『となり町戦争』 三崎 亜記

となり町戦争
三崎 亜記
「となり町との戦争のお知らせ」
それは月2回発行される広報誌によって知らされた。
とりあえず僕が最初に心配したのは、通勤という
きわめて私的なことだった。
毎日となり町を通って通勤しているのだが、
開戦日を過ぎても、今までと何の変わりもなく、
次第に戦時中であることすら忘れがちになっていた。
しかし、広報誌に掲載される戦死者の数は
どんどん増えていくのだった。
そんななか、町役場から戦時特別偵察業務従事者に
任命される。
そして何の自覚も覚悟もないままに
「ぼくにできることだったら」と参戦するのだった。
まさに現代の日本人を代表する姿がそこにある。
戦争に対する現実味のなさ。
他国の戦争は対岸の火事にすぎない。
テレビで爆撃の様子を見ても、まるで映画でもみているよう。
ふと神戸の震災を思い出した。
テレビ画面にうつった火の海となった神戸の町。
何度も訪れたことのある見慣れたはずの風景が…。
何度も通ったことのある道路が崩れ落ち、
目の前を通ったことのあるビルが倒れている。
そしてどんどん増えていく死者の数。
まるで戦争でも起こったような様子だった。
神戸には知人もたくさんいた。
テレビ画面を見ながらものすごく恐ろしくなった。
戦争や災害だけではない。
日常生活でも、自分は自覚のないままに行ったことで
人を傷つけていることがたくさんあるかもしれない。
この作品、戦争を扱いながらも実際の戦闘シーンは皆無。
現実味のないリアリティが胸にずんずんと響いた。
『4TEEN』 石田 衣良

4TEEN
タイトル通り、14歳の少年たちの物語。
舞台は月島、主人公のテツローには、クラス1の秀才のジュン、
家がお金持ちのナオト、巨漢のダイという3人の仲間がいる。
友だちの病気、切ない恋、家庭の悩みなど、色々な事を経験して
少しずつ大人になっていく少年たち。
14歳なんて遠い昔のことだからなのか、女子と男子では
同じ中学生でも違うからなのか、あまり共感できなかった。
扱われている事件も身近にあまり起こりそうにないことだったし…。
『野ブタ。をプロデュース』 白岩 玄

野ブタ。をプロデュース
白岩 玄
なんともユニークなタイトル。
ここのところ偶然にもいじめを扱った作品が続いている。
それだけ現代の大きな社会問題なんだろう。
この作品、同じいじめを扱った物でも少し毛色が違う。
着ぐるみを来て本当の自分を隠して学校生活を送る
桐谷修二。彼は転向早々いじめられっことなった
小谷信太を「野ブタ」と名付けて人気者にすべく
プロデューサーをかってでた。
プロデュースの過程を笑いを入れながら
面白可笑しく書いているんだけれど、いまひとつ複雑。
前に読んだ2作(『コールドゲーム』と『対岸の彼女』)が
結構重い内容だったので、素直に笑えない。
たしかに、気の持ちようだとか、
ちょっとしたことでいじめもいくらかはなくなるかも
しれない。でも、もっともっと深刻ないじめもあることを
考えると、複雑だった。
それにこのプロデューサーの桐谷、
人との付き合い方は全て計算されていて
うわべだけの人間関係。
内心ではまわりの友だちをバカにしている。
最近はこういうさめた人も多いのかもしれないが、
このラストはちょっと…。
文章自体はサラサラと読めたけれど、
テーマがちょっと複雑な気分だった。
今どきの人の作品っていう感じ。
(こう感じてしまう私は歳かしら…)
『白蛇教異端審問』 桐野 夏生

白蛇教異端審問
桐野さんの初エッセイ集。
ショート・コラム、日記、エッセイ、書評・映画評、
ショートストーリーなど内容は盛り沢山。
このタイトル、なんともおどろおどろしい。
そして装丁もまさに白蛇柄。
ラストにおさめられている表題作の「白蛇教異端審問」。
白蛇教とは、「表現に命を懸ける者たちが信ずる宗教」のこと。
そもそも事の発端は、『新潮45』の
「読まずにすませるベストセラー」というコラムに
掲載された『柔らかな頬』に関する匿名批評と
某書評家による揚げ足取り的批判。
桐野さん曰く、「言葉というボールを投げられれば
言葉というバットで打ち返す」。
しかし、どうやらこの業界では作家が反論することは
タブーとされているようだ。
彼女自身、作家生命を失う覚悟だったとか。
人格批判ともとれる批評に彼女は傷つき、
周りの「作品で勝負したらいい」という意見にも
納得ができない。
そんな激しい、しかし、ある意味折り目正しい
彼女の一端がうかがえた。
図書館に関するエッセイは、図書館愛用者の私としては
耳が痛かった。
たしかに…自腹で購入する時よりは気軽に本を選んでいる。
しかし、そういうなかからお気に入りの作家さんが
でてきたりする。
そして…お気に入りになれば自腹で購入する。
実際図書館がなかったら読書の幅はもっともっと狭まり、
読書量もずいぶん減るだろう。
なにしろ懐が寒いので…。
『コールドゲーム』 荻原 浩

コールドゲーム
中学2年の時、クラス皆でいじめたトロ吉こと廣吉剛史。
4年後、かつてのクラスメートの元に届いた廣吉からの
復讐予告メール、そして彼らに次々と降りかかる事件。
いじめられる者、いじめる者、そして傍観者。
いじめられた者以外にとっては
時と共に風化してしまうような事実。
しかし、いじめられた者の心には
深い傷としていつまでも残っていく。
私の中学時代にもいじめはあった。
当時はいじめという言葉は使われていなかったが…。
彼女はクラス全員から仲間はずれにされていた。
私は…いじめには荷担しなかった。
でも…何もしなかった。
そういう点ではこの作品の光也と同じ。
廣吉にとっては首謀者も、しかたなく荷担した者も
傍観者も同罪。
この作品を読んでふと…あの中学時代の彼女のことを
思い出した。
青春物であり、ミステリー的な要素もあり、
ホラーの要素もある作品。
そして…自分の過去と向き合わされる作品だ。
『死ぬほど好き』 林 真理子

死ぬほど好き
林 真理子
女性が主人公の8話からなる短編集。
実は林さんの作品を読むのはこれが初めてという
天然記念物物の私。
元々恋愛物が苦手のいうのもあって
8作全てが恋愛を描いているこの作品は
なかなか読み進まなかった。
私自身がときめく心が枯れてしまったからなのか
共感することもなく終わってしまったという感じ。
ただ、これだけ様々な恋愛観を描いているという点は
感服いたしました。
恋愛小説の好きな方には楽しめそうな一冊。
本日の図書館借り出し本
■■■ 本日の図書館借り出し本 ■■■
『白蛇教異端審問 』 桐野 夏生/文芸春秋
『TVJ』 五十嵐 貴久/文芸春秋
『となり町戦争』 三崎 亜記/集英社
『アキハバラ@DEEP』 石田 衣良/文芸春秋
『野ブタ。をプロデュース』 白岩 玄/河出書房新社
『いとしのヒナゴン』 重松 清/文芸春秋
『漢方小説』 中島 たい子/集英社
『あした、世界のどこかで』 井出 勉/小学館
『義経』 宮尾 登美子/日本放送出版協会
『おいしいお茶、いれよ。』 扶桑社
『Cafe-sweets』 柴田書店
全て予約本。こんなに一気にまわってこなくてもいいのに…。
『白蛇教異端審問 』は桐野さんのエッセイということで
楽しみにしていたので、さっそく読み始める。
『いとしのヒナゴン』は去年予約を入れていたのだけど
なかなかまわって来ず。すごい人気なのね…と思っていたら
何かの手違いで予約が入っていなかった。
再度予約を入れたらすぐにまわってきてしまった。
『義経』は、大河ドラマファンとしては、やはり原作を
おさえておかねば…。
最後の2冊は仕事関係の資料。
『白蛇教異端審問 』 桐野 夏生/文芸春秋
『TVJ』 五十嵐 貴久/文芸春秋
『となり町戦争』 三崎 亜記/集英社
『アキハバラ@DEEP』 石田 衣良/文芸春秋
『野ブタ。をプロデュース』 白岩 玄/河出書房新社
『いとしのヒナゴン』 重松 清/文芸春秋
『漢方小説』 中島 たい子/集英社
『あした、世界のどこかで』 井出 勉/小学館
『義経』 宮尾 登美子/日本放送出版協会
『おいしいお茶、いれよ。』 扶桑社
『Cafe-sweets』 柴田書店
全て予約本。こんなに一気にまわってこなくてもいいのに…。
『白蛇教異端審問 』は桐野さんのエッセイということで
楽しみにしていたので、さっそく読み始める。
『いとしのヒナゴン』は去年予約を入れていたのだけど
なかなかまわって来ず。すごい人気なのね…と思っていたら
何かの手違いで予約が入っていなかった。
再度予約を入れたらすぐにまわってきてしまった。
『義経』は、大河ドラマファンとしては、やはり原作を
おさえておかねば…。
最後の2冊は仕事関係の資料。
『クレイジーヘヴン』 垣根 涼介

クレイジーヘヴン
この作品のテーマは人間の「フレーム(枠)」を
乗り越えるということ。
どうもテーマに内容がついていっていない気がした。
主人公もやたらフレームと口にしながらも
突如きれて豹変しているだけのような気がする。
過激な性描写や暴力シーンが多く、
エンターテイメント性を求めすぎて
内容が薄っぺらくなっている感あり。
主人公にも全く共感できなかった。
『1ポンドの悲しみ』 石田 衣良

1ポンドの悲しみ
30代の男女が主人公の10編からなる短編集。
ちょっとどれも綺麗にまとまりすぎているかな…という感じがした。
それでも…1作目の「ふたりの名前」では、ネコの話がうちのうさぎの
ことのようで泣いてしまった。
『パレード』 川上 弘美

パレード
『センセイの鞄』のサイドストーリー。
ある夏の日、センセイに「ツキコさん、昔の話をしてください」と
言われて、ツキコさんが語る幼い頃の不思議なお話。
『センセイの鞄』には書かれていなかった
センセイとツキコさんの過ごしたほのぼのした時間が描かれている。
ただ、メインはツキコさんが小学生の時に経験した
不思議な出来事。
センセイとのほのぼの話を期待していた私は
ちょっとがっかり。
それでも、やっぱりあったかいお話だった。