ベンチャー企業に求められるCFOとは | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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 こんにちは。売れプロ12期生の日髙 翔太です。

 

 第5回から4回にわたり、日本型CFOと海外型CFO、およびベンチャーブームやベンチャーに求められるCFOについて、記載をしてまいりました。今回は最終回として、ベンチャー企業で求められるCFOがどのような特徴を持つかについて簡単な検証をしながらまとめていきたいと思います。

 以下、これまでの記事を要約したものです。導入として参照ください。

 

■過去記事の要約

 これまでの内容をまとめると海外型CFOと日本型CFOでは違いがあり、その違いが生まれた理由は2つあると述べております。

 一つ目は資本主義の違いです。海外型CFOはアングロサクソン型資本主義の下、所有と経営の分離、株主が最も権力を持つ、企業価値向上の追求など短期的利益回収を志向し、エクイティ資本での調達を重視すると述べました。対して日本型CFOはライン型資本主義の下、所有と経営の一致、経営者や銀行が権力を持つ、従業員教育や長期的な企業の存続を目指し、デッド資本での調達を重視すると述べました。

 二つ目の理由としては、日本的経営の三種の神器と内部昇進制の影響が大きいとしました。日本の経理・財務担当役員は銀行との関係維持がメイン業務であり、そのやり方で日本経済は順調に成長を続けていました。しかし、バブル崩壊に伴う銀行の間接金融機能の弱体化と会計ビックバンにより、エクイティ資本での調達とグローバル化の必要性にかられました。そこで、経理・財務担当役員が名称変更する形でCFOが台頭するようになりました。一方で、銀行との関係維持を主とした旧来の役割から脱却するには時間がかかっており、これが現在の日本型CFOの特徴を生み出していると述べております。

 一方で、ベンチャーの状況を見ると日本は過去4度のベンチャーブームが生まれておりますが、いずれのベンチャーブームも次世代のリーディングカンパニーを生み出し、経済発展に寄与してまいりました。また、現在は第4次ベンチャーブームが継続しているとの見方もありますが、これを一過性のものにせずしっかりと経済発展につなげていく必要があると述べました。その上でIPOを目指すベンチャー企業が成長を遂げるためには、エクイティ調達が不可欠であり、そのためには欧米経済に倣い、適正な企業価値向上やガバナンス面に強みを持ったCFO(=アングロサクソン型資本主義の特徴を持つCFO)が求められるのではないかと仮説を立てました。

 今回は最終回として、ベンチャー企業で求められるCFOがどのような特徴を持つかについて簡単な検証をしながらまとめていきたいと思います。

 

■検証対象

 google求人、日経転職版、Greenなど各種求人メディアの公開求人情報のうち、CFO、管理部長または管理本部長候補の案件で、年収1000万円以上のものを計39案件ピックアップしました。そこから業務内容と必須条件を抜き出したものを1サンプルとし、合計39サンプルを研究対象案件としました。さらに、各サンプルを日本企業、海外企業、ベンチャー企業の3企業区分に13サンプルずつ分類分けし、企業区分ごとに日本企業のJob Description(職務記述書)は「日系J」、海外企業のJob Descriptionは「外資J」、ベンチャー企業のJob Descriptionは「ベンチャーJ」と表記しました。

 「日系J」については、創業から20年を超えている中堅~大手企業をピックアップしていますが、業界最大手企業やプライム上場企業クラスのCFO案件はほとんど公開されておらず、上場企業のCFO案件は研究対象外としました。

 「ベンチャーJ」については、キーワード「ベンチャー」を含み、主にIPOを目指す(短期的、中長期的のいずれも可)企業としており、ベンチャーJ、日系Jのどちらに分類するか判別が難しい案件は研究対象外としています。

 「外資J」については、表記としてCFO案件とされているものの、本国CFO案件などは公開されておらず、研究対象が日本支社のCFOであったりHead of finance や controller と呼ばれる日本支社のファイナンス部門マネジメント案件となってしまう点は、本検証の限界となります。

 

■検証方法

 上記サンプルをユーザーローカルが展開するフリーのテキストマイニングツールであるAIテキストマイニング by ユーザーローカルを用いて、比較単語分類表、比較単語出現頻度表を作成し検証を行ってみます。比較単語分類表と比較単語出現頻度表を作成することで、二つのサンプル群(例えば「ベンチャーJ」と「日系J」のサンプル群)において、出現する単語がそれぞれどちらのサンプル群に偏っているかなどを解析することが可能となります。

 

■検証結果

 下記図表はベンチャーJと日系J、ベンチャーJと外資J、日系Jと外資Jの二つずつの文章を比較解析し作成した比較単語分類表と比較単語出現頻度表です。

 

図表 比較単語分類表と比較単語出現頻度表

 出典:AIテキストマイニング by ユーザーローカルを用いて筆者作成

 

 「ベンチャーJ」と「日系J」を比較ですると、ベンチャーJでは「投資家」「資金調達」「エクイティ」「財務戦略」「戦略策定」「体制構築」などのより戦略的な業務や体制構築に関わるキーワードが目立ち、日系企業では「経理」「原価計算」「人事」「総務」「税務」「銀行」などの一般的な経理業務や管理部業務に求められる比較的オペレーショナルなキーワードが目立っています。また比較した結果で面白いと感じたのが、ベンチャーJには「リーダーシップ」、日系Jには「マネジメント」のキーワードが多い点です。ベンチャー企業では組織が大きくなく、階層も出来上がっていない状況であり、自走しながらメンバーを導いていく必要があるため、当然求められるのはマネジメントよりもリーダーシップであると考えられますが、これがJob Descriptionの中にも如実に表れているのは非常に興味深く感じます。

 「ベンチャーJ」と「外資J」を比較すると、前述した通り外資案件は本国CFO案件ではないため、「資金調達」などのキーワードが見られません。着目したいのは外資Jにおいて「システム」「プロセス」などが多い点ですが、外資Jでは海外本社にて導入されているSAPやERPを日本支社でも導入することが求められ、この業務をCFOが担い、ビジネスプロセスの再設計が求められているのだろうと想像できます。両方によく出るキーワードとして「財務戦略」「リーダーシップ」などがあり、これらはアングロサクソン型資本主義の特徴であると言えます。

 最後に「日系J」と「外資J」を比較すると、日系Jでは「経理」のキーワードが目立ち、外資Jでは「管理会計」のキーワードが目立ちます。また日系Jに「マネジメント」が多いのに対して、外資Jには「リーダーシップ」が多く、いずれもベンチャーJのように出来上がっていない組織ではないのにもかかわらず、このような違いが出ている点に関しては、そもそも日系Jと外資Jで管理手法における考え方が違うということが考察できます。また日系Jは「財務戦略」などのキーワードも少なく、かつ「銀行」というキーワードが多い傾向があるようでこれはライン型資本主義の特徴といえます。

 

■検証結果のまとめと考察

 あくまで簡易的な検証ではありますが、今回の検証を通じてベンチャーに求められるCFOは「投資家」「エクイティ」と直接金融に関わるキーワードも多く、日系Jと外資Jとの比較においては外資Jに近いという結果が出てます。これはどちらかといえばアングロサクソン型であり、比較すると海外型CFOの特徴が求められているのではないかと考えられます。

 日本では、2013年より第四次ベンチャーブームであるといわれており、これはまだ継続中と考えられます。過去のベンチャーブームの際もキーエンスやソフトバンク、スクウェア・エニックス、サイバーエージェントなど日本のリーディングカンパニーを多数輩出しておりますが、今後の日本の経済発展のためには、このベンチャーブームを後押しし、いかに維持継続させていくかが重要な課題だと考えます。

 ベンチャー企業の発展のためにも、必要不可欠となる海外型CFO人材の育成に目を向け、企業価値向上につなげていく事が重要であり、管理会計や財務戦略、エクイティ調達に関して、優秀なスキルを持つ人材が増えるよう惜しまない投資を行っていかなければなりません。
 そのためにも現在行っているベンチャー支援やCFO育成に対する補助金制度、ベンチャー向けの税制優遇などをさらに強化したり、ガバナンス体制整備にかかわる各種支援策を積極実施していく必要があると考えます。

 第5回から継続掲載してきましたCFOについてのブログですが、今回で最終回となります。今や大企業である楽天、グリー、DeNA、サイバーエージェントなどは第三次ベンチャーブームで設立したといわれている企業ですが、わずか20年で誰もが知る大企業に成長しました。その成長の裏には強力なCFOの存在と支えがあったはずです。第5回の冒頭で申し上げましたが、私は幹部層のヘッドハンターとして、たった 1 人の強力な CFO 人材が社内に加わることで、企業が大きく変わる様を何度も目撃してまいりました。そのような会社成長を支える、延いては日本経済を大きく引っ張るような会社の成長に寄与するCFO人材が国内に増えていくことを祈念しながら、本ブログを締めくくりたいと思います。

 

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