1から10シリーズ ~Master 編~ | アメリカ研究者(慢性痛・リハビリ)のブログ

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US PhD/Scientist. US/JP Physical Therapist. 中枢性疼痛(Nociplastic/centralized pain)を中心とした慢性腰痛、膝痛に関する研究や知見・正しい研究知識や研究方法の提供・アメリカ生活・科学・理学療法・疫学・アメリカ留学(Master, PhD, Postdoc)

1から10シリーズ一発目はMaster(修士)編です。長い記事ですが、アメリカMaster留学を目指している人にはこの記事1つで具体的な情報が手に入ると思います。

 

 

アメリカのAdvanced degreeであるMaster。キャリアアップを始め、いろいろと成長できる機会。筆者も含めて、Masterが決まった時はワクワクと興奮が止まらなかった。

 

Master志願者の現実として、アメリカMasterを目指す人の多くの人がアメリカ学歴を持たず、アメリカ大学院からすれば完全に「外国人」の状態。つまり、自国の教育が一番と思っているアメリカ人からしたら、教育的なキャリアの信用が高くない状態で挑戦することになる。しかし、決意と熱意があれば必ず実現することができます!まずはMaster留学の目的、コース内容と位置づけについて

 

目的別 Master

  1. 教育先進国の「アメリカ」のMasterを取る
  2. アメリカの大学院の授業により、専門知識を増やす
  3. アメリカでの資格取得(PT,OT等)の為の単位の積み立て
  4. PhD取得の為の第一歩

PT等リハビリ関連、その他の医療職関連のMasterに関してはまず間違いなくこれらが目的になる。その中でも1から3の目的の人が大半の為、実はほぼ全ての学生が外国人である。メリットとしては英語や文化の違い等での苦労を共にしやすいので仲の良い友達ができやすい。覚悟が決まっている外国人が多い。「アメリカ」での学歴を持つことで自国で安定する仕事に就くために来ている人も沢山いる。


さて、それではMasterのコース内容へと進む

 

コース内容

  • Course by Course
  • Project
  • Thesis
目的1から3の人はまずCourse by Courseを選択、あるいはそれに特化したMSコースに進む。基本的に授業をとって、1年から2年で全ての授業をPassすれば学位がとれる。Thesisは学位論文を書かないといけないコースでPhDに進みたい人がとるコース。授業を取りつつ、実際に研究をして論文を書かなければならない。つまり、Course by Courseよりも一般的に忙しく、卒業も学位研究を終えないとできないので2年以上かかる人も出てくる。しかし大きなメリットとして、このコースを選んだ多くの学生はMasterの研究でPeer-reviewのパブリケーションを持てる。そしてこのことがPhDへのステップアップへの鍵となる。ProjectはPhDに進むかどうか悩んでいる人の為のコースで、ガッツリ研究ではないけどその一部をやってみるあるいは研究をしている人を手伝うことができる。Course by Courseのメリットは言うまでもなく、比較的短期間でMasterが取れるので金銭的にもかなり助かる。

 

それでは筆者のMaster留学への道のりを時系列で、鍵となるイベントをまず列挙する。*x*マークがあるものは、時系列の後に詳細説明やおススメする情報を提供する。

 

時系列

 

  • 2011年4月:本気でTOEFLの勉強を始める
  • 2011年8月*A*:90万円払って、留学センターのサービス利用開始(TOEFL、GRE、留学先選びの手伝い、留学希望先への質問メールや電話の代行、Personal Statementの添削、推薦状の添削、Application全般におけるサポート)
  • 2011年9月:TOEFL1回目:iBT 60点(目標は80点)
  • 2011年10月~2012年7月*B*:TOEFL合計12回受けて81点獲得(当時1回の受験Fee$200、合計25万以上はTOEFLに使った。しかも最後に受けたTOEFLは76点に下がった、、、)
  • 2012月1月*C*:GREの勉強を本気で始める
  • 2012年4月と7月:大阪に受験しに行って、何とか2回の受験で安全圏のVerbal 149 (50th percentile), Quantitative 161 (90th Percentile)、 Writing 3.5に到達。大阪までの旅費ホテル代、受験費用約$200を2回繰り返したので10万円程の費用。
  • 2012年5月~7月*D*:アプライする大学院のリスト化
  • 2012年8月*E*:PhDもダメ元でアプライすることを決める
  • 2012年8~9月:推薦人4人(通常、各大学院3人の推薦人によるレターが必要)を決めて、お願いして、了承を得る
  • 2012年7月~10月*F*:CV、Personal Statement、推薦状の下書きの作成、英文での成績証明書と学位証明書の取得
  • 2012年10月~11*G*:大学改革支援・学位授与機構(自分の学士取得元)に個人的に連絡を取り、元々専門学校出身のものが単位を積み立ててこの学位授与機構から学士を貰うこの日本独自のシステムについて、英語での説明文を書いてもらう(Leterhead、機構長のサイン入り)
  • 2012年10月~12月:推薦者に下書きを持っていきサインをもらう。World Education Services (WES)($160)をアプライして、アメリカの学士と同等である証明書を貰う。1から2か月の時間がかかる
  • 2012年12月~1月:アプライ。各大学院のApplication Dueの日が違うが、通常12月から4月の間。5校のMasterプログラムと2校のPhDに2か月で出願。アプリケーション自体と支払い(当時$75前後)はすべてオンラインで1から2日で完了できる。2012年時点では成績証明書等の必要書類は直接送付しなければならなかったが、現在は全てオンラインで可能かもしれない(要確認)。
  • 2013年4月:Massachusetts General Hospital Institutie of Health Professionsから合格通知と$10,000の奨学金(もらえるお金)のオファーが届く
  • 2013年4月:Ohio State University, Marquette University から不合格通知が届く。PhDにアプライした、University of IowaからはTOEFLの点数が低すぎるから不合格とくる。
  • 2013年1月:University of Minnesota, Twin Cityの教授とスカイプでインタビューする。しかし、明らかに印象が悪く、間接的に無理だと言われる。自分の強みや経歴についてのインタビューにおけるスキル不足が原因と考えている。
  • 2013年5月:Univertisy of Illinois at Chicagoから合格通知が届く
  • 2013年5月:University of Delaware(PhD)からは何の音沙汰もなく、連絡しても返事なし。Application Fee($75)+書類送付費用(5000円)等を払ったのに結局音沙汰なしで終わる。
  • 2013年5月下旬:Univertisy of Illinois at Chicagoに入学を決める、職場の上司に退職意向を伝える
  • 2013年8月:念願の渡米!、FallSemester開始!

*A*:留学センターを利用すべきか?

私のように、全てが初めてで英語もできない人の場合、結論から言えばYes。しかしながら、現実をわきまえる必要があります。Undergrad(大学)ではなくGradutate school (大学院)留学の場合、専門によって求められるものが様々であるので、肝心なことは自分で調べて決断する必要がある。Admissionに関するWebページを確実に理解するために翻訳してもらったり、Personal Statementや推薦状のDraftを書いてもらうことは個人的にとても助かった。また、大学院によっては情報が不明瞭であることが多々あるので、直接Officeに電話して問い合わせてもらえたこともとても助かった。つまり「英語」の部分ではとても助かる。一方で、TOEFLやGREの訓練は結局個人だ頼みであることも分かった。つまり、私のように90万円も払うのは割に合わないかもしれない。このことを念頭に部分的に留学センターのサービスを利用するなどをすればお金を節約することができる。以前、少し詳しくこのことをブログに書いたので以下の記事も併せて参照するとよい。

 

 

*B*: TOEFLの悪夢

時間、労力、お金をかけているのに点数が上がらない、あるいは下がるっていう方、安心してください、普通です。個人的な体験としてのコツとしては、試験会場の入室は2番目が一番周りから邪魔されにくかったという印象があります。Readingは「速読」が命。Listeningは周りのSpeakingや退室音をどれだけ無視できるかという集中力、Speakingはゆっくり正確に喋る(余計なつけたしをしない心がけ)、Writingはシンプルに結論からまず書く。

 

*C*: GREは「通常」大学院入学に必須

まず、1つ強調したいのが、アメリカは大学院が多くの人の最終目的であり、Master以上を目指す人にとっては大学はその準備期間となる。ちなみにアメリカでは大学はUnderGraduate Schoolと呼ばれる。日本は何故か、大学がメインで大学院は+α的な感じ。一つの日米教育の大きな違い。さて、GREは大学院入学に対してですが、日本でいうセンター試験みたいな役割があります。つまり1次審査。日本人にとって、Quantitativeはほぼ勉強しなくても楽勝に点数はとれますが、Verbalは鬼。死ぬ気で48%から50%Percentileの点数を取ることだけを考えましょう。個人的にはVocabularyの問題はほぼ捨てて、読解の問題にフォーカスすることでパスできました。

余談ではありますが、PT(理学療法)等の医療関連のMasterの場合、ピッツバーグ大学のMasterはGREが必要ありません。ここのMasterは特に「外国人」学生をターゲットにしています。また1年でMasterをとれることも外国人にとって魅力のようです。デラウェア大学、南カルフォルニア大学、ワシントン大学と並んで全米で1位のDPTコースがあるピッツバーグ大学(2021年8月現在)のPT教員から教えて貰えるのはメリットがあると思います。course by course でのMasterを取りたい人にら人気です。私の友人であるトルコ人、サウジアラビア4人もここ出身です。

 

*D*:アプライする大学院のリスト化

リハビリ、特にPT分野の場合、Masterは養成校であるDPTコースと違い、(主に外国人が)すでにPTあるいは関連する職業についている人が学びに来るところなので、ランキング等は存在しない。よって、自分の学びたいことが何なのかを決めて、そこから大学院を絞る必要がある。私の場合は、慢性痛についての知識を増やす且つ研究がしたかったのでその分野に長けている教員がいる大学院でMasterコースを提供している大学院を探すところから始めた。ある程度絞ると、教員の質はやはり大きな大学院と比例するのでUS News & World Reportのランキングを参考にして更なる絞り込みをした。

 

*E*:PhDもダメ元でアプライすることを決める

 PhDに行って研究者/科学者に最終的になりたい人は、Masterをスキップして進むことが可能である。しかし、アメリカでのbachelorを持っている学生ですら、かなり厳しいのが現実である。PhDの1から10シリーズで詳細するが、PhDに入る為には研究者としての実績が必要となる。最悪でもMasterのThesis。peer-review の論文やその大学院のラボのボスとの繋がりがあればなおbetter。アメリカの教育システム上、これらの実績がない人はまず無理。筆者もダメもとで直接アプライしたが、無理だった。デラウェア大学院の教授に直接ラブレターを書いて、アプライのお金を払って、時間をかけて準備したが、何の返信もなく落ちた。なので、アメリカでの実績がない外国人がアメリカの科学者トラックであるPhDに進むためにはまずMasterに進むことが王道であろう。

 

*F*CV、Personal Statement, 推薦状

Masterの場合、とにかく熱意を伝えることに徹する。この時点で、アメリカで認められアカデミック的な実績がある外国人はほぼ皆無である。しかしMasterはアメリカの授業を受けて専門的な知識を広げたい多く外国人がアプライするという事が大学院側の教員の中での共通認識であるので、臨床経験や、自分が学びたい事、等の熱意が伝わるような文章を書ければ良い。CVも教員のフォーマットを真似るが、やはり簡潔なものになってしまう。しかし、それで十分である。推薦状は、自分で自分のことを褒めまくる内容を書いて(動機や臨床経験、熱意等)を書いて、後は推薦人の人にサインをもらうというのが一般的な方法である。

 

*G*元々専門学校卒業のPTはクソ面倒くさい

「専門士」「高度専門士」あるいは学位授与機構によるBachelorというのはアメリカでは全く理解されない。なので、私のように学位授与機構でBachelorをとった人は学位授与機構機構とはなんなのかという公文を発行してもらいアプライする大学院に送付する必要がある。これはMasterのみならず、筆者の場合、PhD、ポスドク、アメリカPT免許の際も常につきまとった問題であった。良いニュースとしては、結果的になんとかなる。筆者が前例となったので、学位授与機構や、Masterからポスドクまで筆者がアプライした全て大学院においては通用するはずである。ただ、本当に大きな一手間であり面倒くさい。何故日本の医療職は医師と薬剤師以外は、(我々の世代特に)専門学校なのかとどうしようもない気持ちになることが未だにある。

 

筆者のアプライした大学院一覧(Master, PhD, Postdoctoral):

 

 

残念な余談

 

筆者とその頑張っている仲間が常に胸につかえていたことをこの機会に少し述べたい。

一生懸命頑張ってMasterで学んだのに、ごく一部の人達は、残念ながら何も知らない自国の人達に対する自己顕示に走ってしまう。自国の人に対するSNS等で「アメリカNo.1のMS大学院で学んだ!」という誇張とか「Laboratory Assistant =非常勤講師」とかいう謎の訳。アメリカについて知りたい人への誤解を招く表現は止めるべきだ。更に一生懸命Masterで頑張っている人や目指している人の品位すら落としているのでやめてほしい。何よりも本人の頑張りが霞んでしまう。一生懸命アメリカでMasterをとった同志として、彼らの高揚感や達成感は分かるし、自分と似た経験をした彼らのことは個人的に大切な存在でる。だからこそ、そんなことはしてほしくない。(否定や中傷ではなく、この純粋でポジティブな気持ちが本人達にもいつか何らかのかたちで伝わってほしい)。

 

Doctor of Physical Therapy (DPT)等と違い、Masterは個々が伸ばしたいことを学ぶ所なので、そもそもMaster同士の厳密な比較はできない。同じ大学院であってもDPT、Master、PhDは全く違う。その専門分野で優れた研究者に学べればそれは自分にとって大きな財産になる。

 

まとめ

教育大先進国アメリカでのMasterでは臨床知識、基礎知識の拡大、研究基礎知識の獲得が可能で、キャリアアップに繋がることは間違いない。自分のMasterの目的をまず明確にして、「自分」にとって最善の大学院(コース)を選択すべきである。それまでになかった世界は、人生に大きな変化と喜び、そして自分が成長できる機会を与えてくれる。しかしその一方で膨大な、時間、労力、お金が必要になる。この記事では筆者の具体的な経験を紹介した。この記事がアメリカ大学院を目指している人に対して何等かの助けとなれば幸いである。

 

 

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