「それだけで終わらない作戦を考えろよ」
友達だろと、我ながら難易度の高い要求をする。
どのくらい難易度が高いかというと、30代の大人が三日三晩考えても、大したアイデアが思い浮かばないほど高い。
案の定、西河のアイデアは僕の考えた作戦と似たり寄ったりだった。
唯一「人気の無いところに呼び出して襲っちゃえよ」
僕はため息をたばこの煙と一緒に吐き出し、吸い殻と一緒にその案を捨てた。
これは30男の純愛だ。
忘れかけていたトキメキだ。
そこに性行為が介入する余地は、今のところ無い。
「で、その後どうしたのよ?」
同僚の西河(にしかわ)は食いつきがいい。
それはもう、根掘り葉掘りというやつだ。
続きを促す西河に、僕は携帯電話を誇らしげに見せた。
社内の喫煙ブースに、他に人はいない。
西河は冷やかす様な奇声をあげ、僕から携帯電話を奪おうとする。
僕はムキになって奪われまいと抵抗した。
今やこの携帯電話は銀行登録印並みに大切なアイテムだ。
彼女と僕を結ぶ唯一のもの。
よせよと、口調もついつい荒くなる。
西河はからかうように「ムキになってかわいいな、お前」
僕は自分の顔が赤くなるのを自覚する。
「大体だな、あんまり期待はしない方がいいぞ。お前は30代で向こうは高校生だ。相手にもされないよ。下手すりゃ娘だぞ」
クリーニング代を受け取ったらそれでお終いさと、訳知り顔の西河が言い放つ。
僕は反論もせず、携帯電話を持つ手に力を入れた。
そんなことは言われなくてもわかっている。
「よだれ…」
その後、彼女はなかなか次の言葉を発しなかった。
僕はなぜか居心地の悪い心地で、彼女と右肩を交互に見つめた。
「あの…クリーニング代、出します。すみませんでした」
困り顔の僕に気を使ったのだろう。
彼女はたどたどしい口調で、ついに口を開いた。「あ、大したことないから、気にしないでいいよ。すぐ乾くよ」
「いえ、そういうわけには…。クリーニング、出してください。今は手持ちがあんまりないんで、後日連絡をくれませんか?」
なんという幸運だろうか。
彼女と言葉を交わすだけではなく、連絡先も教えてもらえる。
「よだれ」万歳だ。