関谷英理子さんという、同時通訳の記事です。
商社に勤める会社員から同時通訳の世界へ、英語圏で暮らしていたのは子供のころのたった3年間、その彼女が超大物の同時通訳を任されることになった。そのことに強く興味をそそられて記事をよみすすめした。
たとえば、どんな風にチカラをつけていったのか。その方法をわかりやすく伝えています。
高校進学と同時に1年間イギリスへ留学させてもらったのです。
いざ渡英すると、9歳で日本に戻ってからはそれこそ中学校の授業でしか英語に触れていなかったため、クラスメイトや寮のルームメイトとの意思疎通もままなりませんでした。「コミュニケーションを取りたい!」。その一心で、あらゆる手段を試みましたよ。
友達が使ったフレーズをその場で反復したり、次の機会に自分も使ってみたり。自分から話しかけるときは、会話がこの方向に進んだらこう伝える、反対の返答ならこうリアクションする、とシミュレーションを欠かしませんでした。
当時は無意識だったのですが、じつは、後にビジネス英語を身につけるときも同じ方法をとることになります。
彼女が事前にシミュレーションをして、コミュニケーションをスキルをみにつけていった姿勢に、コミュニケーションが苦手な私はぜんぜん努力できてないな、と気づかされました。
また著名な方から依頼が増えた理由はなるほど、と思えるものでした。
では、なぜ著名な方の通訳をお任せいただけるようになったか?
きっかけを遡ると、ある講演の仕事で「話者をそのまま再現してみよう」と試してみたときではないかと思います。
なぜ「再現」しようと思ったかというと、「ズレ」のある同時通訳は聞き手にとって負担だから。「ズレ」と聞くとタイミングの問題に思えるかもしれませんが、それだけではありません。
たとえば、壇上で話している人が盛り上がって陽気に話していたら、言葉がわからなくても声のトーンや表情で楽しげな雰囲気は伝わりますよね。けれど、通訳が必死になるとトーンも単調になり、淡々と「とても楽しいです」と言うことになってしまう(笑)。話者と通訳のテンションがズレると、聞き手はストレスを感じてしまいます。
聞き手に、英語で聞くときと同じ体験をしてほしい。
話者には、自分が日本語を話せた喋れたらもっと伝えられるのに、と歯がゆい思いをしてほしくない。お互いに「自然に聞いていたら/話していたら、伝わった」と感じてほしい。
——思い切って声優のように話者になりきってみたんです。これが、大好評! 「臨場感があった」「まるで本人が話しているみたいだった」といった声をいただき、自信がつきました。
とことんまで「相手」に合わせる極意その5:伝える相手を意識する
先ほどもお話ししましたが、ジャパネットでは、例えばタブレットをシニア層向けに提案しています。そのときは、導入から始めて、次のように続けました。
「ほら、タブレットに話しかけるだけで、旅行先でも簡単に検索できますよ
「行きたい温泉の写真が出てきましたよ。簡単でしょう」
「こうして簡単に地図が見られますよ
って、実際に使っているところをお見せしながら、お伝えします。女性向けには、
「季節の旬の料理のレシピがすぐに出せますよ」
「冷蔵庫の中の余った食材からぴったりのレシピが検索できますよ」
って説明しました。
業界の常識を面白いように覆し、タブレットはシニア層に受け入れていただけました。驚くほど売れたんです。一般市場では、タブレットを購入するのは、圧倒的に若い人たちです。ところが、ジャパネットたかたのタブレット購入者の7割以上は60歳以上のシニア世代なんです。
それは、タブレットを使っている具体的な情景を想像していただけるように考えた私たちのメッセージが伝わったからなのだと思います。
タブレットをシニア層に提案するとはどういうことか。若い人が知りたいこととシニア層が知りたいことは違うんです。知識がまるで違うからです。若い人ならタブレットがどんなものかわかっていますから、知りたいのは新商品の性能ですよね。
でもシニア層は違います。タブレットっていう言葉は聞くけど、そもそもどんなもので、どんなことができるのか詳しくは知らない人が多い。シニア層が知りたいのは、タブレットの性能ではなく。生活の中で具体的に何ができるのかだと思いました。
ですから、シニア層が知りたい情報をお伝えすることにしたんです。それがシニア層に提案する、ということです。