新聞・通信・放送136社で構成する日本新聞協会は、裁判員制度開始1年に合わせ、「裁判員経験者の記者会見について」と題する文書を公表した。2年目は被告が否認する事件、死刑求刑事件など審理が困難なケースも予想されるとして、「裁判員経験者の語る内容がますます大きな意味を持ってくる」と強調し、改めて記者会見への協力を呼び掛けている。

 新聞協会の1~2月の調査によると、全国228件の裁判員裁判のうち、95%にあたる217件で判決後に裁判員・補充裁判員の会見が行われた。一方、会見に立ち会った裁判所職員が「守秘義務違反の可能性がある」として、発言を制止するケースが23件あったことも分かった。【北村和巳】

 日本新聞協会が21日公表した「裁判員経験者の記者会見について」の全文は次の通り。

 重大な刑事裁判の審理に国民が参加する裁判員制度がスタートしてから、21日で1年になります。日本新聞協会では、裁判員経験者に率直な感想を語ってもらうことは、制度導入の理念を定着させ制度を検証するうえで重要だと考え、昨年2月、「裁判員となるみなさんへ」と題する文書を公表し、判決後の記者会見への協力をお願いしました。

 新聞協会では今年1月から2月にかけて、裁判員裁判が開かれる全国の地方裁判所で、裁判員裁判や判決後の記者会見がどのように行われたのか、加盟社で分担してアンケート調査を行いました。3月以降の事例も含めると、全国60地裁・支部で開かれた228件の裁判員裁判のうち、約95%に当たる217件で、裁判員や補充裁判員を経験したみなさんに判決後、記者会見に出席してもらったことが分かりました。みなさんのご協力に感謝します。

 経験者ならではの貴重な声は、「国民の司法参加」を目的にした新制度を報道する際、欠かせない要素になっています。制度開始後3年となる12年以降に必要に応じて制度が見直されることになっていますが、それに役立つような意見も聞かれています。

 一方、記者会見の運用面では、報道側は裁判所との協議を続けています。前記調査によると、記者会見に立ち会った裁判所職員が、守秘義務がかかる「評議の秘密」に当たる可能性があると指摘し、裁判員経験者の発言を制止したケースが23件あったことも分かりました。一部の指摘はその後撤回されましたが、裁判員経験者の発言を萎縮(いしゅく)させかねない問題だと考えています。

 また、冒頭撮影以外、記者会見中の録音・録画は認められていませんが、前述の228件のうち、約49%の111件では裁判員経験者が場所を移しての追加取材に応じ、そのうち78件で録音や録画取材を了解してもらいました。

 裁判員制度は2年目に入り、被告が否認する事件や、死刑が求刑される事件、共犯者の主張が食い違う事件など、審理が困難なケースも出てくることが予想され、裁判員経験者のみなさんの語る内容がますます大きな意味を持ってきます。

 私たちは、この制度を広く知らせるだけでなく、課題や問題点を検証する報道のため、記者会見という貴重な取材機会を大切にしていきたいと思います。記者会見の「主役」である裁判員経験者の負担に配慮し、多くのみなさんに参加してもらえるよう、さらに努力していきます。

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