雨よけにならない「リング」、
あまざらしで長時間の行列 ・・・
関西万博で初日からあらわになった“ 欠陥 ”
AERA DIGITAL 2025年4月15日(火)
17時02分 配信
大阪府市が出展したパビリオンのオープニングであいさつする吉村府知事と横山市長
4月13日に開幕した大阪・関西万博は初日から雨模様。そのせいで、風雨や行列に弱い“欠陥”がいきなりあらわになった。
開幕の13日、午前中は小雨が降ったりやんだりの不安定な天気だった。
大阪府と大阪市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」のオープニングイベントで挨拶に立ったのは、日本国際博覧会協会の副会長でもある大阪府の吉村洋文知事と、大阪市の横山英幸市長。吉村知事は横に立った大阪市の横山市長を指さして、
「横山市長は雨男。さっきまで雨降っていなかったのに、横山市長と一緒なら雨が降る」
と笑いをとろうとするが、その後、雨は次第に強まり、横なぐりの強い風も吹き始めて傘が役立たなくなった。まったくしゃれにならない。
■ リングの「雨よけ」機能を語っていた吉村知事
万博のシンボルである「大屋根リング」の上には、開門直後から遊歩道を目指してのぼる人が多かった。上にのぼるエスカレーターは大行列だったが、昼前頃から雨が強まってくるとビルの3、4階に相当する高さ12メートルのリングの上は風が強く、傘をさしても雨に濡れ、耐え切れず降りる人ばかりになる。上下運行されていたエスカレーターは下りの一方通行になったが、それでも行列ができていた。
リングの総工費約350億円が「高すぎる」と批判されたとき、吉村知事は府議会で反論するように、
「雨よけや暑さ対策としての屋根の機能に加えまして、来場者の主動線を強化し、会場内の混雑緩和や移動の円滑化に寄与するなど、来場者の安全性、快適性向上に資する」
などと述べていた。
しかし、海の上の万博とあって風が強く、リングの屋根が高いこともあって、雨が横から吹き付け、まったく「雨よけ」になっていない。リングの下にいても傘をささないとびしょびしょに濡れる。多数設置されている木製ベンチも雨で濡れて役に立たない。傘が吹き飛ばされそうな人や、足元が雨で不安定でおぼつかない人の姿もあった。
「リングは雨よけになるんやないのか、吉村知事の話と違うがな」
と文句を言う人もいた。
リングの上から雨が漏れる場所もあり、万博協会も開幕日のうちに、リングの雨漏りを修復することを公表している。
高濃度のメタンガスが検知されたマンホールの周囲ではキッチンカーが何台も営業していた
■ ガスが出た場所と知らずに飲食営業中
万博会場で見ておきたかったのが、高濃度のガスが検知された場所だ。
万博会場は廃棄物などの埋め立て地でメタンガスが発生している。昨年3月、トイレ棟の工事中に火花が床下にたまっていたガスに引火してガス爆発を起こし、約100平方メートルほどのコンクリートが吹き飛ぶ事故があった。
万博協会は30億円以上かけて、ガスを排気させるファンを設置し、ガス検知器を付けるなどの再発防止策をとったが、開幕直前の4月6日にも爆発の下限濃度を超えるメタンガスが検出された。テストラン (
内覧) で会場に訪れた大阪府守口市の寺本健太市議が、ガス爆発を起こした会場の西ゲート近辺のマンホールをガス検知器で測定して検出し、消防に通報したのだ。寺本氏には元消防士という肩書もあり、専門分野ゆえに万博のガス問題が再浮上していた。
寺本氏が指摘したマンホールを探し当てると、金網で囲われ、
〈STOP! KEEP OUT! 立入禁止〉
という札が付けられていた。写真撮影していると、警備員が寄ってきて、
「どこの社なんだ」
とすごい勢いで問い詰めてきた。開かれた万博会場で写真を撮っていただけなのに、追い払おうとするのだ。
このマンホールのすぐ横では、キッチンカーが何台も並んで営業をしていた。そのスタッフは高濃度ガスが検知された場所が近くにあることを知らなかった。それを伝えると、
「ここがSNSでネタになっているマンホールですか。すぐ目の前ですよ。怖いな、やばいな、これ」
と不安げだった。
記者と並んでガスが出たマンホールを撮影していた男性は、三重県から訪れたといい、こんな冗談を言う。
「SNSでメタンガスのことを知って、万博をやるような場所で、本当にガスが出ているのか知りたかった。金網の柵を見て、新しいメタンガスパビリオンができたのかと思った」
寺本氏によると、西ゲートを出たバスターミナルにある 「ガス抜き管
」 からも通常より高いメタンガスが検出されたという。
唯一の鉄道駅である夢洲駅は大混雑
■「万博、しんどい。早く家に帰りたい」
雨の中、万博会場を巡っていると、顔見知りの警備関係者に出会った。
「今日は夕方まで雨の予報。早く帰ったほうがいい。そのうち、地下鉄は1時間待ち、2時間待ちということになりかねない」
と教えてくれた。
万博会場へのアクセスは、地下鉄中央線の夢洲駅がメインだ。大阪市内に向かうシャトルバスの予約状況をチェックしたが、どれも満席。そこで、地下鉄で早めに引き上げることにしたが、警備関係者が言った通り、万博会場に入場する人と、早めに帰ろうとする人がぶつかり合う格好になり、駅はごった返していた。
「止まってください、押さないで」
と警備員がマイクで絶叫。規制がかかり、早めに出たにもかかわらず15分ほど駅にも入れない状態だった。兵庫県から来た男性に聞くと、
「朝は行列で1時間待ち。入場したけど雨なのであきらめて早く帰ろうとしたら、今度は地下鉄にすら乗れない。いったい、どうなっているのか」
とぼやく。一緒にいた小学生の子どもは、
「もう万博、ええわ。しんどい。早く家に帰りたい。テレビで万博見るわ」
と消え入りそうな声だった。
何とか地下鉄に乗って会場を離れることができたが、友人の記者からスマホにメッセージが入った。
「帰られましたか? 今、駅に向かうも人、人でどうにもなりません」
「地下鉄、やばい! 乗れない」
SNSを見ると「#万博ヤバい」がトレンドになるほどだった。
この友人の記者は、駅で1時間ほど待ってやっと地下鉄に乗ることができたが、ぎゅうぎゅう詰めだったという。
この万博は事前予約制やキャッシュレス決済などの導入で 「並ばない万博」を売りにしていたが、いざ始まれば 「並ぶばかりの万博」 の様相だ。しかも、並ぶことを想定できていないためか、雨の中でずっと立って待ち続ける場所ばかりで体力を消耗し、ぐったりと疲れる。逆に晴れた日なら、屋外で日よけもない場所で待ち続けることになるため、夏場はたいへんだろう。
あちこちで見られたパビリオンに入るための行列。みな雨に濡れながら待ち続けていた
■ リングで方向感覚がなくなり道に迷う欠陥も
開幕日に観客として万博を訪れた建築エコノミストの森山高至氏は、こんな感想を語ってくれた。
「とにかく案内表示が少ない。テーマパークならこれでもかというほどたくさんの案内表示があるが、リングで囲われている関係でどこも同じに見え、交差点もなく、方向感覚がなくなってしまう。リングはヨーロッパの城壁も似た感じだが、城壁は教会や時計台などランドマークがあり、方向が確認できるが、万博はできない。道に迷って、行こうとしたパビリオンにもなかなかたどり着けなかった。それにリングは雨よけになるということだったが、風が強いと雨が斜めに降るので、案の定、役に立っていなかった。
また、地下鉄で帰ろうとしたら、駅を出る人、入場しようとする人が 1カ所の出入口に集中して、がちんこしていた。防災の観点からも非常に危うく感じた。はっきり言って欠陥です。また万博に行くかって? もう行きませんよ」
( 編集部・今西憲之 )