骨盤筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial pelvic pain syndrome:MPPS)は座り仕事の方にとても多い症候群です。

「骨盤痛症候群」、「慢性前立腺炎」、時として「考えすぎ」、「神経症」、「泌尿器科の病気ではない」「婦人科の病気でもない」など言われる方もいらっしゃるのでは。

 

【特徴的な症状】

  頻尿、残尿感、会陰部の痛み、会陰部の不快感、下腹部痛、腟の痛み、子宮や卵巣の痛み、下垂感など

  症状から、膀胱、前立腺や子宮や卵巣の病気を調べられ「なんともないですよ!」と言われます。

  最近は「GSM」と診断され、レーザー治療をしたが良くならない方も増えています。

 

【原因】

  では、なぜ、「MPPS」は診断されないのでしょうか?

  繰り返しになりますが、泌尿器科、婦人科の病気がないからです!

  それが「骨盤底筋」です。骨盤底筋は素人でも聞いたことがある筋肉ですが、泌尿器科医も婦人科医も「尿失禁や骨盤臓器脱の改善に用いるもの」としか理解していません。

  

【どうしたら診断できるの?】

  肩がこる原因は「僧帽筋をはじめとした首周りの筋肉」、腰痛は「腰背部の筋肉」、各所の肉離れ、野球肘など体表から診断できるものは、整形外科医をはじめ多くの方が診断できます。

 しかし、骨盤底筋は「骨盤の内側についている筋肉!」なので、内診や直腸診で筋肉の状態を確認するしかありません。

 

【実際の診察】

 内診・直腸診では膀胱子宮の異常を確かめるのはもちろんですが、骨盤底の筋肉の評価を行います。最も不調が多いのが「内閉鎖筋」です。内閉鎖筋は恥骨から大腿骨に繋がる「骨盤底筋でもあり大腿骨の外旋筋」でもある2つの特徴を持ちます。この2つの特徴を持つ筋肉のもう一つは梨状筋です。梨状筋はまっすぐ、内閉鎖筋は90度に曲がっているため、筋肉のストレスは内閉鎖筋が圧倒的に多いと考えられます。内診と臀部からの筋肉の圧痛点(トリガーポイント)があれば診断は確定。

           前から骨盤               内閉鎖筋は骨盤底と、大腿骨を繋いでいる。

         骨盤背面より             内閉鎖筋は大腿骨から前方の骨盤壁(恥骨)に付着

 

【骨盤筋筋膜性疼痛症候群の治療】

 まずは、筋膜リリースを行います。筋膜リリースを施すとかなりの確率で痛身が取れ、前述した症状から解放されます。このことから「肩こり」にちなみ「腟こり」と呼んでいます。

 このことが理解できると、骨盤筋筋膜性疼痛症候群となる原因の治療に入ります。座り姿勢、立ち方などなどバランス、筋緊張、ストレッチ方法など自己管理できるようにしていきます。

 

【その他のオプション】

 ターゲットは筋肉なので、筋肉刺激で改善する磁器刺激療法(スターフォーマー®など)や生理食塩水を注入する「ハイドロリリース」などオプションとして考えられます。

 

泌尿器科疾患でも婦人科疾患ではないかもしれませんが、オフィスワークが多いこの現代。

骨盤底を取り扱う専門家は、ぜひ知っておかなければならない疾患の一つと考えられます。


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