込んだ年ではないかもしれない。でも、それでも今年場面場面で印象に残る曲ってのはあるわけで。それを振り返りたい。


今年のハイライトはなんと言っても13年振りにつま恋参加したap bank fes。転売屋のせいかフェスイベントなのにチケットは全滅。直前に公式トレードでゲットして慌てて予定立てたことから始まったのだけど、そこで受けた特有の空気感や13年前より何もかもがアップデートされてた雰囲気が素晴らしかった。そしてそこで真新しい音楽に触れたこと。勿論単身のアーティストのライブも素敵なのだけど、フェスならではの盛り上がりが好きになった。他のフェスにも毎年行ってみたくなった。

「MESSAGE-メッセージ- / Bank Band with Salyu」
「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう / 岡村靖幸
「虹 / 高橋優」

ap bank fesの最もな衝撃は岡村靖幸のステージ。正直見るまで「癖のある歌い方をするクセの強そうなオジサン」程度の印象だったのが、「MC無しでキレッキレにダンサブルな曲を踊りまくるスーツ姿のオッサン」を全く想像してなくて、正に未知との遭遇。曲もミスチルの「未完」だったり、桜井さんがかなり影響を受けてるフレーズが垣間見えたりなど面白かった。

「住所 feat. 岡村靖幸 / KICK THE CAN CREW

Apple Musicで岡村靖幸の曲聴き漁ってたとこに飛び込んできたKICKとの新曲。とにかくリズムがカッコよくって、編曲には蔦谷好位置も名を連ねる。お互いのいいとこ取り。これぞコラボでしょって意味を成す曲。「住所」と「10畳」で韻を踏む歌詞も面白すぎでしょって思ったけど、「イマジネーション」と「氏名住所」で韻を踏んでる人が既にいたのを思い出した(ロックンロールは生きている)。


「マリーゴールド / あいみょん」

あいみょんと米津玄師はメディア的にも今年最もブレイクした、2018年の顔になってるから、最近は個人的には食傷気味ではあるけど、聴いた時の衝撃はやはり大きかった。アルバム「青春のエキサイトメント」の冒頭三曲は流れも含めて、全部ガシッと掴まれるくらい、自分の中で初めて聴くのに懐かしい感じが蘇って来た。学生の頃に抱えてたあの悶々とした初期衝動のようなカタマリ。そんなカルキ臭さや青臭さを一向に隠すことなく寧ろ個性の一つとしてる。時代が多分また巡ったし、こんな音楽を多感な今の10代に届けてくれる存在がいて良かったな、なんて目線も持ってしまった。

「Lemon / 米津玄師

あれだけアルバムがヒットして、満を持してのドラマタイアップ付きのミディアム曲。最早売れないはすがないんだけど、そうした曲をちゃんと売れさせてしまうところがもう、米津玄師たる所以なのかなと。そんな脈略も無いようなことを言ってしまうくらい米津玄師の年でした。ドラマも面白かった。脚本と曲が非常にマッチしてて、ドラマの展開と共に歌詞の意味が謎解きのように解かれていく様に、観る側もどんどんと引き込まれていった。視聴者も同じ時間軸上で、まるでキャストと同じ感覚でいれるような仕掛け作りが見事だった。日本中が年越しそばをすすりながら注目するような年の瀬の紅白の舞台で、故郷の徳島から亡き祖父を想って歌う、テレビ初歌唱の米津玄師。プリミティブとデリバティブをしれっと同時に達成しようとしてるけど、到底誰にでも出来ることじゃない。もう皆んな分かってるけど、只者じゃない。それを本人は表にはおくびにも出さず、またしれっとやりのけてしまうのだろうな。


「Get Myself Back / 安室奈美恵」

引退するアーティストが一番売れた年。言い方にもよるだろうけど、それだけ「売る力」を持った次世代が出ていない。勿論、安室奈美恵はCDが最も売れていた時代にブレイクしたアーティスト。即ちファンは「作品はCDで揃える」思考が備わった世代だから売れて当然。でも、個人的に安室奈美恵と言えば90年代。主に00年代の彼女の曲はあまり知らない(個人ブログなので単純に個人の印象にだけ基づいて述べますね)。ここ数年も頻繁に熱心に聴いていた方には申し訳ないけれど、そんなに公に目立った活動をしていた印象はなかった。彼女がメディアと一定の距離を取っていたのは知ってる。だからこそ昨年の紅白は感動したし、「彼女の歌が聴けなくなる」衝動に駆られて、CD世代はCDを手に取ってしまう。「音楽は過去を回顧するにはうってつけの手段」。甘かった経験も苦かった経験も、現在の自分の糧となって今がある。日本中の彼女を歌を聴いて育んだ世代が、そんなことを知らず知らず実感した一年じゃなかったろうか。「Get Myself Back」て曲はそれまで知らなかった。でも「大丈夫きっとすべては上手くいく」と彼女に歌われると、無条件にそう信じてしまう。それだけの経験や過程をやはり経て来た人だということは、自分のようなにわかにも重いくらいに伝わってるから。


「Play A Love Song / 宇多田ヒカル

アルバムを買ってプレイボタンを押した瞬間に聴こえてくる声。日本語を想定外の箇所で区切って、小刻みな鍵盤に引っ張れる形でリズム良く振り分けられた歌詞と心地よく響くビート。CMソングとしてキャッチーに本人が口ずさむサビのメロディー。「宇多田ヒカルと言えば」。これだけの巨大なプロジェクトだから抱える印象は人それぞれ。でも自分はこんな宇多田ヒカルが好き。そんなことを改めて思い知らされた曲。アルバム全体のテイストは、ミディアム中心のやや重めの印象だったけど、とにかく一人の人間としての表現力が今回は物凄く圧が増してた。比較的ライトな印象のこの曲であっても、後半のゴスペル風コーラスの厚みを増して展開を盛り上げるのは、こうしたキャッチーな曲でこれまでの日本語ポップスではありそうでなかったかも。


「プロミスザスター / BiSH

完全に範疇外だった。偶然テレビでこの曲を聴いて、いい曲じゃね?ってアンテナにかかった。サブスクで聴いて、歌ってる娘の声に惹きつけられた。それからYouTubeでライブ動画やテレビ番組出演時の映像を観た。アイドル?アーティスト?正直、ビジュアルで推してくグループではない印象(失礼)。可愛い女の子を応援したいなら他に沢山いる。個人的にパンクもアイドルも好き好んでは聴かない。それでも聴いていて全く嫌な気がしないし、聴くほどに曲が練り込まれて作られてるのがわかる。その主な理由としては曲の構成。入り口はパンクロックのダイナミックコアな演奏。それに線の細い女の子の声が乗っかって、正直押し負けてるとこもある。でも主にサビやメインを任せられるアイナ・ジ・エンドが歌唱した瞬間に曲のボルテージが変わる。その後にセントチヒロ・チッチの女子力がありながら芯の通った声が揺さぶりをかけてくる。アイドルなのに歌割りが均等じゃなく、サビのユニゾンもほぼ皆無。ビジュアルイメージと曲構成をきっぱりと分けてるところがなんとも潔く好印象。来年是非とも生で見てみたいアーティスト。


「皮膚呼吸 / Mr.Children」

アルバム「重力と呼吸」は、長年マーケットや音楽業界全体、はたまたリスナーの一人ひとりの受け取り方までを一手に担い受けてきたMr.Childrenが、ここまで自分たちバンドのために音楽を鳴らしたのは初めてと言い切れる作品。だからと言ってエゴ塗れでなく、説教臭くなく、過去のヒット曲の焼き直しでもなく、より研ぎ澄まされていて、洗練で、尚且つ挑戦的でいれるのは、26年経ったバンドの佇まいがただただシンプルで健全に音楽を愛しているからではないだろうか。そんなバンドの状態がファンとしてはただただ嬉しいし、26年経ってもまだ聴いたことのない、見たことのない地平を、彼らならきっと見せてくれる。そんなワクワクが止まらない。23年ほどファンをしてきてそんなこと改めて言わなくてもいいのだろうけど、こちらの期待なんか一向に気にせずに、自分たちの目指したい景色を、鳴らしたい歌を、今後もただただ奏でて欲しい。できるだけできるだけ永い期間。先日のツアーを見て、今回の作品がそんな佇まいであることが自分の中で腑に落ちた。その象徴として「皮膚呼吸」を選んだ。まだまだ自分にも伸びしろがあると思いたい。夢を描きたい。手を伸ばしたい。そんな想像の翼を広げてくれる曲。そんな想いで、来年を迎えたいと思う。

最後に。10曲は長ぇ。せめて5曲にすれば良かった。最後まで読んでくださった方、どうもありがとう。来年も素敵な音楽に出逢えますように。では、よいお年を。