20年ぶりのジュッテアントラッセ | ウサギ舎のブログ~バレエピアニストの日々~

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ウサギ舎です。バレエピアニストなんて仕事してます。作曲家です。たまに舞台で踊ってます。ウサギ舎バレエ伴奏ピアノ研究所主宰。まあ、見てやってくんなまし。 

このブログにもよく登場してもらってる
福島県在住のアマチュアピアニストOさん(♂)は


その昔、バレエダンサーだった

ホントだよ!!

もう20年近く昔、ダンサーだったOさんは、家業を継ぐためダンサーをきっぱり廃業して、福島に帰った。
そして、ピアノを始めた。




いま、Oさんは、原発の反対運動でしばしば東京に来ている。
こないだふと思いついて
「時間あるならバレエやんない?」と声をかけて、簡単なオープンクラスにOさんを誘った。
あわててチャコットにシューズを買いに走り、ばたばたと彼の20年ぶりのクラスが始まった。

あたしも一緒に受けたけど
とても不思議だった

彼は全っ然バレエをやめていたので
勿論急にやって、基礎の技でも出来ないことが多くて
でもあたしの記憶の彼は、ピルエットでもセゴンターンでもばしばし決める青年の彼で
今、こうやって単なるジュッテアントラッセで苦戦してるおじさんの彼にその姿が重なって
誇らしいような、いとおしいような
とにかく不思議だった
あたしが一緒のクラスを受けるのも不思議だった(当時プロの彼とはレベルが違ったので同じクラスを受けることはなかったの)


そしてOさんはむちゃくちゃ楽しんでバレエをやっていた
「こんな楽しいことなんで今までやめてたんだろう」
と言った
「バレエがこんなに楽しいなんて気づかなかった」
とも言った
そして
「バレエをやりたくてやりたくて、やっと初めてやった人も楽しいかもしれないけど、今の自分は、その人よりもうんとバレエが楽しい」
とも言った


歳月を経るって不思議だ
Oさんのバレエの時計
また動き出したみたいだ
年をとってしまったから、ギシギシいったり油ささなきゃなんなかったり
メンテは大変かもしれないけど
でもとにかくまた動き出したみたいだ
実はあれ以来、彼は東京に来るたびクラスを受けている
バリバリのダンサーだった彼は、時の彼方に消えてしまったけれど
いま、不器用に、たどたどしく、バレエやってる彼が
現実にここに居て
なんだかとてもそれが素晴らしいことのように、あたしも思えるのだ




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