泌尿器科のブログ

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ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

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庭の梅が咲き始めました.
写真は散歩で見つけた梅(かな?)
川沿いの桜並木では,もういくつかのつぼみが膨らんで,開花してました.
 
冬から春にかけてのこの季節が一番好きです.生命の息吹を感じるから.
桜が咲いてしまうと,もの悲しくなります.あとは散るだけですから.
 
今日はひさしぶりにゆっくりできました.今年も超忙しくなりそうです.
 
春がすぐそこまで来てますね.

ミレニアムパーク

ダウンタウン 昼の顔



Chicago river

そして ミシガン湖へ
Castration-resistant prostate cancerCRPC

日本語で去勢抵抗性前立腺癌

 

CRPCに対して現在使用できる薬剤はアビラテロン,エンザルタミド,ドセタキセル,カバジタキセル,ゾーフィゴ.

2016年現在で欧米にて使える薬すべてが,やっと日本でも全登場しました.

 

どの順番で使用するのか?

治療シークエンスと言います

治療シークエンスは患者さんごとに決めていくのが基本.

「すべての患者さんに適用できる,画一的な治療シークエンスはない」のが現時点では正解のようです.

 

AR-V7などのバイオマーカーが登場すれば理論に基づいた治療シークエンスの組み立てが可能になるはずです.

 

バイオマーカー登場までの間は様々な臨床的因子から患者さんごとに最適な治療シークエンスを考えていきます

 

ところで,AR-V7はアビラテロン,エンザルタミドなどのホルモン治療抵抗性を示すバイオマーカーとして知られていますが,AR-V7発現症例において期待されていたgaleterone

 

Androgen receptor degradation

CYP17 enzyme inhibition

Androgen receptor inhibition

 

galeterone 以上3つの作用があるためにAR-V7発現症例において効果が期待されていたのですが,

 

http://tokaipharmaceuticals.com/our-programs/about-galeterone/

ARMOR3-SV, a Phase 3 clinical trial of galeterone, was evaluating whether administration of galeterone results in a statistically significant increase in radiographic progression-free survival as compared to Xtandi® (enzalutamide), an oral therapy currently approved for the treatment of castrate-resistant prostate cancer (CRPC), in AR-V7 positive metastatic CRPC patients. ARMOR3-SV was the first pivotal trial in prostate cancer to employ a precision medicine approach for patient selection. On July 26, 2016, Tokai announced its plan to discontinue ARMOR3-SV based on the recommendation of the trial’s independent Data Monitoring Committee.

 

エンザルタミドに勝てなかったようです.だめでした..

ただし,エンザルタミド後のセッティングで臨床試験は続くようです.

 

http://tokaipharmaceuticals.com/our-programs/about-galeterone/

The company recently re-opened an extension arm of ARMOR2, the company’s ongoing Phase 2 clinical trial of galeterone, to further explore the safety and clinical activity of galeterone in metastatic CRPC patients whose disease progressed during treatment with enzalutamide. This expansion arm is designed to evaluate whether, in patients who have developed acquired resistance to enzalutamide, longer-term administration of galeterone is required in order to demonstrate clinical benefit with galeterone.

 

TakedaTAK-700 orteronel)やcabozantinibの時もショックでしたが,期待していた薬剤がRCTで否定されると悲しいです.


10年ぶり!post2000

フロントは工事中

タイ料理レストラン
懐かしい・・





good-by, San Francisco

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23668632

治療成績、合併症、悪くなさそうですね。
治療期間は5日間で済むというのが、メリットの一つでしょう。
ただし、より長期の予後、多施設での成績など不明な点が多いです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/core/lw/2.0/html/tileshop_pmc/tileshop_pmc_inline.html?title=Click%20on%20image%20to%20zoom&p=PMC3&id=3674983_1748-717X-8-118-4.jpg

サイバーナイフとは米国スタンフォード大学で開発された精密な放射線治療機器(Acuuray社)。ロボットアームの先端の超小型X線照射装置から放射線が照射される。さらに治療中の微妙な動きを自動的に検出し、X線ビームの方向を補正する。ロボットアームはさまざまな方向・角度に自在な動きができるので、複雑な形状の病巣も治療でき、照射精度も高く±0.5~1.mm程度と言われている。

(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-02-02-10 より改変)
治療法を相談する病院
前立腺生検を受けた病院がCT、MRI、骨シンチグラフィーといった検査ができるようなら、その病院で治療法まで考えてもらいます。
CT、MRIがない病院であれば、他の病院で治療法を考えてもらう必要がありますので、
主治医の医師がお勧めの病院へ紹介してもらいましょう。
CT、MRIは病期診断のために必須で、病期診断ができないと治療法を決められません。

CT、MRIがない病院でも非常に信頼できる医師で、そこで治療法を相談したい場合は、
CT、MRIを他病院に依頼するかたちになるので手間がかかりますが、それも悪くはないでしょう。

治療法決定に際して
十分な説明がない場合や説明がわかりにくい場合は、はっきり主治医に伝えて、
納得の行くまで説明してもらいましょう。
ただし、大きな病院では外来患者数も多く十分に時間を割いてもらえないこともあるかもしれません。
あらかじめ要点を整理して質問したほうがお互いのためになると思います。

治療法の説明が納得の行くものであれば、そのままその病院で治療してもらうのが良いでしょう。
説明が納得できなかったり、その病院で行えない治療を希望する場合、セカンドオピニオンのための紹介状を書いてもらいます。
セカンドオピニオンの場合には、自分で次の病院を探さなければいけません。

治療してもらう病院
治療法を相談した病院で治療を受けることが最も一般的ですが、その病院では行っていない治療を希望する場合には、
遠慮せずにセカンドオピニオンを希望し紹介状を書いてもらいましょう。
治療してもらう病院を【がん診療連携拠点病院】 で検索して決めても良いのですが、
がん診療連携拠点病院には実力的に??な病院も含まれている気が、、、。

治療を希望する泌尿器科に癌治療認定医と泌尿器科腹腔鏡手術認定医がいれば、まず安心して任せて良いでしょう。
癌治療認定医はペーパー試験なので手術の質は担保されませんが、認定医をもっておきたいとする意欲のある医師に治療を任せたいものです。
腹腔鏡手術認定医とは自分で行なった手術をビデオで審査して認定してもらうもので、合格率は6割程度。
安全に手術を遂行する能力がないと合格できないのです。
手術するしないは別として、この2つの資格の有無は参考になると思います。

放射線施設。
放射線治療も手術と一緒で治療機器と放射線治療専門医の力量で治療成績が全く違ってきます。
IMRTやVMATという方法が最新の治療法です。


まとめ
米国であれば泌尿器科医師は手術ばかり、放射能科医師は放射線治療ばかり勧めてきますが、
日本の泌尿器科医師は、全ての治療方法(手術、放射能、他)の中から最も最適な治療法の選択肢を提示してくれると思います。
治療を希望する泌尿器科に癌治療認定医と泌尿器科腹腔鏡手術認定医がいれば、まず安心して任せて良いでしょう。





ASCO2011でのphase2の発表が衝撃的でした。cabozantinibですが再燃前立腺癌で骨転移は86%で奏効。64%に骨痛改善。軟部組織転移巣は84%で縮小。夢のような治療薬になるのでしょうか??

米食品医薬品局(FDA)は2012年11月29日、転移を有する甲状腺髄様癌の治療薬承認していますが、前立腺癌に対してはまだ治験中ですね。
2つのphase3が走っていて、2014年にデータ解析にはいるようです。

Study of Cabozantinib (XL184) Versus Prednisone in Men With Metastatic Castration-resistant Prostate Cancer Previously Treated With Docetaxel and Abiraterone or MDV3100 (COMET-1)
Study of Cabozantinib (XL184) Versus Mitoxantrone Plus Prednisone in Men With Previously Treated Symptomatic Castration-resistant Prostate Cancer (COMET-2)

Cabozantinibは、腫瘍細胞の生存、浸潤、転移にかかわるMET遺伝子と、その活性化を助長するVGEFR2経路の両方を阻害する薬剤で、これが承認されれば、再燃前立腺癌ではじめての分子標的薬となります。

気になる副作用もあるようです(MedlinePlusより)
Cabozantinib may cause you to develop a fistula (abnormal connection between 2 organs inside your body, or between an organ and the outside of your body) or a tear in the wall of your stomach or intestine. These conditions are serious and may be life-threatening. Call your doctor immediately if you experience severe stomach pain or if you begin to cough, gag, or choke, especially while you are eating or drinking.

Cabozantinib may cause serious or life-threatening bleeding. Tell your doctor if you have recently had any episodes of unusual or heavy bleeding and if you have been coughing up blood. If you experience any of the following symptoms, call your doctor immediately: coughing up blood or blood clots, vomiting material that is bloody or that looks like coffee grounds, blood in stool, black and tarry stools, heavy menstrual bleeding, or other unusual bruising or bleeding.

Talk to your doctor about the risks of taking cabozantinib.
1 血中PSAの値の確認
     生検までのPSA値の推移がわかれば、そのデータも整理を
2 転移の有無
     CTや骨シンチ という検査でわかる。前立腺癌は骨やリンパ節に転移しやすい
3 前立腺内にがんがとどまっているか?
     MRIという検査でわかる
4 がんの悪性度の確認
     グリソンスコアというスコアで、6ー10点の間の点数で表示される。
     がんの組織を顕微鏡で診断する。
     おとなしく、進行が遅く、転移しにくい性質のがんか、
     早く進行する、転移しやすい性質のがんかがわかる
5 陽性コア数
     何本生検して、何本から癌が検出されたか
6 前立腺の体積
7 血のつながった家族で前立腺癌の患者がいるか?
8 自分の年齢
9 治療中の病気。内服してる薬の種類。今までしてきた病気や手術
10 1-9のデータを基に主治医と治療法の相談。またはセカンドオピニオンへ

治療する施設はどこがいいのか?
これは、次回書きたいと思います。

放射線治療には外照射と内照射があるけど、外照射の話。

Volumetric modulated arc therapy (VMAT)
IMRT(intensity-modulated radiation therapy)の進化版
回転原体照射に強度変調の機能を加えた照射法 
1回の治療時間が2分くらいに短縮できます。
それだけ誤差が少なくなり、副作用の軽減、治療効果の向上が期待できます。

手術を行う場合、どのチーム(施設)で執刀してもらうのかで、治療効果が変わってくることがありえます。

「放射線治療」も同様。
もしかしたら手術よりも施設間格差が大きいのかもしれない。

前立腺癌で放射線外照射(リニアック)治療を選択するのであれば、「IMRT」「VMAT」などの方法で照射を。

さらにvisicoil®を前立腺内に留置して「IGRT」で照射治療できるのが理想。
医療界を震撼させた今年ワーストなニュース

単純に解析に誤りがあっただけなのか、データ改ざんがあったのかどうかが焦点。
万一データの捏造があったのであれば論外。

何にしても研究責任医師である京都府立の松原さん(前教授)にの罪が最も重いことは間違いない。
そしてノバルティス社の初期対応も悪かった。
事件が発覚した時点では「わが社は関与していない」というスタンスをとっていた。
その後、自社の社員が解析にかかわっていたことが判明。

不祥事があった場合に初期の対応が悪いと影響がさらに大きくなるという、典型的なパターンですね。
しっかりと初期対応しておけば、かえって企業イメージのアップに繋がったのに。

企業イメージが悪くなるのはわかっているが、のらりくらりかわす>ばか正直に調査して、万一データの捏造でも発覚すれば、「大規模な詐欺罪」等に該当し、こちらのほうが損失がでかい と判断したのか?



ここでは、これからの臨床研究という切り口でこの事件を考えたい
これまでは性善説に基づいて研究は行われてきた。
基礎研究では、一つ成果がでた後に他グループによる追試というかたちで事実の証明と確立がなされる。

一方、大規模臨床研究で追試は難しい。
今回のように3000人希望の臨床試験ではなおさらだ。

臨床研究でデータの改ざんがあるとは、今までは誰も考えたことがなかった。
みんな性善説に基づいて論文を読んでいましたね。
しかし、この事件をきっかけに、これからは性悪説に基づいて試験をレビューしなければいけない。
実は、海外からはすでに「性悪説」の目で見れられ始めている。

少なくとも、前向き研究や大規模試験においては、データの取集、解析は中立的なデータセンターに依頼する時代に突入したのではないだろうか